2002/05/22
 
 
 
 
 
サービス・マネジメント論
−第7回 サービス・マネジメント・システム(3)−
 
 
 
 
0.「サービス・マネジメント・システム」についての質問から(1)
 
(1)経営戦略としてのサービス・マネジメントについて
・セグメンテーションとコンセプトはどちらを先に捉えるのがよいのですか
 基本的にはセグメンテーションが先です。レストランを発展させようとした場合に、どのようなセグメントを中心に展開するのかを考え、それにふさわしいコンセプトを考えるわけです。
 
(2)セグメンテーションに関して
@セグメントを決めることによって不利益が生じるのではないか。
 どのような不利益を想定されているのかわからないので回答できないのですが、もしお客さんが減るのではないかと考えているなら間違いです。誰に向けて商売しているのかはっきりしないところにはお客さんは惹きつけられません。
Aセグメンテーションを決定するために調査することをマーケティングというのですか。
 ちがいます。
Bターゲットとセグメンテーションは同じ意味か。
 ちがいます。セグメンテーションによって顧客の層を識別し、そのどれかまたはいくつかをターゲットとしてコンセプトを考えていくわけです。
Cサイコグラフィックな方法のところがわかりにくかった。感性ですか。またどうやって見つけるのですか。
 人々が求めていることの内容によってグループ分けしていくのがサイコグラフィックな方法です。たとえば、食べ物の好みが同じ人、趣味が同じ人、休みのときにしようと考えることが同じ人(たとえば積極的にレジャーへでかけようとするか、家でのんびりしようとするか)といった分け方です。実際には調査などをして、そういう人たちが他にどういう特徴をもっているのか、などを調べていきます。
D「利益の80%は、顧客のうちの20%から得られる」何が言いたいのか意味がわかりません。具体的に例をあげて説明してください。
 一ヶ月間に来たお客さんが頭数にして100人いたとします。このうち50人は一見さんです。30人は何度か来てくれますが、注文が特殊だったりしてあまり利益になりません。常連でかつこちらがいちばん中心的に扱っているサービスをよく利用してくれるのは20人くらい、となると結局利益の8割くらいはこの20人から結局はあがっている、という見方です。繰り返しますが数字はたとえです。
 
(3)コンセプトに関して
@コンセプト=ねらい と考えてよいか。コンセプトの意味がわからない。
 コンセプトは、ターゲットとしたセグメントに対してどのようなサービスを提供するのか、ということです。「どのような」というのは、具体的に提供される機能をさしています。
A企業と消費者のコンセプトが異なった場合はどのように解決するのですか。
 コンセプトは、消費者が求めている機能を想定して企業(提供者)が決めるものです。企業が考えたコンセプトが消費者に受け入れられないとすれば、想定がまちがっていたということです。
B理念とコンセプトの違いは。
 理念とのところで考えてみましょう。
Cノウハウの意味がわかりません
 このくらいは辞書で調べてみましょう。
Dフランチャイズの意味がわかりません。どの様なものがありますか。
 フランチャイズ・ビジネスとは、コンビニエンスストアの例で説明したように、個々の独立した企業(店舗)がフランチャイズ・グループに加盟し、グループ本部に一定の支払いをする代わりに、統一的なブランドの使用や共同の仕入れ、経営指導などのサービスをうけることができる仕組みです。個々の企業(店舗)は独立して経営するのに比べてブランド力や規模の経済といった優位性を獲得することができます。
Eサービスとしての経営活動の例がよくわからなかった。
 レジュメに書いている以上の意味はありません。企業の活動の一部ではなく全部丸ごとを請け負ってしまうということです。所有者は利益をうけとるだけです。
 
(4)サービス・デリバリー・システムに関して
※多くの質問が、サービス・デリバリー・システムをピザの宅配のような「デリバリー」と勘違いしている。定義で説明したように、サービス活動を利用者・顧客に実際に提供するプロセスをこういいます。
 
@従業員の共感性を高めるためにはどのような方法が用いられますか。
 こうやればいい、という方法があるわけではないですが、顧客の立場に立って従業員が行ったことを管理者が高く評価するなどして、職場のなかに顧客の気持ちを理解することが必要だという雰囲気をつくっていくことが重要です。
Aオープンキッチンの例がよくわかりません。オープンキッチンで品質を管理するとはどういうことしょうか。
 お客さんに厨房が丸見えなのですから、たとえば床に落とした食材を拾って皿に盛ったりできなくなるわけです。
B板書の図がよく分からない。
 教科書p229を参照してください。
 
