2001/05/21
サービス・マネジメント論Q&A−第5回(5/14)分−
一 サービス・コンセプトに関して
1 サービス・コンセプトの種類A資源の新しい結合はサービスの範囲に入るのだろうか?そもそも村おこし的なことはサービスといえるのか?
例に出したものがわかりにくかったかも知れませんが、サービスは「機能または活動」であるというのを思い出してください。既存の多様な資源を組み合わせることによって、従来にない新しい機能や活動を提供することをコンセプトにすることで、他との差別化をはかることができます。まちづくりなどはまさにそうで、どこのまちにもあるものでも、組み合わせ方によって全く新しい「まち(地域)」のコンセプトを生み出し、住民や町にやってくる人に対して新しい魅力ある機能や活動を提供することができるようになるのです。
2 サービスのコンセプトはユニークと書いているが、実際は似たような値段をさらに下げるという安さだけが売りというところもあるきがする、それは安さをユニークと捕らえるべきなのか?
3 サービス・コンセプトの種類のCでアメリカでは医者に場所を提供しているとあるが、日本は違うの?
これも、例の説明が不十分ですみません。日本では病院は医療法人などが運営し、勤務医とよばれる病院の医師は医療法人が雇用しています。アメリカでも「ER」に出てきたような病院はこれに近い形ですが、一方で施設とスタッフを病院が用意して医師と契約を結んで場所を提供し、患者は個々の医師についているというかたちの病院があります。この場合、医師は日本でいう開業医とおなじ、独立した立場になりますが、自分では医療施設をもっていないか自分の医療施設と大きな病院の両方を使っています。
二 セグメンテーションとターゲット
1 人口統計的方法は、アンケートやPOSシステムで可能なのはわかったが、サイコグラフィックの場合具体的にどのようにしてニーズやウォンツを見つけるのだろうか?それによるターゲット設定はどのように行われるか?
ひとことで言えば市場調査です。アンケートやヒアリング、その他様々な手法によってどういう人たちがどういうニーズやウォンツを持っているかを探ります。POSもセブンイレブンが日本で大規模に導入して注目されたのは、単に商品管理という意味ではなくサイコグラフィックな情報がリアルタイムで集まるからです。というのは、レジで入力するときに購入者の性別、年齢を入力し、それに店舗の立地や天気などの情報を加えることで、「どんな条件の時に、どういう時間帯に買いに来る、どんなお客さんが、どんなものを買っているかーしかも単品ではなく組み合わせとしてー」をとらえられるからです。
2 ターゲットの設定はレジュメ以外にも方法はあるのか?
3 セグメンテーションの決定において、企業は市場の要求に対してサービスを作り出し、提供すべきなのか、逆に、作り出したサービスに合わせてセグメンテーションを決めるべきなのか?また、ターゲット設定に関して2つの方法で、それぞれ最も注意すべき点は何か?
あまり説明しませんでしたが、まったく新規にサービスを立ち上げる場合と、既存のサービス事業においてターゲットの幅を拡大したり見直したりする場合で違います。新規に立ち上げる場合はまず市場のニーズやウォンツはどこにあるのかを見極めます。いっぽう、既存のサービス事業の場合市場のニーズやウォンツとの関係では自分たちの事業をどのように定義するのか、を考え直すことから始まります。
ターゲット設定の二つの方法については、@人口統計的手法は当然、人間を外形的要因で分類しているので生活必需品のようなものはともかく、嗜好や文化などが強く反映するようなニーズやウォンツはとらえにくい、Aサイコグラフィックな手法は、慎重に調査しないと一部分だけをみたりバイアスのかかった情報にとらわれたりしがちだ、などが注意点としてあげられます。他にもあるでしょう。
4 狭いセグメンテーションをターゲットにするより、広いセグメンテーションターゲットにする戦略、戦術をとるようにしたほうが利益が上がるのでは?
いちがいにいえません。大企業などがあまり相手にしない狭いセグメントをニッチ(すきま)といいますが、ここでは参入する事業者が少ないため価格競争がおこりにくい、市場の規模が大きく変動しないので効率的にサービスや商品の提供ができる、顧客とのつながりを深めることが容易なので安定的な顧客をつくりやすい、などの利点があります。売上高と利益は異なることに注意してください。
5 私たち若者をターゲットにしているサービス業にはなにがあるのか?果たしてそれは成功しているか?
6 JRの場合、このマーケットセグメンテーションは公共交通機関にも通用するのか?通用するとしたら、どのように行われるのか?公共交通機関は通学などに不可欠なので経営戦略を行う必要などはないと思うが、実際はどうなのか?
公共交通機関は以前話したように「平等性」を法によってコア・サービスとして義務づけられています。その意味ではセグメントの設定が不要のようにみえます。しかし、実際には特急列車にはグリーン車があったり、通勤電車でも路線によって投入する車両を変えたり、あるいはさまざまな割引料金の設定など、ターゲットに応じてさまざまなサブ・サービスを提供することでマイカーやその他の交通機関との競争に対応しています。
7 ターゲット設定をする際に膨大な量の情報が必要で、それを集める工夫が必要とあるが、それを提供している会社などはあるのか?
