EIZOVOICE

北米CG研修観察日記~若きクリエイターと過ごした9日間~ Part➁を公開!

2019.10.04

映像学部では、近代ハリウッド映画において、CGがどのように発展してきたかを学ぶ授業として、「特殊講義(専門Ⅰ)ハリウッド映画におけるCG史(担当教員:北原聡)」を開講しています。この授業では、CGそのものの発展史だけではなく、ハリウッドのCG制作会社の歴史と活躍についても学ぶとともに、実際にハリウッド最先端のCG制作現場を視察し、世界を目指すクリエイター、プロデューサーとしての意識を醸成します。

今年は14名(3回生2名、2回生12名)の学生が参加し、笑いあり、涙あり、感動ありまくりのファンタスティックな9日間を過ごしてきました。
今回のEIZO VOICEでは、研修スタッフとして同行した職員が見た熱き日々を観察日記としてレポートします!

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Part②(Part①はコチラ

【2日目:企業訪問①】
9月12日(木)AM8:25。

本日より、北米CG研修のメインである企業訪問が2日間に亘って始まります。
みんな初日の疲れが出てるのでは・・・と心配していましたが、元気に朝食を食べている姿に安心しました。

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10:00 University of Southern California(USC:南カリフォルニア大学)
USCは、1880年に設立されたアメリカ西海岸最古の私立大学であり、最難関大学の一つとされています。ジョージ・ルーカス、ロバート・ゼメキス、ジョン・カーペンターなどの著名な監督を輩出した全米最古のフィルムスクールであるUSC School of Cinematic Arts(映画芸術学部)が設置されています。
USC School of Cinematic Artsには、約1,700名の学生が在籍しており、そのうち100名ほどがアニメーションを専攻しています。その他にも、学生たちは映画、メディア、インタラクティブ映像などを学んでいます。

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毎年、この研修では、“ワインバーグ先生【Richard Weinberg, Ph.D.(Reserch Associate Professor, USC School of Cinematic Arts)】”からご指導を受けるのですが、今回はご都合があわず、“マー先生【Mariano Ramos Elepano(Production Supervisor)】に特別授業をしていただきました。
 マー先生は、1999年に来日し、京都にも滞在した経験があるとのこと。日本語の中で「面白い」という言葉がとても美しいと感じていると自己紹介を含めお話しいただきました。
 
授業では、主に2つのことについてお話いただきました。
【キーワード】
①    What is the “Emptiness“??
②    The important thing is the “Half Circle”.

“Emptiness”は「空虚」という意味です。人がある作品を観て、“Emptiness”だと感じることは、その人に好奇心を掻き立てることにつながるとのこと。
また、芸術は「人に評価されて育っていくもの」であるから、制作するうえでは「自分の考え(“Half Circle”)」と「他人の感想(“Half Circle”)」を取り入れて、完成(“Circle”)させていくことが大切である、とマー先生の芸術に対する思いをお話しいただきました。

「ただし、他人の意見にすべて捉われたり、抗弁する必要はない。アシストしてくれる一つとして受け止めたらいい。重要なことは、自分が何かをつくったときに足りないもの(“Emptiness”)を補強してくれるのは人の意見(” Half Circle”)。だからこそ、アーティストは決して一人で作業をしてはいけない。誰かとともに創ることを意識してほしい」。

「芸術によって、人間性が養われる。芸術によって、豊かになる。芸術に触れることによって、観る人も成長する。皆さんは心から創りたいと思うものを作り続け、発表し続けてほしい」。

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個人研究室を訪れた際、突如、ギターを持ち出したマー先生。何かオリジナルソングを披露していただけるのかと思いきや、一言。

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「I can’t play the guitar at all.」

「Whattttt???」

ギターが弾けなくとも、ギターという楽器に触れることで魂に訴えかけられるものがある。これを大切にしているのだ、と笑顔で話をしていただきました。

マー先生のチャーミングなエール溢れる授業の後は、USCの学生たちとの昼食懇談会へ。
今年もたくさんの学生が集まってくれました。

「ちゃんとコミュニケーションとれるかなぁ」
ドギマギしていたメンバーも大学での学びや趣味の話など共通の話題をみつけて、あっという間に打ち解け、賑やかな昼食会に。


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ちなみに・・・
この『たしかに』T-shirtの彼。

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2017年に訪問した際も、昼食会をコーディネートしてくれていた台湾出身の留学生です。現在は、留学生サポーター団体の幹部を務められています。当時、プレゼントしたエイゾウくんボールペンを今も大切につかっています、と嬉しいコメントをしてくれました。卒業後は、日本で就職をするようです。機会があれば、是非、京都にも来てほしいですね。

さて、たいへん盛り上がってしまったので、時間がだいぶ押しています。
急いで、次の企業へ!

