サービスマネジメント論 第6回
質問への回答
サービスデリバリーシステム
・デリバリー・システムのところで顧客をマネジメントする方法にはどのようなものがありますか?顧客の間接的参加の面ではどうですか?例えば、スターバックスで「コーヒーのにおいを味わうために禁煙にしています」というような表示を出しているのは、これにあたりますか?
これはまさにそのとおりです。
・サービスデリバリーシステムにおいて顧客の参加は不可欠の場合が多いと言うわけですが、顧客の参加が不可欠ではない場合というのはどのようなものですか?
たとえばクリーニングのように、参加がほとんど意味がない(特に自宅で集配する場合)サービスがあるのは確かです。
・サービスデリバリーシステムのバックステージとフロントステージが明確に別れていない例はありますか?
理容・美容などがそうです。ほとんどバックステージがありません。
人材育成
・「状況やコンテキストを理解して『望ましい行動』を自らつくりだいしていけるようにする」とありました。これは非常に重要なことだと思いますが、具体的にはどうやっているのでしょうか?まさか、「望ましい行動」をさせるマニュアルなんてないですよね?
・人材育成で「望ましい行動」を自ら考えるというのは、想像して力をつけていくとおっしゃいましたけど、他にその場その場で判断して行動する力をつける方法というのはないのでしょうか?
理念やサービスの目標の共有、基本的な活動のマニュアル化などを前提として、個々の従業員がよいサービスをすることによって成長や自らの自己実現を可能にする評価や援助、ということです。具体的にはたとえば『真実の瞬間』や『破天荒』、さらにはリッツ・カールトン・ホテルの事例を紹介した「ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス」2002年7月号などを参照してください。マニュアル化されたサービスの部分を機械など人的資源を投入しない方法で合理化し、本当に人でないとできない部分に人材を投入する傾向のもとでは、こうしたサービスのあり方が特に重要になっています。
・従業員を形式陶治するという事は社員からアルバイトまでの範囲を言うのか?例えば、チェーン展開している企業などはアルバイトの人数が多い。アルバイトを形式陶治して自ら考えさせるというやり方がいいのではないか?
アルバイトの活用法もさまざまです。位置づけ次第なので、「こうだ」というのはありません。
・今日、必要とされている人材育成方法として従業員自ら内発的に望ましい行動がとれるように持っていくとあったが、「マニュアルによる訓練」は外側からではないのですか?
マニュアルは外部から形式として与えるものですが、それを自分のいわば血肉としていくことで融通の利かない機械的なサービスではなく、マニュアルをベースにしながらある程度応用的に対応できるサービスが可能になっていくわけです。
・従業員を育成するのは、サービスのフロントステージには「顧客」がいてサービスには生産と消費が同時だからという理由だからですよね?また、従業員の育成は自社の利益につながるからですよね?
基本的にはそうです。
・従業員のやる気の維持はどのようにしているのでしょうか?
・従業員に高い質・能力を求めても、モチベーションなどの問題もあると思います。例えば、給料UPとか社員旅行であるとか、会社側はどのような対応をするのでしょうか?
いろいろなやり方がありますが、基本的には広い意味での評価がベースになると思います。評価というのは単に給料とかだけではなくて、やる気をだしてがんばったこと、それが成果になったことが、公式・非公式(同僚の評価も含めて)に正当に評価されることです。
SAS
・SASの「雪の日のコーヒー」で、当事者は臨機応変に対応したと思いましたが、実際、供給する人はその人に売らなかったり、後で揉めたりということで、その当事者は対応することができましたが、どこまでサービスを行うべきか明確にされていないで、そのようなことが認めると、行き過ぎたサービスとの境界線がわからず困惑してしまうことはないのでしょうか?困惑してしまう人は人材教育が行き届いてない、または能力がないと見なされてしまうのでしょうか?
この場合、こうしたサービスをやらなかったから責められるということではありません。ただ、がんばってこうした努力をした人が高く評価されることを通じて、組織内の暗黙のルールが形成されていきます。そのことが大事なのです。
・SASのチェックイン・カウンターの話で、「個人プレーではない」と言われていましたが、基本的には個人も組織そのもの育成の過程は一緒なのですか?それとも、トップに立つ人間の意識だけで作られた組織風土なのですか?
組織風土は外部からそれ自体を直接変化させることはできません。その意味では、トップといえでも組織風土を直接変化させることは不可能です。そうではなく、誰のどのような行為をどのように評価するか、組織の価値規範として何を示すのか、ということを通じて間接的に変化させていくのです。その意味で、個人と組織の成長は相互的です。
従業員の役割
・従業員の役割として顧客のコンサルタントとあるがこの病院のような特異な例でなく、他に例はありあすか?
顧客が明確に意識していないことを明確化することを通じて、顧客に一定の方向付けを与えるという意味では、単に「明確化する」=カウンセリングをこえて、具体的に提案をしていくというのもコンサルタントという位置づけにあたるでしょう。そうであるならば、たとえば旅行会社のカウンターで個人旅行の相談に乗るのもコンサルタントといえるでしょう。
サービス活動の演技者
・USJの従業員は自分の事をクルーと呼んで、それぞれのアトラクションにあったコスチュームなどを着てますが、これを「サービス活動の演技者」というのですか?
まさにそういえるでしょう。
顧客のサービス生産への参加
・大学評価アンケートも直接的参加の一つですか?
間接的参加でしょう。
・直接的参加と間接的参加は利用者を増やすため行うことですが、技術と物的要素と比べて、今現在の社会からして勝てるとおもいますか?接客良い悪いではなく、今の人は値段や物で選ぶ人が多いと思います。その辺りのことはどう思いますか?
顧客のサービス生産への参加にどのような種類があるのか、をよく確認してください。接客のよしあしの視点でこの問題をとらえるのは根本的にまちがっています。また、サービスは「モノではない」ということをかなり繰り返していっていると思いますが。
・エトスって何ですか?
とりあえずは「やる気」と理解しておいてください。
その他の質問
・某航空会社の女将さん修行の話ですが、どこの航空会社も十分良い接客をしていると思うのですが、それ以上のサービスを目指してやっているのでしょうか?
そういうことのようです。実際、社会全体からみれば航空会社の接客の水準は非常に高いのですが、かつて運賃が非常に高かったころの名残で、顧客が航空会社の接客に要求する水準もまた高いものがあるので、差別化の手段として接客レベルの向上は意味があるようです。ただ、どうやってもたいした差がでるとは思えないので、手間暇とコストをかけ、従業員にもよけいな負担をかける割にはめだった効果が出ないだろうと予測しているのですが、どうでしょうか。
・口こみのコントロールは大変むずかしいそうですが、具体的にはどのようにやるのしょうか?
・口こみを操作するとは、具体的にいえばどういうことになるのですか?例えばサクラを踊らせるということですか?
影響力の大きな人には特に注意して悪い印象を与えないようにすること、口コミとして流れやすいような情報を意図的に顧客に流すこと、などがあります。