サービス・マネジメント論 第5回
質問への回答
セグメンテーション
・ サービス業のセグメンテーションは他の産業に比べるとあいまいで、セグメンテーションするのが難しくないですか?
そんなことはありません。コンセプトとセグメントの対応関係をよく考えて、明確に絞り込んでいくことはありえます。
・ 売る年代を変えるのではなく、売る年代の幅を広げた場合「セグメンテーションをした」ということになるのですか?
セグメンテーションとはそういうことではありません。よく見直してください。
・ 「サービス」と「もの」でのセグメンテーションの大きな違いはないのですか?
考え方や分析手法そのものは大きな違いはありません。
・ ターゲティングとセグメンテーションの違いは?
厳密に言えば、セグメンテーションを行って市場をいくつかに細分化し、そのうちの一つあるいは複数を自社の事業活動のターゲットにしていく(ターゲティング)ということになります。
・ セグメンテーションが不鮮明であると、様々な不都合が生じるという説明でしたが、サービスする側は自分たちの設定したセグメントを利用者側にどのように知らせているのでしょうか?
「我が社が対象とするセグメントはここです」といったような表現をしている企業・組織はないでしょうが、広告やサービス内容それ自体によって対象とするセグメントへ訴求をしているわけです。
・ 客の方向性を絞り込むやり方で成功は必ずしもあるのか?
絞り込むことがすべてではありません。セグメンテーションを行った上で広範なセグメントへむけて対応していくという方向性もあり得ます。
コンセプト
・ マクドナルドのプレミアムマックは、モスのコンセプトで売り出していると思うのですが、やはり他人の土俵は売れないのでしょうか?
必ずしも他人の土俵で売れないとは限りません。プレミアムマックの売り上げ状況は知らないのですが、もし売れていないとすればマクドナルドの主要セグメントである顧客層と商品がかみあわなかったか、あるいはマクドナルドのコンセプトから逸脱した商品であったということではないでしょうか。
・ サービスコンセプトの種類の中でサービスとしての経営活動の利点と弱点は?
利点は、専門的な経営ノウハウに特化して事業を行うため、委託する側は専門的ノウハウを簡単に手に入れることができ、委託をうける事業者は設備投資などの負担・リスクを回避できるということです。弱点として一つ大きな問題は、うまくいかなかったときの責任問題でしょう。
・ 飲食店は顧客自身で行うよりもうまく、早いという点から考えると、サービスコンセプトは@特別な能力に当てはまるのか?
まさにそのように考える必要があります。
・ 「ユニークな」コンセプト=「独創的な」コンセプト、と考えてもいいのですか?全く同じ系列のチェーン店でも、ウリにするものが違う店もあると思うのですか?
独創的でなくてもよいですが、差別的(競争他社と異なった魅力をもつ)であることが必要です。
・ 子会社的なサービス(コンビニはスーパーや百貨店の子会社)のところでは、親会社の影響を受けることが多いと思うのですが、その場合セグメントやコンセプトも同じようなものになりますか?
まさに、イトーヨーカドーとセブンイレブンのコンセプトが異なるように、同じようになるとは限りません。
・ サービスのコンセプトを決めてやろうとしても、チケット会社に対するチケット予約代行サービスなどの場合ように、コンセプトに邪魔が入ることを会社は想定してるのでしょうか?
別に予約代行会社があってもチケット会社のコンセプトに影響はありません。チケットを購入する主体である顧客の「電話をかける」という行為を予約代行サービス会社が代わりに行っているだけで、チケットを購入するという意志決定を行い、支払いを行うのは顧客自身ですから。
・ サービスとしての経営活動という形態のサービスは日本ではあまり行われていないのでしょうか? マンションの管理とかそれに当てはまりますか?
マンションの単なる維持管理であれば経営活動の提供とはいえませんが、入居者の募集や契約などマンション業務全体を請け負って、大家にはただ利益のみを渡すような活動であればこれにあたるでしょう。
サービスの生産
・ サービスの生産とはサービスを提供する側の行為であって、その提供されたサービスを受ける側の行為を消費というのでしょうか?
その通りです。
・ 「共同生産」の可能性で、顧客にも戦略的方向性を共有してもらうことが可能ということですが、具体的にはどのようなことで、どのようにして共有させるのですか?
・ タクシー会社の戦略は顧客とうまく共有できるのでしょうか?
たとえば大学で、一定の方向性をもった(たとえばリーダーシップのある)学生を育てることでほかと差別化したいと考えたときに、学生自身がその方向性を共有しなければ不可能でしょう。レストランであっても、高級レストランの雰囲気を維持するためには顧客自身がその雰囲気作りを共有しないといけないでしょう。ただ、すべてのサービスでそれが可能というわけではありません。
その他の質問
・ 利益の80%は顧客のうちの20%から得られるのわかりましたが、残り利益20%はなにからうるのですか?
のこり80%の顧客からです。
・ アメリカの病院は医者に場所を提供しているようなものだから、患者に入院させる日数が少ないのですか?
単純にそういうわけではありません。むしろ保険制度が原因でしょう。
・ サウスウエストについてもう少し詳しく知りたい。
『破天荒』日経BP社刊、または『社員第一、顧客第二企業』毎日新聞社刊、のいずれかを読んでみてください。
・ ターゲットにする方法において、なぜ教育水準が参考とされるのか?
教育水準が必ず参考にされるわけではありませんが、教育水準の違いによって求められるサービスの内容が異なる場合があるでしょう。たとえば外国語の通信教育。
・ ノウハウの移転ということでいうと、大学などの教育機関もこれに当たるのでしょうか?
教育機関は少し違う・・・と思ってきたのですが、最近そうでもないようですね。それでいいのかどうか疑問もありますが。
・ 海ほたるは、実際、閑古鳥が鳴いているけれど、展望台や売店は繁盛しているこれは成功したと見ていいのですか?
海ほたる自体ははやっていたので、その時点では海ほたるだけは一定成功したといえるでしょう。ごく最近の状況はわかりませんが。
・ ホテルの食事もピザ屋のようにデリバリーしてもらえるように、なっているのですが、先生はこのサービスをどう思われますか?
・ サービスの特徴である同時性の例で、オーブンキッチンで食べる前での過程がサービスになるっていうことですが、どういう意味でのデリバリーであるのかが、わからないです。
「デリバリー」を「宅配」と考えないでください。サービスを提供するプロセスのことです。
・ 六本木ヒルズのオフィスで働くOLが、ヒルズ内の飲食店ではなく、より安価な近隣の店で昼食をとる場合が多いという記事をみたのですが、この場合なぜヒルズ内の飲食店は積極的にOLをターゲットにしないのでしょうか?
推定ですが、六本木ヒルズの飲食店は完全な日常ではなくやや高級感、非日常感のある「食事」をコンセプトにしているものと思われます。アミューズメントスペースとしての打ち出しがあります。これに対して、中のオフィスで働いている人の普段の「お昼ご飯」は日常ですから、こうしたコンセプトとはずれていると考えられます。だとすれば、価格帯も含めて中で働いている人を対象としないということは十分ありえます。