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14:00 The Third Floor
2004年に設立した、世界最大のプレビジュアライゼーションを専門とする会社です。当初は6名でスタートしましたが、急成長を遂げ、現在の従業員数は約140名(半数はフリーランス)。大学生のインターンシップも受け入れています。
多数のハリウッド映画制作会社にCGアニメーションを使って、シーン設計のデザインを提供されているだけではなく、ゲーム用シネマティクス分野も手掛けられています。

担当していただいたスタッフ(リクルート担当)のコメント:
「The Third Floorでは、ストーリーが創れるアニメータが必要。国籍は全く関係ない。アニメーションの細かい点などは、各々のクリエイターの力量に委ねられています。ただし、かっこいいだけでは意味がない。CGを使って、いかにストーリーを伝えられるかが肝。自分の思いをどのように形にするか。採用のポイントは「経験」よりも、「アウトプット(制作物)」を重要視しています。業界全体として、イノベーションの意識を大切にしているので、バイタリティ溢れる人にきてもらいたいですね」

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16:00 Method Studio
1998年設立のVFX制作会社。ロサンゼルスを本社とし、カナダ、オーストラリア、インドに制作拠点を持っています。
映画・CMにVFXを提供しているほか、自社部門による映画のタイトル・シークエンスの制作も行っている会社です。
会社紹介をしていただいたのは、TIFFANY TETRAULT(Senior Marketing Manager)さん。

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実は、この方、2015年の研修でDigital Domeinを訪問した際、対応をしていただきました。もともと受付の仕事をされていましたが、制作に携わりたいという熱意があり自分のスキルを磨き、現在のポジションに至っているとのこと。ご自身のパッションで切り拓かれた道ですね。

TIFFANYさんからのコメント:
「テクノロジーが進化しているので、アーティストの数は多くいらない時代になってきています。この仕事で生きていくには、『自分の強みは何か』を見極めること。そして、それを伸ばし続けていくことが必要です。他人がもっていないスキルだからこそ、オリジナルとなる。ハリウッドで働くための近道の一つは、インターンシップ生として入社することですね」

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【3日目:企業訪問②】
9月13日(金)8:15 ホテル出発

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10:00  Moving Picture Company
1970年ロンドンに設立されたVFX制作会社。アメリカ、カナダ、中国、インド、フランス、オランダに支社を構えており、主にCMやミュージックビデオ、テレビ、映画のVFXを手掛けています。

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「テクノロジーの時代は基礎的な力として、数的解決能力やプログラミングの知識は身に着けておいた方が今後の将来に役立つでしょう。制作者としては、自然に対する観察力(木の葉の落ち方など)を普段から意識してほしい。L.A.での就職活動は口コミが大切。業界の中で名前が売れるように、常にポートフォリオをアップデートして持っておくとチャンスが巡ってきたときに役立ちますよ」

14:00 Frame Store
ロンドンに所在するVFX制作会社。アメリカ、カナダ、インドに制作拠点をもっています。
Music Videoからスタートし、1994年に映画のVFXへ進出。以後『ハリー・ポッター』映画シリーズをはじめとする数多くの作品のVFX制作を担当。特に『サンダーバード』では、Frame Store一社でVFXを手掛けています。

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なんとここでは、アーティストの方3名から仕事内容やキャリアについて、お話いただく機会に恵まれました。特に、日本人アーティストとして活躍されている吉田さんへは、卒業後に海外で働きたいと思うメンバーからの憧れもあり、がっつりお話を伺いました。

「この会社で大切にしていることは『チームワーク』と『コミュニケーション』。学生はツールやスキルに頼りがちになるけれど、大切なことは創造性を養うこと。『自分が何をやりたいか』という気持ちを持ち続けてほしい」

「『英語ができない』、『アニメーションについて知識がない』という心配は不要。知識や技術は、教えられる。ただし、熱意だけは教えられない。テクノロジーは急速に変化していく時代。創造性、熱意を大切にし続けてほしい」

「クリエイターとして働くためには、①アイディア力、②ストーリー性、③目標を決めて、学び続ける力、この3点+根気が必要。長編を創る熱意も素晴らしいけれど、短編でクオリティの高いものを作った方がキャリアとしては役立つ。学生時代はよい観察者となること。
センスは自分しか磨けない。知識は後からでもついてくる。自分のアートの世界をどう作るかを常に考えてほしい。何か一つでいいので、自分の強みをもてるようにしておこう」

