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「映像人類学」ってどんなことを学ぶのですか!?

2018.04.18

「映像人類学」ってなに!?

 

映像学部には、「映像人類学」について学ぶ授業やゼミがあり、近年はこれを自身の卒業研究として研究したいという学生が増えています。この分野の映像学部の担当教員は鈴木岳海先生と宋基燦(ソン・ギチャン)先生です。

 

「映像人類学」は受験生の皆さんや、今年入学したばかりの新入生の皆さんにはあまり聞きなれない言葉かもしれません。

映像学部HP「教員紹介」ページで鈴木先生のメッセージに映像人類学についての説明があるので引用します。


”映像人類学は、人々と映像によって関係を構築し、映像を用いて民族・社会・文化を観察しながら、その場に関わる人たちと映像を共有することで互いの経験と知識を循環する営みといえます”

 

 

具体的には、人類学的社会調査に基づき、文化現象を映像で記録し表現するヴィジュアル・エスノグラフィー制作の研究実践、いわゆる「ドキュメンタリー」「記録映像」を制作していきますが、制作された映像とその作業過程を通して、個人と社会、社会と社会、民族と民族、地域と世界、現在と未来を繋げていくことを目指しています。


今日は、「映像人類学」を皆さんに知っていただくために、この分野を研究する鈴木先生・宋先生のゼミで昨年度末に行われた学外交流の様子を一例としてご紹介したいと思います!

 

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映像人類学系ゼミ(鈴木ゼミ・宋ゼミ)では、2018316日、韓国の漢陽大学にて文化人類学科の映像人類学研究会(HYVA)との作品共同上映・交流会を行いました。上映・交流会は、漢陽大学本館のカンファレンスルームにて開催され、漢陽大学からはHYVA指導教員を含め、3人の教員と約20人の学部・大学院生が参加しました。



 

映像学部からは、高瀬右京さん(2018年3月卒業)の『申し送り』(下記予告編)、壺内里奈さん(2018年3月卒業)の『がらんどう』(下記予告編)、藤吉彩貴さんの『国境のない街の図書館』、の計3作(3作とも昨年度の卒業研究)が上映されました。HYVAからも、労働運動家である父親を娘の目線で描いた『同行』という作品を含め3作品が上映されました。上映した作品は事前にお互いの言語に翻訳し、字幕付きの上映となりましたが、一部字幕作業が間に合わなかった作品については、教員による同時通訳形式で上映が行われました。



 

各々の上映が終わると、質疑応答が行われ、日韓の学生の間の活発な意見交流が行われました。「跡取り」の経験から、現代日本における個人的相続と地域参入問題に焦点を合わせた高瀬さんの作品『申し送り』には、現代日本の相続における「イエ制度」の残存について、跡取りの経験者としてどう理解しているかというかなり鋭い質問が出たり、棺を通じて現代日本の葬礼文化を眺めた壷内さんの作品『がらんどう』には、現代日本の葬儀文化と人々の考え方を理解することができたというコメントが寄せられました。

 

また、ドキュメンタリー映画の監督から大学院に進学した院生からは、ぜひ映画祭などに出品すべきたという意見もありました。


 


上映会に参加した漢陽大学文化人類学科の鄭 炳 浩(チョン・ビョンホ)教授は、高瀬さんと壷内さんの作品は、日本文化理解のテキストとしても価値が高いと評価してくださいました。韓国安山(アンサン)市の多文化共生実践を日本人の目線で追いかけた藤吉さんの作品について、上映会に参加した安山市出身の学生からは、「外国の方が地元を取材し、作品を作ったことで、非常に刺激をうけた。機会があれば、私も日本に行って調査し、作品を作ってみたい」と述いった意見も述べられました。

 

日韓の学生たちによる映像人類学の研究成果交流は、今回初めて行われましたが、この韓国人学生の発言のように、今後定期的な交流、さらに共同研究・共同制作の可能性が見えてきたと先生方は話します。上映会の後も、場所を移して日韓の学生交流は続きました。




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創作された物語や自分の頭の中を映像化する「実写映画」の世界とは異なり、映像人類学では、自分自身を含めた実生活の世界に目を向け、その日常と実践を記録し、そこから意味を見出すことで、個人と世界を繋げていきます

カメラをもって、私たち人間の実生活の現場へ飛び込み、そこに広がる様々な人間模様と実践を記録し、そこから世界と共有できる意味を見出す作業は、他にないアクティブな知的活動です。

例えば、地元の祭りについてその歴史的背景や文化伝承の意味について記録したい人がいたとします。その人は、まず、その世界に参入する必要があります。しかし、カメラをもってとある世界に参入することは大変な作業です。なぜなら相手と自分への理解が必要であり、また現場で得られた情報を解釈する必要があるからです。

また、作品にするためには、歴史と社会、それから人間に対する幅広い知識と理解が求められます。このような作業を通じて、映像人類学では、人間と社会理解に富んだ映像エキスパートを目指していきます。

「映像を通したアクティブな知的活動」に興味があり、人間と社会を理解できる映像エキスパートを目指したいという方は、是非映像学部で映像人類学を学んでみてはいかがでしょうか?

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