 
5.イメージ〜顧客を引きつける「心理装置」
効果的なイメージづくりは、サービス・マネジメント・システムを構築する上でも(忘れられがちだが)重要な要素である。
 
(1)イメージというものの意味
  ・イメージは簡単に変化しないうえ、実態がなくても人はイメージに縛られる
    例)贈答品におけるデパートのランク
  ・人はしばしばイメージを消費している
    例)四駆(RV)の持つイメージと実態
 
(2)イメージは何によってつくりだされるか
   *すでにあるイメージはその源泉がはっきりしないことも多いという面はあるが、分析は必要
 
   a)サービスの特性で決まる
      例)マクドナルド(たぶん、今日ではテキストp237とは違った意味で)
   b)従業員のありよう(組織風土や文化を含む)
   c)市場セグメント 例)フィットネスクラブ〜顧客を絞ることによるイメージ
   d)その他
 
(3)イメージを作る
   イメージは作り出しうるし、現につくられている
   ただし、実態にそぐわないイメージを作ってもいずれ露呈する
            例)カナダのある島の観光開発
 
6.組織理念と文化〜どんな目標へ向かうのか
 
(1)組織理念・文化とは
 組織理念:その組織において構成員の判断の規範となるような明示的な価値観
  例)リッツ・カールトン・ホテル
     「ザ・リッツ・カールトン・ホテルは
      お客様への心のこもったおもてなしと
      快適なご滞在を提供することを
      もっとも大切な使命とこころえています。」
 組織文化:その組織において構成員の判断を深部で規定する非明示的な規範や価値観の総体       「文化」というからよいものとは限らない。官僚主義も組織文化の一形態である。
 
(2)サービス組織が持つべき理念とは
@品質と卓越性(excellence)への志向
  「最高レベルを志向する」(テキストp120)の意味
    〜この場合の「卓越性」とは、セグメントとコンセプトが前提されている。
      例)マクドナルドがファストフード・チェーンのなかでどう「卓越している」か
A顧客志向
  日常のサービス提供における意思決定が、「顧客価値」に基準をおいていること
    *「お客様第一主義」ではない→「人材」の従業員の役割、参照
B人的資源への投資
  単にいい人材を集めると言うことだけでなく、従業員の意欲・能力を高めるために
 
(3)理念・文化の持つ意味
@従業員に対して決定的な意味をもつ
  ・日常のサービス活動の規範
  ・従業員自身が内発的にサービス活動を積極的に展開していくための基盤
    「どうがんばれば、組織において役割を果たしたことになるのか」
 
Aイメージの源泉
7.ディズニーランドはなにがよいのか?〜まとめにかえて(p243)
                   
◎ディズニーランドの10の謎
@地下の迷路は何のため
Aトイレに鏡がないのはなぜ
B従業員用のマニュアルはなぜ300冊もある
Cアトラクションに入場する行列はなぜくねくね曲がっているのか
D雨でも野外のテーブルやイスを拭いているのはなぜ
E園内に入場すると外の建物が見えないのはなぜ
Fエリアごとに地面の色が違うのはなぜ
G入り口はなぜ一つ
H従業員を「キャスト」とよぶわけ
I遊園地なのに大人の方が多いのはなぜ
 
(1)サービス・コンセプト
 テーマパーク一般において「非日常的な経験」
 ディズニーではさらに「ファンタジーとノスタルジー」「ファミリー・エンタテインメント」
 
(2)セグメンテーション
 大人の鑑賞にたえる遊園地
 
(3)サービス・デリバリー・システム
@施設・技術:わくわく
       「どこかヘン」・・・非日常への入り口
       「裏方」をみせない。どうしても見えるところはそれもアトラクションにする
A従業員:「キャスト」=映画の「キャスト」とおなじ。
     さまざまなパターンの接客のために膨大なマニュアルがある。
B顧客:顧客自身が参加している・・・アトラクション、「悲鳴」
    口コミの役割の大きさ
 
(4)イメージ
  これは、キャラクターがすでに浸透していることの効果を最大限利用している
 
(5)理念と文化
@理念:SCSE〜safety,雨の日もちゃんとテーブルなどを拭いて、安全性に配慮
         coutesy,自然、上品、簡素、清潔
         show,ディズニーランド全体が舞台
         efficiency 企業だけでなく入場者の効率も考える
            ex)列を曲げる・・・曲がり角で達成感を感じてもらう
    背後にある「卓越性」への志向
A文化:「キャスト」をあえていえばカルト的に動員する(つくられた「文化」)
 
(6)弱点はないのか
    あまりに作られすぎている・・・顧客が常に「受け身」になってしまうことの是非