15:00 ちょこっと休憩@マリーナ・デル・レイ(Marina Del Rey)
まだ、研修3日目ですが、とてもハードで濃厚な時間を過ごしているメンバー。

次の企業訪問まで少し時間があったので、マリーナ・デル・レイのフィッシャーマンズビレッジ(Fisherman's Village)にて、しばしほっこりタイム。

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世界最大級のヨットハーバーといわれているだけあり、海風が心地よく、落ち着いた雰囲気に、とても癒されます。ここのフォトスポットでもある鐘のベンチは、座ると幸せになれると伝えられています。
ということで、早速写真撮影タイム!

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そんな中、どんよりしている3回生2人組が・・・。
チームを引っ張る立場でありながら、ちょっとした失敗をしてしまい、朝からとてつもなく落ち込んでいる2人・・・。

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・・・・とはいえ。

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やっぱり、楽しいよねー。

海をバックに、みんな画になるねぇ。

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17:00 Scanline VFX
1989年ミュンヘンに設立されたVFX制作会社。アメリカ、カナダ、イギリス、韓国にオフィスをもち、視覚効果、CGアニメーション を手掛ける会社。

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 ここでは、バンクーバー支社とTVでつなぎ日本人アーティスト・村田さん(effect部門所属)からレクチャーをしていただきました。村田さんは、大学在学中に1年間アメリカに留学したことがきっかけで、ハリウッドで働きたいと強く思った、とのこと。卒業後は、日本の映像制作会社へ就職され、そこでの経験をデモリールとしてScanline VFXへアプライし、見事合格。今年で5年目のキャリアになるようです。

「大学時代は時間があるので、色々な経験をすることが必要。時間をかけて、諦めずに勉強をすること。将来やりたいことが見つかれば、早い段階で準備を始めることが成功の秘訣。CGは日々変わるので、私たちも常に勉強をしています。とはいえ、『好きこそものの上手なれ』マインドが一番ですね」


さて。
これにて、2日間にわたる怒涛の企業訪問が終了です。

どの会社も、長きに亘って世界中の人々に感動や夢を届ける作品を創り続けてこられました。絢爛たる実績を誇る一方で、これらを支えるアーティストの方々は、常に弛まぬ努力をされています。
「アイディア力」「ストーリー性」というキーワードもたくさんでましたが、それ以上に「チームワーク」、「熱意」、「学び続ける力」はどの会社に訪問しても必ずメッセージとして伝えられました。

いずれの会社も制作現場は緊張感があり、アーティストの方は真剣なまなざしで数か月に及ぶプロジェクトに携わっておられます。商業映画という面からも大変な苦労もあろうかと思いますが、チームで創りあげる作品に心から楽しんでいると感じました。


18:30 ハイウェイはやはり渋滞@バス
ホテルへ向かうバスの車内。金曜日の夕方のハイウェイはいつも以上に渋滞になるようです。

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企業訪問の熱が冷めやらないメンバーが楽しそうに振り返りトークをしていました。
その背後には、全力を尽くしたメンバーたちの姿が(笑)

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走り続けた2日間でしたね。おつかれさまでした。



明日からは、いよいよエンターテインメント研修です。
これまでの景色とはガラッと変わり、さらにみんなパワーアップします!
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【メンバーのデイリーレポートより】
・マー先生から「技術には人々の解釈が必要」と繰り返し伝えられた。その意味にとても納得したので、今後、自分が創る作品は積極的に外部に出していこうと強く思いました。昼食懇談会はすごく楽しい時間で、いっぱい友達ができました!

・技術が発展してきたこの時代だからこそ、自分の人間性を磨く行動が最も重要になると考えました。この前半の研修3日間でメモした内容は今後大切にもっておき、日本に帰ってCGファイルに入れたいと思います。

・今回の企業訪問で得られた一番の収穫は、海外で働くことは特に難しいと感じる必要がないと気づけたことです。働くイメージを明確にもつことができ、本当に良い機会でした。2年半後に海外で内定をもらって報告しますので、楽しみに待っていてください。

*今回訪問した企業は、未公開のプロジェクトも手掛けられていることから、写真撮影は固く禁じられています。研修カットを紹介できないのは残念ですが、ご興味のある方は是非、参加したメンバーに話を聞いてみてください。

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