2002/06/05
 
 
 
 
 
サービス・マネジメント論
−第9回 サービス・マネジメントの展開(2)−
 
 
 
 
 
0.前回講義への質問などから
(1)「顧客ロイヤリティと顧客満足」に関して
@ 1(1)@ クレジットカードは、サービスを提供されたときの支払いの手段であって、商品やサービス自体ではないと思いますが。
 現金以外の支払い手段を提供しているというサービスなのです。カードそのものではなく、カード会社の活動を考えてみてください。
A 1(1)@「新しい顧客は最初はむしろ費用を生む」とありますが、レストランでもそうですか。レストランならどのようにかかりますか。
 レストランの種類にもよりますが、常連になってくると宣伝の手間もいらないし、最初からいちいち説明する必要がない、すいたときを見はからってきてくれるなど低コスト化します。
B 1(1)A リピーターは内容を把握しているから、サービス提供側の手間が省けるとあるが、最初と比べて後は軽視しているとか、手抜きのように感じるが、手間が省ける=リピーターを生むとは本当に正しいのか。
 逆です。手間が省けるからリピーターはありがたいのです。
C 利益の基礎はリピーターではない企業はあるのですか。
 どんな場合でもそうですが、理論がそのままあてはまらないケースはあります。したがって、こうした一般的な質問はほとんど意味がありません。たとえば、リピーターが利益の基礎とならない業界の特徴は何ですか、といった質問なら答えられますが・・・。
D 1(2)例以外にも ハンバーガー → マクドナルド のようにチェーン店が多いと思いますが、@からBのことはチェーン店と結びつかないのではないですか。どこの店でも同じだったりするのに、@からBを高めることと顧客ロイヤリティの結びつきがわかりません。
 各店舗で均一なオペレーションを提供しているチェーンやフランチャイズの場合、個々の店舗というよりそうしたチェーン全体として顧客ロイヤリティが働くと考えられます。ハンバーガーを食べたい、と思った瞬間、なにも考えなくても自然とマクドナルドのほうに足が向いているとすれば、あなたはマクドナルドにロイヤリティがある、というわけです。こうした場合、Bがわかりにくいと思いますが、どの店でも同じレベルのサービスを受けられる安心感というのも、一つの人間的な信頼といえるのです。
E 1(2)顧客ロイヤリティを高めるために実際に行われている具体例は何がありますか。
 ぜひ自分で調べて見てください。
F 1(2)Aスイッチング・コストの意味がわかりません。
 簡単にいうと、ある商品やサービスを購入する際に、なれた行きつけの店でない他の店にいった場合におこってくる精神的・肉体的負担や、そのための追加的費用(交通費など)です。
G 1(3)「飢えや渇きを癒す」といった、客観的な生理的充足感がどうして顧客満足の一部にはならないのか。
 たとえば、のどが渇いて飲み物を飲んだ場合、どんな飲み物でも渇きは癒されます。したがって、渇きが癒されることは顧客にとって当たり前であり、評価にならないのです。どの飲み物がより満足を得られるか、というのは顧客の主観的評価なのです。
H 主観的な評価を高めることが必要とはどのようなことですか。
 期待より大きな満足を提供することです。
 
(2)従業員満足とインターナル・マーケティングについて
@ CSとESでは企業によって重視しているのはどれですか。また、企業によって違うのですか。代表例も知りたいです。
 CSは、実態はともかく多くの企業が必要性それ自体は理解しているでしょう。ESについてはまだまだ十分な理解が得られているとは思えません。CSの代表例としては、日本ではヤマト運輸でしょうか。ESの成功例としては、アメリカのサウスウェスト航空がよく取り上げられます。
A 2 特定の従業員の質が特に高くて、他の従業員は十分な質を保持しているとき、他の従業員の質が顧客に低く見られてしまうことがあると思いますが、その場合、従業員のレベルを平均的にするべきですか。
 特定の従業員の水準に全体を高めるよう努力するのが第一です。しかし、非常に特殊な能力であってそれができない場合は、システムや機械で代行できないか考える、特定の従業員を特定の顧客への対応にあたらせてスペシャル・サービスをうちだす、平均水準へ期待をコントロールする、などがあげられます。
B 従業員が満足することによって、顧客満足へとつながる、従業員満足をしても顧客に伝わらない場合はあるのですか、また、その場合どうすればよいのですか。
 従業員の満足だけ考えていればよいわけではなくて、従業員満足と顧客満足の循環をつくることが重要なのです。顧客の満足を実現すれば従業員も満足を得られるような仕組みづくりが必要です。
C 2(3)インターナルとはどういうことですか。
 インターナルとは「内部」の意味です。
D 動機付けとはどのようなことですか。
 よりよく働くことが従業員自身の欲求を満たしより高い質をめざす努力への意欲をかきたてるようにすることです。
E サービス・プロフィットチェーンとはどういうことですか。
 顧客の満足と従業員の満足の好循環をつくりだすことです。詳しくはテキストp255図参照。
F 2(2)何故、サービス業は低賃金、不安定雇用労働者によって支えられていることが多いのか。
 サービスとは、語源がserve、すなわち「仕える」にあることから明らかなように、もともとは奴隷が主人に奉仕するような意味合いがありました。たとえば、大きな屋敷にいるような「使用人」を英語ではservantとよびます。このように、サービス業は社会的にみて低い地位の人間がすることと考えられていたわけです。日本でも江戸時代の身分制度は士農工商で、商業以外のサービス業はさらにその下でした。遠因としてはこの点があります。
 また、多くのサービス業は季節や景気、流行などによる需要波動が大きく、雇用調整が常に必要になることや、比較的熟練を要さない労働が多い、といったことが直接の理由となっています。
 
