北米研修現地レポート②(レポート①はコチラ)
【研修3日目】
研修3日目。時差ボケも解消され、現地の食生活にも慣れてきた様子。
本日は、ジョージ・ルーカスやロバート・ゼメキスなど著名な映画監督を輩出してきた南カリフォルニア大学(University of Southern California:以下「USC」)からスタートします。
1880年に設立されたUSCはアメリカ西海岸最古の私立大学として、映画界以外にも多数の有識者を輩出しており、世界大学ランキングでは常にTOPに名を連ねている名門校です。
ここでは、Cinematic Arts学部のRichard Weinberg先生の講義を受けました。Cinematic Arts学部は、約1700名の学生が映画、メディア、インタラクティブ映像などを主に学んでおり、その中でも約100名の学生がアニメーションを専攻しています。今年度は、学生を対象としたアカデミー賞において、この学部から4名の学生がノミネートされたとのこと!
今回は特別に学生の撮影現場や大学院生の個人研究施設も見学させていただきました(未発表作品に取り組んでいるため、ここでもやはり撮影は禁止とのこと。残念!)
Weinberg先生は、“芸術と科学を統合する(Integration ART and Sciences)”を研究コンセプトとして掲げられています。講義では4Kカメラと顕微鏡を使った映像作品を紹介していただきました。また、学生たちは、事前課題としてそれぞれが制作したCGの静止画について英語でプレゼンテーションを行い、Weinberg先生からは一人ひとりに講評をいただきました。
英語でのディスカッションも慣れてきたところで、なんと、この後、嬉しい企画が!USCの留学生サポート団体(Japanese Exchange Students Supporter)の学生6名が歓迎レセプションを企画してくれていました。短時間でしたが、同じ学生同士、それぞれが学んでいることについて紹介しあうなど、話が尽きることなく楽しく盛り上がりました。
異国の地でこのような温かいおもてなしをしてもらうと、とても嬉しい気持ちになりますね。これを機に、帰国後、日本在住の留学生とのコミュニケーションを積極的にとってみようか、なんて思えたらこの研修ももっと意義深いものになりますね!
午後からは、映画、CM(広告)制作会社であるMoving Picture Company(MPC)へ。映画部門は、バンクーバー支社がメインとなっており、ロサンゼルスではCM制作が中心となっています。海外の大手電機機器メーカーやテーマパークのCMなど、国内外に様々な企業をクライアントにもつMPCは、昨年制作したCMの多くがVFX部門で受賞するなど、大きな注目を集めている会社の一つです。
案内をしていただいたのは、26歳の若手プロデューサー。年齢が近いということもあり、和やかな雰囲気でディスカッションが繰り広げられ、学生たちへ温かなエールをいただきました。
「2年先の将来を見据えて、卒業までに様々なことに興味をもってチャレンジをしてほしい。自分の中のルールや固定概念に捉われすぎると、真のアーティストにはなれない。何か新しいプロジェクトに携わったとき、途中でうまくいかなかったり、ダメだと思っても、最後までやりきってみること。完成作品は必ず、周りの人に評価してもらうこと。他人に講評されてこそ、技術は向上する。前向きに多くの意見を受け入れる姿勢を大切にしてほしい」
最後の企業訪問先は、「ターミネーター3」や「アバター」「カリフォルニア・ダウン」など多数の映画に携わってきたVFX制作会社Hydraulxへ。
日本で2016年秋に公開された「カリフォルニア・ダウン」を題材に、街が崩壊していくシーンなど実際の編集映像を見ながら、スーパーバイザーのジョーさんとエフェクト・アーティストの渡辺潤さんに解説していただきました。
数々のヒット映画に参加してきたお二人いわく、映画への期待や基準は高まってきており、オリジナリティ(独自のアイディア)やクリエイティビティはクリエイターとして活躍していくためには、とても大切な要素である、とのこと。また、カリフォルニア・ダウンなど地震に関する専門的知識がなければ制作できない内容のものは、地質学者等有識者へのインタビューや講義を受けにいくことも当然、とのこと。
「自分の専門とする技術に責任をもつことは当たり前。そのうえで、早く仕事を完成させることや人間としての魅力は、なくてはならないもの。大学時代には、協働制作の場を授業外でも持った方がいい。お互いライバルではあるが共に学びながら情報をシェアし、成長していこうという姿勢をこれからの映像業界を支えていく皆さんにはもってもらいたい。また、時として自分の作品を批判されることもあると思う。これをOPENな気持ちで受け入れることが大切。批判されれば、当然傷つくが、生きた“情報”としてしっかり受け止めなければならない。この批判的な“情報”をどのように改善していくかを考えていくことが大切であり、アーティストとしての成長はこの繰り返し以外ないだろう。」
今日で、企業訪問は終了となりました。訪問した企業すべてに、それぞれの強みがあり、アーティストの個性や特色を感じられましたが、「チームで働く意識」、「責任感」、そして、「テクノロジーは誰もが習得できるツール。何を作りたいか、何にチャレンジしたいか、何を伝えたいのかという情熱が差を生む」ということを共通して教えてもらいました。与えられるだけの環境や他人の好意的な意見だけを受け止めるのではなく、チャレンジする姿勢とオープンマインドを持ち、何よりも制作する自分たちが楽しみながら、新しい映像業界を先導してほしいという期待を十分に感じ取れる現場研修でした。 受け入れていただいた企業のみなさま、本当にありがとうございました。 明日は、エンターテイメント研修です。
(おまけ)
Hydraulxのエフェクト・アーティスト渡辺潤さんは、2016年度に映像学部生を対象に講演をしていただきました。今年も開催できるように調整をしています。日程が決まったら、改めてご案内しますので、是非、参加してみてください!