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インディゲームの祭典『Bitsummit2019』に出展し、オーディオ・デザイン賞にノミネートされた西恵佑さん(ゲームゼミ)を直撃!

2019.06.14

6月1日(土)・2日(日)に開催されたインディゲームの祭典『Bitsummit2019』。これに映像学部4回生西 恵佑さん(ゲームゼミ)をはじめとするチームが制作したVRコンテンツ「invisible」が出展され、オーディオ・デザイン賞にノミネートされました!惜しくも受賞は逃しましたが、制作秘話などお伺いしようと早速西さんにインタビューをおこないました。

お話を伺ううちに彼の内側から溢れ出る「ゲームへの情熱」「業界への思い」「自分自身の夢」は勢いを増し、気が付けば本題に入る前に自己紹介と序章で1時間が経ってしまっていました。

″こんな情熱的な学生がいたんだ・・・″

静かに感動しながら、今回の「EIZO VOICE」ではそんな西くんのアツいインタビューをお届けしたいと思います!

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そもそもの発端は私が2回生の時、当時夏期集中講義で受講していた「インタラクティブ空間デザイン」(担当:新清士先生)に遡ります。その授業のお題としては、「バーチャル空間をゲームVRで動かす」というもので、具体的な作業としては「VRのジェットコースターを作る」ということでした。自分自身、その授業でやっていたことは前に独学でやっていたことだったので、お題を通り越して独自路線で「ジェットコースターに乗りながら撃ちまくるVRシューティングゲーム」を勝手に創作していました。これを課題発表時たまたま来られていた中村彰憲先生が見ていて、声を掛けられたんです。

私のその当時の個人的目標としては「VRコンテンツでおもしろいものを作りたい」ということでした。中村先生はそんな私の思いをくすぐる絶妙なタイミングで、松竹撮影所と映像学部の共同研究である「京都における文化伝統及び太秦映像文化の映像アーカイブ化プロジェクト」を発足させるというお話をしてくださいました。太秦の地において重要な文化的価値と言える時代劇文化などを、広義の意味での「映像」として記録保存し、これらの文化的意義を海外の人も含め多くのひとに享受させるための方法や、記録されたコンテンツを社会的資産として利活用する可能性までを教学活動の中で検証していくというものでした。私はそれを聞いたとたん、「僕がそれやります!」と言っていました。具体的には映画の大道具や小道具、役者の所作などを立体映像でデジタル化して、いずれはVRコンテンツなどにも活用するといった研究です。

このプロジェクトと並行して、中村ゼミのイベント団体「20HIVE」が主催してVRのイベントを実施するという話が同ゼミの友人からありました。ちょうど『VR元年』と言われていた2016年からそう時間が経過していない時でしたので、コンテンツビジネスやマーケティングを研究する中村ゼミでそういったイベントをおこなうということで改めてVRへの感心の高さを感じました。私はゲームゼミに所属していたものの、正直そこまでVRコンテンツ制作で実績がありませんでした。でも、その友人と話しているうちに、元年と言われている時だからこそ「VRをカジュアルに、多くの人により身近に感じてもらうイベントにしたいよね!」という話になり、ゲームゼミ生の自分もイベントのために作品を制作し、出展することになりました。

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2017年度に実施したVRイベントのキービジュアル

それが今回『Bitsummit2019』に出展した「Invisible」の前身となるVRコンテンツです。松竹撮影所との研究で蓄積していたデジタル素材ももちろん活用しました。そのゲームにはいろんな知識と知恵と人が必要でした。中村ゼミのイベントではあるものの、もちろん我がゲームゼミの学生の技術も必要でしたし、撮影などは実写ゼミの協力も仰ぎました。また、全編英語でのコンテンツを考えていたので、短期留学生にもアクターとして出演してもらい、本当にいろんな人を巻き込みました。

自分が映像学部に来て本当によかったなと思うことは、同じ学部でも自分の周りでまったく異なる分野の人が皆とてもおもしろいことをやっているということです。ただ、その反面それが縦割りで、なかなか混ざり合わないことにもったいなさを感じていました。このイベントを通じて自分はそういった映像学部のクリエイターをたくさん集めてきて、異業種融合コンテンツを作りたかった。それが初めてできたのがこの初代「Invisible」だったと思います。

これを完成させたことが自分の人生に転機をもたらしました。この出展をきっかけにイベントにゲストとして来られていたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下:「USJ」)の方に声を掛けていただき、1年間休学してUSJでインターンシップをすることになりました。USJで国内外のプロのクリエイターと様々なプロジェクトに関わり刺激を受けながらも、「Invisible」の更なるブラッシュアップに取り掛かることになりました。

