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【スピンオフストーリー】映像学部1期生 映画監督・瀧川元気さん ―「不可能」を可能に。業界の枠を超えて、スペシャルチームと共に創るエンターテインメント―

2020.02.05

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2007年4月。
立命館大学映像学部に入学した。

実は、この2年前までは他大学の学生だった。
留学もしていた。

だから、映像学部の大半の同期は、自分より2歳年下だった。
高校時代、野球部に所属し、縦社会で生きてきた。
「2歳違い」は、自分の中で、まぁまぁ抵抗があった。

「今振り返っても、当時の自分はとても尖っていましたね。だから、学部内で群れるのではなく、課外活動に注力しようと思い、学友会学芸総部の委員長になりました。自主制作は、学生時代に20本つくりました。生演奏のレコーディングをしたり、とにかく人が普段やらないことをいろいろやりました」

そんなちょっと異色な自分を映像学部の先生はいつも応援してくれていた。
自信もあったし、何より、映画を創ることは楽しくて仕方がなかった。
色んなコンペにエントリーし、「1位になりたい」とまわりと競いあうことにこだわっている時期もあった。

そんな姿を見ていたからだろう。

3回生のある日、いつもは穏やかな望月茂徳先生に
「いつまで、そんなことにこだわっているのか」
と厳しく指摘を受けたことがある。

誰かと競い合って、コンペに勝つ作品をつくるのではなく、
「つくりたいものを創る」
そんな意識をもつ大切さに初めて気づかされた。

4回生の頃、卒業を前にして「映画監督になりたい」という強い想いがあった。
ただし、映画監督になるためには、
誰かのもとで修業しないといけないのだろうか。
弟子入りする必要があるのだろうか。
という疑問が心にあった。

そんなとき、
「君は生意気だけど、現場で通用しそうだね」
と、山田洋次監督に言われた。

「誰のもとで学びたいか?修行したいか?」
と思った時、頭に浮かんだのは、三池崇史監督だった。
幸運にも京都で撮影をされていた三池監督に直接会う機会を得た。

(瀧川)「監督になりたい」
(監督)「やるんだったら早いほうがいい。次の作品からくるか?」

まさかの展開。
しかしながら、まさに4回生の冬。
卒業研究提出期間の真っ只中だった。

(瀧川)「卒業研究の提出があるから、来週からでいいですか?」
(某プロデューサー)「撮影をお前基準で考えるな」

プロの現場に参加させてもらううえでは、個人の事情は一蹴されて当然のこと。
学生だからということは理由にならない。
映画に関わるチームとして作品を完成させる覚悟が求められた。

三池組の現場では、お茶汲みから始まった。
お茶を入れるタイミング、温度、誰が何を飲むのか。
すべてにおいて否定され続けた。

「こんなにも難しい仕事があるのか」。

「映画の勉強をしにきているのに、なぜお茶汲みなのか」
挫けそうだった時、監督に叱責されたことを覚えている。

「身近にいる人の好みもわからない者が、銀幕の向こうにいる観客の気持ちが掴めるのか!エンターテイメントできるのか。全力でお茶汲みしろ!!」

気づかされるものがあった。
お茶汲みとは、何か。
どのような役割があるのか。
何が求められているのか。

撮影現場では、日々同じことは起こらない。
早朝や深夜にわたる撮影。
ワンカットずつこだわり、何十カットと続くシーン。
張りつめた空気から、一息つきたいとき。
現場は、色んな感情で溢れている。

それから、石田三成の「三献茶」にまつわる本を読んだ。

ある日。
監督からの一言。

「おいしい。ありがとう」

お茶の一杯で言われた「ありがとう」が嬉しくて、涙がでそうになった。
翌日から「元気」と呼ばれるようになった。
それからは、スタッフの方々からも認められて「元気」と呼んでもらえるようになった。

相手が何を考えているのか。
何を求めているのか。
常に考えるようになった。
エンターテイナーとして、生きている今、
誰かの何かを喜ばせたいという気持ちをいつも大切に持っている。

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瀧川 元気(映画監督、STUDIO-884代表取締役)

大阪府出身。2011年3月 立命館大学映像学部卒業。
卒業後、三池崇史監督に師事し、『逆転裁判』『愛と誠』ドラマ『QP』にて助監督を務める。
その後、京都での本格時代劇『蠢動』、東映太秦映画村にて『球形の荒野』など。
映画のみならず、滋賀・奈良編のロケーションコーディネートやラインプロデューサーを担当する。近年では瀬木直貴監督作品『星々の約束』『マザーレイク』にてラインプロデューサーを担当。
瀬木直貴監督作品、2018年全国公開、『恋のしずく』のプロデューサーを担当。同監督作品、2019年秋全国公開、『いのちスケッチ』プロデューサー担当。
そして、2020年秋全国公開予定、脚本:中村航、音楽プロデューサー:梶原徹也による『鬼ガール』では、自らメガフォンをとる。


【「不可能」を可能に。業界の枠を超えて、スペシャルチームと共に創るエンターテインメント―映像学部1期生 映画監督・瀧川元気さんへインタビュー】の記事はこちら


【Gallery】

2019年度クリエイティブリーダーシップセミナーに初登壇!映画監督として大躍進中の瀧川さん
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開設時の授業の様子
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竣工式
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充光館建設中
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充光館完成!!
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CLSで講演後、中村彰憲先生と。とっても嬉しそう!
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望月茂徳先生の一言で、新しい気づきがありました。
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学生時代は、北野圭介先生と話したかったのに、近寄りがたかった。「でも本当はもっと先生の話を聞いておきたかった」、と10年ぶりの告白!!
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