サービス・マネジメント論
-第5回 Ⅴ.サービス・マネジメント・システム(2)-
4.具体的なサービス提供の仕組み~サービス・デリバリー・システム(マp.228、入p.102)
(1)サービス・デリバリー・システムとは
製造業における生産と流通(販売)のシステムと同じ。しかし、サービスの特徴のところで述べたように、サービスはたいていの場合生産と消費が同時であるから、これを一体のものとしてとらえることが重要である。
例)生産と消費が同時であることを利用して品質を管理する・・・オープン・キッチン
(2)サービスの戦略とサービス・デリバリー・システム
どのようなデリバリー・システムをとるかは、セグメントとコンセプトから決まってくる。
例)アメリカの低運賃航空会社
(3)サービス・デリバリー・システムの構造(マp229図)
・フロント(フロント・ステージ)
顧客に直接接するサービスを提供する従業員
(提供する「場」に着目した「サービス・エンカウンター」という言葉もよく使われる)
・バック・オフィス(バック・ステージ)
フロントの仕事を支援する
*フロント・ラインとバック・オフィスの関係~映画「スーパーの女」
(4)サービス・デリバリー・システムの構成要素
①人材~「真実の瞬間」を実現する従業員とは
「真実の瞬間」・・・顧客(利用者)にとって本当に価値のあるサービスを、サービスを提供するがわが個人と組織の能力を発揮して顧客(利用者)に提供しようとするその瞬間が決定的である。
*SASの「雪の日のコーヒー」のエピソードは、決して個人プレーではない
a)人材育成のいくつかの方法
ア)外側から従業員の行動を望ましい方向へ矯正する
イ)従業員が自ら内発的に望ましい行動がとれるように持っていく
・マニュアルや訓練によって「望ましい行動そのもの」を身につけさせる(形式陶冶)
・状況やコンテキストを理解して「望ましい行動」を自らつくりだしていくようにする
できれば、そうすることで従業員自身の成長、自己実現、満足へつながるように
b)従業員の役割
もちろん、サービス活動自体を行うことが第一義的な役割だが、そのうえで・・・
ア)顧客(利用者)のカウンセラー~顧客の真の要求を理解し、明確化させる
例)「おいしいものが食べたい」のウラには
イ)顧客(利用者)のコンサルタント~顧客に情報を提供する
例)ショウルダイス病院の患者オリエンテーション
ウ)客(利用者)とサービス提供組織との仲介者~特殊な要求にどう対応するか
例)SASのチケットなしで乗客を通したチェックイン・カウンター
→重要なことは、これを判断できるできる従業員がいたこと(能力)
+
これができる職場の風土であったこと(組織)
エ)サービス活動のプロデューサー
例)あるデパートで・・・他の売場にお客を引き渡して、あとでさりげなく声をかける
オ)サービス活動の演技者
例)小さな温泉宿で
②共同生産者としての顧客(利用者)
顧客(利用者)もサービス・デリバリー・システムの構成要素である。
a)間接的参加:その場にいることの効果・逆効果
例)雰囲気作り
b)直接的参加:実際にサービス活動に加わること
ア)仕様の決定 例)理髪店
イ)共同生産(狭義の直接的参加) 例)セルフサービス
ウ)品質管理 例)オープン・キッチン
エ)エトスの保持:従業員のやる気を維持・喚起する
オ)サービスの発展:利用者側からの情報提供など
カ)マーケティング:要するに口コミ
よくできた直接的参加の例~ベニハナ・オブ・トウキョウ
③技術と物的要素
サービスだからといって形のあるものの役割が小さいわけではない。