中村ゼミのイベントで出展した「invisible」は最初のとっかかりとして松竹撮影所との研究成果をVRコンテンツに活用するという段階はクリアしました。次なる目標としてはこの成果をステップにして、後輩にこの「Invisible」をよりいいものにしてもらいたいと考えました。休学中だったということもあり、自分はプロデューサー的な立場で、秋の映像学部発信イベントであるジャンキャリをめざしてチームとして始動することになりました。

でも、ここで私は大きな失敗をしてしまいます。

私は自分の中にあるノウハウをすべて後輩に引継ぎ、更にそれをよりよいものにしていってほしいとチームを牽引していたつもりだったのですが、自分の思いを押し付けてしまい、プロジェクトに口を出しすぎてしまいました。後輩や制作を担っていたディレクターはすごく嫌な思いをしたと思います。自分はUSJで学生という立場にありながら上司にめぐまれ、対等に意見を交わし、私のアイデアや疑問に丁寧に対応してもらいました。自分もあんな上司になりたいと心から思っていた一方で、大学の自主制作チームでそれを活かせませんでした。チーム全体の意欲を引き出すというリーダーとして一番大きな責務を果たせず、モチベーションが下がったメンバーたちはどんどんプロジェクトから離れていきました。これはやむを得ない結果だったと思います。

結局自分がディレクターになり、残ってくれたメンバーと共にジャンキャリには何とか出展することができましたが、自分の課題が何かを思い知らされた経験となりました。USJでのインターンシップも終わり、この苦い経験も反省点としながら、いよいよインディゲームの祭典『Bitsummit2019』への出展をめざして再始動することになりました。

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「Invisible」チームの皆さん

「Invisible」の本来の存在意義というものを考えると、それは松竹撮影所との共同研究の目的に立ち返ることになります。自分なりに突き詰めるとそれは「時代劇の復興」だと感じています。京都太秦の地で時代劇をどのように伝承していくか。松竹にスタジオをもつ映像学部が共にその課題に取り組む意義はとても大きいと思います。「Invisible」は日本人に新しい様式の時代劇を提示し、それを新たな文化として根付かせることができると考えています。ゲームという媒体を通して、時代劇がよりグローバルに広がっていくことで、むしろ外国人から日本の時代劇のかっこよさや価値を日本人が再認識できる可能性があるのではないでしょうか。


「Invisible」のトレーラー

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体験者に丁寧に対応するInvisibleチームの皆さん

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出展スペースには人だかりが

こんな思いで制作した「Invisible」。今回2日間の祭典『Bitsummit2019』で多くの日本人・外国人にコンテンツを楽しんでもらうことができました。惜しくも受賞は逃しましたが、ノミネートされたことで注目され、たくさんの人に見てもらうことができました。もっともっと多くの人に海を越えて気軽に日本の文化に触れてもらいたいので、夏に無料配信をめざして現在準備を進めています!リリースされたら是非、皆さんも遊んでみて下さい!

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「たくさんの人に生きる活力を与えたい」というのが西さんの夢だそうです。入学前は映画でそれを叶えようとしていた彼は、ゲームの先生が「ゲームは普遍的に人々を楽しませることができる大衆娯楽である」と言っていたことに強く共感し、そこからまったくの専門外だったゲーム制作を独学でがむしゃらに学び、ゲームゼミに入りました。

インターンシップ先のUSJでは、依頼や転がってきたチャンスに対して「決してNoと言わない」と決め、必死に勉強し、海外から来たプロのスタッフと共に開発・設計・プログラミング・演出など多岐に渡るプロジェクトに積極的に関わった西さん。

様々な経験を通じて得た成長が今回のノミネートという結果に結びついたのではないでしょうか。本当はUSJでのプロジェクトの話もたっぷりお届けしたかった!その話はまた別の機会で更に嬉しい報告があった時にできれば・・・、と思います。西さん、これからもパワフルでアツい活躍、応援しています!!

★ちなみに・・・★
西さんの「Invisible」出展の様子を取材しようと訪れた『Bitsummit2019』で、素晴らしい光景に出会うことができました!映像学部の3名の先生がこのインディゲームの祭典の審査委員をされていて、同じステージでプレゼンターやスピーチをおこなっていました!先生方、ゲーム制作についてアツく語っておられました!

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