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「西大路ヴァージンシネマ」(9/15)~OB松本窓監督インタビュー~

2018.09.07

2018年8月23日、突如twitterに「西大路ヴァージンシネマ」という上映企画の公式アカウントが現れました。上映会場は今年春にオープンした東京シネマハウス大塚というミニシアター。東京であるにもかかわらず、「西大路」という京都(衣笠)人には耳慣れた通り名が付けられたアカウントと「京都発・若手映画作家上映企画」というプロフィールに、心躍った映像学部生も少なからずいたのではないでしょうか。



「これはもしかしたら、映像学部の卒業生たちの企画なのではないか・・・」。

そこから次々と投稿されるツイートによって、全貌が明らかになり、この予感は確信に変わりました。

上映するのはいずれも立命館大学映像学部出身者である瓜生 遼太郎監督・松本 窓監督・長尾 淳史監督・荻 颯太郎監督・金子 由里奈監督という5名の映画作家。なぜ東京で、そしてなぜこんな形式の上映会をこの5名がやろうと思い立ったのか。そして、どんな思いをもって開催日(9/15)を迎えようとしているのか。今回はこのメンバーを代表して、松本 窓さん(2016年度卒、実写ゼミ)にインタビューをおこないました!


上段左から瓜生監督・松本監督・長尾監督、下段左から荻監督・金子監督

―まずは、この「西大路ヴァージンシネマ」を開催しようと思ったきっかけやここまでの経緯を教えてください。

これは結構流れみたいなところがあって。最初に長尾淳史くん(2017年度卒、実写ゼミ)が自身の卒業制作『白波』を上映するために場所を押さえていて、たまたまそのタイミングで久しぶりに会った僕が誘われて、上映会をするという形になりました。「じゃあほかに誰を誘う?」となった時に、東京で映画を作っている人に知り合いも少なかったものですから、同期の荻颯太郎(2016年度卒、実写ゼミ)を誘いました。「そんな感じでやるなら自分たちに所縁がある人たちと結束したいよね」という話になり、それなら同じ学校の人間で揃えようということでこのような形になりました。案外つまらない経緯ですよね(笑)

でもずっと、東京で映画を作っている人たちとは『ズレ』みたいなものを感じていて。その人たちと一緒にやるというビジョンが持てなくて、映像学部卒業生で何かやりたいなっていうのはずっとあったんですよね。これは僕だけかもしれないけれど。



―今回上映する監督はどのような経緯で集まったのでしょうか

経緯では無いですが、「とりあえず今でも映画を作っている」という基準はありましたね。頑張っていきたいって思っている人間を集めたかった。上映会だけでなく作品づくり全般がその場の楽しさのためでなく、未来につながるようなものであるべきだなと。



―「西大路ヴァージンシネマ」という名前がすごく素敵です。どんな思いで付けたのでしょうか?

 "素敵な"というのもなんか面白いですね(笑)
先ほども触れましたが、東京のインディーズシーンはなんか合わなかったんですよね。なかには面白いと思うものもあるのですが、「これが評価されるの!?」みたいなのもあって。
そうは言ってもぼくらは何者でもなかった。他人から見たら雑草くらいどうでも良い存在だったんです。
そこで立命館大学をルーツに持つ僕らは、西大路の路上(ストリート)から来た雑草のような存在だけど、誰も踏み入れてない・踏み入れられてない無垢なエリアを開拓してみせるという意味を込めて、名づけました。
「面白い映画ってこういうものだったはずだろ」という価値観を樹立できればいいなと考えております。



―卒業後の松本さんをはじめとするメンバーの皆さんの近況を教えてください。

僕は農家に半年くらい住み込みでバイトしに行って、ちょっと自分には合わないなと思って帰ってきて、今アニメの制作会社で働いています。就活はしてないし、絵に描いたようなサラリーマンにはなりたくないと思っていましたけど、就職してみると学ぶこと・学ばなくちゃいけないことが想像以上にあることに驚かされます。一旦どこかに属してやり方を盗むのは、一人でやっていこうと考えている人にも大事なことだなと思います。
他のメンバーもどこかで同じようなことを考えているんじゃないかな、と勝手に思っています。



―京都の大学で映画を学んだことは、東京ではどんな風に映るのでしょうか。

これは在学中からそうなんですが、立命で僕らが大事にしてきたものは概ね相手にされませんでした。「商業映画の焼き増し」という一言で片付けられてしまいます。
しかし、映像や音など、外側のクオリティを上げることは鑑賞に集中するために必要なことだと思います。
ただ、それが求められる世界ではなかった。これははっきり言えると思います。
僕らのことをなんとなく「オシャレな流行りの映像を撮っているひとたち」と認識している人は多いのではないでしょうか。もちろん今回のメンバーにもそういう映画じゃないものを作る人がいますし一概には言えませんが。

しかし、一方で一般に目を向けると、多くの人に届く作品は東京で大切にされている価値観にはハマらないものかもしれません。総合大学の一学部という平凡性をもつ僕らは、ある意味で、一般に近い目線を持っていると思います。そこは実は結構強い気がします。コアな世界に潜っていくのもいいですが、多くの人に届くものに感動させられた経験があるので。
そういう心を揺さぶられた、魂を震われた映画はきっとそれぞれあって、そういうものを作りたい一心で作り続けているのだと思いますから、そこは他と違っていても曲げずに信じてやっていくべきだと思っています。



―今後この「西大路」はどんな風に展開しようと思っていますか?一回きりでしょうか?

「西大路ヴァージンシネマ」は一種の概念みたいなもので、この先も続けていきたいと思っています。今は50席も埋まらない上映会かもしれないけど、それは価値観が異なっているからで。観客に、僕らの良いと考えるものを良いと思わせることができれば、きっと僕らの映画の見られ方は変わっていくと思っています。
そのために、僕らが面白いと思わせる説得力のある作品を発表しなくてはいけない。その場所として、「西大路ヴァージンシネマ」はこれからも続いていくと思います。似たような考えの人がいれば、世代を超えて広がっていくのも素敵ですね。
 
―後輩にメッセージをお願いします。

立命館大学映像学部はなんでも用意されています。機材も、それを教わる機会も、上映環境も、観客も。渦中にいるときはそのありがたみに気づけなんて難しいけれど。僕もそうでしたから。少し外に出ると一から用意する必要があります。
思ったほどみんな映画制作に親切じゃないし、映画に興味がない。思ったように映画を作れないことも増えると思う。これは全てに言えることかもしれない。

でも、自分が心を奪われたものたちを大切にして、信じて向かっていけばいいと思います。苦労しなきゃいけないなんて絶対ない、楽しみながら好きなことやる方法は絶対にあると思います。
大学生のうちはきっと、その「心を奪われる経験」を少しでも多くして、それらを覚えておくようにすることだと思います。きっと、あれが好きだったなあこれには必死になれたなあという経験は、向かうべき場所への指針になりますから。頑張ってください。

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松本さんありがとうございました!話を聞いて益々「西大路ヴァージンシネマ」の今後の展開が楽しみになりました!会場は東京なので、在学生の皆さんはなかなか行けないかもしれませんが、映像学部志望の高校生の方、映像学部OBOGの方で関東在住の方は是非ともシネマハウス大塚に足を運び、彼らの「熱」を感じてください!

【企画概要】
日  時:2018年9月15日(土)15:00~21:30
会  場:シネマハウス大塚
     ※作品上映後は監督関係者による挨拶も予定しています。
     ※20:50~はトークショーがあります。


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