(3)ホスピタリティに関して
@ 3「もてなす姿勢」について外国と日本に違いはあるのですか。
 あるでしょうね。
A ホスピタリティは必ず人対人の間で生まれるのですか。物対人はないのですか。
 もの対人でもホスピタリティはありえます。別にロボットでなくても。
B 相手が喜ばないものはホスピタリティにならないのですか。
 その通りです。
C 「お客様は神様です」と顧客の自尊心を守ることは同じですか。
 「神様」はいわばスローガンであり、提供側の心がまえを示しただけですから、それだけでは自尊心を守ることにはなりません。
4.サービスの品質 (テキストp133)
(1)マーケティングの中核としての品質
 サービスのマーケティングにおいて「品質」の持つ意味
  =サービスはそれを消費した「以後」が重要である
    ・口コミによるマーケティング
    ・リピーターの確保
 
(2)サービス品質とは 
 @「品質」の構造
  ・探索品質:消費者が製品(サービス)を購入する前に評価できる品質
  ・経験品質:       〃       して後に経験する品質
         *サービスの場合は「購入と同時に」と理解してもよい
  ・信頼品質:購入後も時間が経過しないと評価が難しい品質     例)医者の診断
    →サービスは経験品質、または信頼品質に偏るので、消費者は他の消費者の経験
     (つまり口コミなど)に頼ろうとする。
         例)テレビ番組の企画で「ネタがつきたらラーメン屋」
 A客観的品質と主観的品質
   マーケティングという視点から見た場合には、主観的品質が重要
    理由1:顧客の消費行動に大きな影響を与えるのは、顧客が自ら認知し判断した評価で
        ある
         *客観的品質は重要でないわけではなく、いわば前提である。
    理由2:サービスでは結果だけではなく、サービスの提供過程も評価される
 B品質と満足感
   同じように主観的な評価だが、概念としては異質。 *混同が多いので注意。
    品質:合理的な認知、知覚。長期的な評価。
       主観的ではあるが、評価した本人としてはいわば「きっちり」評価している
    満足感:感情的・感覚的反応。合理性はない。
        例)「いい演奏」と「好きな演奏」は違う
   通常は、品質への評価が満足の前提になる
     (品質への評価が低いのに満足ということはあまりない)
 
(3)サービス品質の測定
@SERVQUAL
  ここでは、サービス品質を期待と実績との対比から測定する方法がある、とだけ。
   サービスへの期待の構造
Aサービス品質の五つの側面
 ・物的要素              ・確信性
 ・信頼性               ・共感性
 ・反応性
 
5.サービスの価格(テキストp192)
(1)サービスの価格とは
 ・「原価プラス利潤」と単純にはいかないのはなぜか
 ・価格の持つ複数の機能
   @コストパフォーマンス機能〜価格からも品質を推定する
   Aマーケティング機能(イメージ)〜価格も品質である
   B需要調整機能
 ・サービスの価格とは
「市場ターゲット、サービス・コンセプト、市場での位置、需要などの総合的な検討を要する戦略的な手段」
(2)価格設定で考慮すべき要素
 @サービス・コンセプトのより詳細な規定
 A束を解くこと(unbandling)
 B新しい価格の担い手の提示
 C成功報酬型価格設定
 D参加賞例型価格設定
 
6.サービス・リカバリー
 「えらいことになった、どないしょう」
   →やっかいな苦情処理から、苦情を転じて福となすサービスへ
(1)苦情対応(complaint management)の重要性
@苦情対応によって、不満を持った顧客を満足させる機会を得ることができる
  ・顧客の態度が変わる
  ・口コミの内容が変わる
  ・適切な苦情対応によってむしろ信頼=リピーターの獲得ができる
A顧客が不満を持った理由を知ることができる→改善点などが明らかになる
 
(2)「苦情満足」への道
@前提として、苦情対応を前向きに活用することを組織の姿勢として確立する
A苦情を言いやすくする
苦情を言うための敷居が高いと、顧客の苦情はサービス提供側ではなく口コミで悪口を言ったりすることで解消されるので、非常にマイナスが大きい。
Bどこに苦情が来てもちゃんと対応できるようにする
C顧客の言い分を聞き、フェアな姿勢をとる
D苦情情報のフィードバック