8 サービスにおいて、すべての人をターゲットにするよりもターゲットを絞って、展開していったほうが利益を得られるのか?
三 その他の質問
1 最初のクレジットカードの話で、たとえば、携帯電話契約するときの最低半年は使ってくださいっとか言うのと同じか?
2 サービスとしてのシステムはいつ頃から出来上がってきたのか?
経営学全般にいえることですが、最初から「こういうシステムをつくろう!」「こういう新しいやり方をしよう!」といってつくりだされてきたことはあまりなく、試行錯誤のなかでつくりだされてきたものを後から整理して、「ああこういうことだったのか、だったら他でも応用できるんじゃないのか」ということが多いのです。サービス・マネジメント・システムも、成功したサービス企業をノーマンが「ホーリズム」という哲学的枠組みにあてはめながら整理していって、「こういう考え方が必要なんじゃないか」と提起したものです。ノーマンがこれを初めて提起したのは80年代の終わりです。
3 セグメンテーションとコンセプトどちらからはじめに考えていけばよいのか?
4 ファミレスの品揃え、ロイヤルホストとエブリディズのところはどういう意味?
80%の利益は20%の顧客から得られる、というところを説明しませんでした。この法則は、数字はたとえですが、要するに大半の利益は常連さんからあがる、ということです。ファミレスを例に取ると、学生なりファミリーなりというファミレスの中心的なお客さんの注文するメニューの幅というのはそんなに広いものではありません。したがって、そうしたメニューについては食材も大量購入できるし、レシピも定型化できるので、低コストで利益をあげることができます。いっぽう、たまにしか注文の入らないメニューについては食材の仕入れ数が少ない、オペレーションが不慣れで非効率などの理由から利益があがりません。ただ、メニューの幅が狭いと確かに貧弱にみえるので、絞り込むことに抵抗があるのは事実です。ここを突破してメニューの幅を思い切って絞り込んで90年代中盤に低価格戦略にうってでたのがエブリデイズであり、多様な顧客層を確保するために一定のメニューの幅を維持したのがロイヤルホストです。
5 過剰なサービスって何?
6 「お客」と「顧客」は、厳密に言えば、違うと思うが、授業では同じ扱いになっているように感じる、同のように考えたらいいのか?
講義では、「顧客」はかなりきっちりした意味で使っています。具体的には、あるサービス提供者にとって、その提供するサービスの明確な「受け手」です。「お客」は、具体的な例を話すときに、臨場感を出すために使っているのであまり厳密な意味では使っていません。
7 ラブホテルはなぜかたまってあるのに、つぶれないのか?
8 マクドナルドともモスバーガーはサービスの質の違いではないか?
9 ニードとウォンツを分ける必要は何?
ニードとは抽象的な要求で、それを具体的に満たすものがウォントです。前回レジュメの脚注をよく見てください。あるニードに対応するウォントは単一ではなく、逆にあるウォントとして表現されているものの背後にあるニーズも単一とは限りません。たとえば、「おなかがすいた」というニードを満たすウォントとしては、まず「外食」「中食(お総菜や弁当を買ってくる)」「内食(家でつくる)」などの選択肢があり(友達からまきあげる、とかいうのもあるかも)、ついで「なにを食べるか」という選択肢があります。いっぽうで、「レストランでフレンチ」というニードには、単に「おいしいものが食べたい」というウォントだけでなく、「彼氏(彼女)といい雰囲気になりたい」「スポーツでいい成績をとったので自分で自分をほめたい」「親孝行したい」などのウォントがありえます。
サービスを提供する側は、自分たちが提供するサービスによってどのようなニードやウォントを満たしていくのか、満たす可能性があるのか、といったことを考えていく必要があります。たとえば、ウォントは同じでもニードが違っていれば、異なったサブ・サービスが必要であったり、顧客の評価基準が違ったりしますから、それに対応するのか、あるいはそういったニードは相手にしないのか、を判断する必要があります。
四 その他の要望
1 各業界のサービス部門について、さまざまなアプローチでもっと学びたい。
2 左端に座っていて、右端の黒板が光って見えにくかった。たまに字がすごく小さくて読めない、カーテン・・・
教室はすいているので、なるべく真ん中にすわってください。字が小さいことについては改善に努力しますが、その場で「みえない」「読めない」など指摘してください。光の加減は、ブラインドで調整できます。そのくらいのことはやってくださいよ・・・