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Entervibe×楽団ケ・セラ「全員演者の演奏会」を開催 ―感動から新しいエネルギーの波動を生み出したい―

2020.02.06

「大学生活を自己満足で終わるのではなく、社会に貢献できるような映像を創ったり、生み出したコンテンツで人と人をつなぐようなことをしたい」

2018年秋。
ちょうど、3回生から開講されるゼミ(映像文化演習Ⅰ)を選択する時期だった。

胡桃琴(現映像学部3回生)は、幼いころから、ピクサー(Pixar Animation Studios)映画が大好きだった。将来は映像業界、特にCGへのキャリアを積み上げていきたいと漠然と夢を描いていた。
「映画のエンドロールに自分の名前がでてきたらかっこいいな」

芸術大学への進学も考えたが、自分の世界を広げたいという想いがあった。
総合大学なら他学部との交流や、色んな強みをもった人と出会うことができるのではないかと思い、立命館大学映像学部への進学を決めた。

それなのに!!!!

第一希望のゼミに、希望者が溢れたため、選考過程で落ちてしまった。

「どうしよう・・。」

そんなどん底のテンションの時、同期の小川玲香(現映像学部3回生)が声をかけてくれた。

「やりたいことがあるんだけど、聞いてくれる?」

「映像制作を自己満足のもので終わらせたくない。もっと社会に貢献できるような映像を創ったり、自分たちが生み出したコンテンツで人と人をつなぐことをしたい。そう思っているけど、社会と積極的にかかわっていることが少ないなって思う」

「『自分の作品を発信したい』というよりも『感動で人と人をつなげたい』。自分たちがつくったものを『どうだ!!』と世の中に出すだけでなく、人と人をつなぐシーンに、手段としても映像を使っていきたい」

熱を込めて語る、同期の誘いに落ち込んでいた気持ちがいっきに吹っ飛んだ。

「やりたいことをやる場は自分たちで作ってもいいね!」

さて、何をしよう。
小川・胡桃は、映像についてのアツイ想いはあるが、制作スキルは、ずば抜けて強いということはなかった。そこで、興味がありそうな映像学部生に声をかけメンバーを募った。

誘い文句は、
「メディアアートやりませんか??」

当時、メディアアートに興味を持っていたものの、発信の場を模索していた男・植村光一(現映像学部3回生)。

「メディアアートやりませんか??」
「やるっ!!(即答)」

そんなこんなで、
瞬く間に総勢10名ほどのチームができあがった。

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「・・・・で、何やるの??」

まずは、チーム全体で方向性を共有した。
「エンターテイメントってなんだろう。」

「Entertainには、楽しませる、受け入れる、もてなす、相手をおもいやるという意味があります。私たちは、これに加えて『感動を共有する』ということをコンセプトの柱に掲げました」

テクノロジーとアートを融合したメディアアートでエンターテイメントを創る。新たな価値観を生み出し、人の心にアプローチすることで意識や行動を変え、社会をより良いものにしていきたい。
感動から新しいエネルギーの波動を生み出し、多くの人が一つになる空間をつくりたい。
そんな思いをこめて、チーム名称を「Entervibe(エンターバイブ)」と名付けた。

Entervibeがこの1年間取り組んだ様々なプロジェクトの中で、特に想いを込めたものの一つが2019年11月24日に開催した「楽団ケ・セラ(NPO法人ケ・セラ)」とのコラボレーション企画『全員演者の演奏会』だ。

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楽団ケ・セラは、障がいを持っている人が、音楽を通して社会的に自立することができるように2002年から活動を始めた団体であり、長野県松本市を中心に活動をしている。

コラボレーションをするうえで、Entervibeとしては、楽団ケ・セラの奏でる音色に合わせ、プロジェクションマッピングやメディアアートを創りこみ、観客も参加できるような演出を考えた。

しかし、このプロジェクトを成功させるためには、単純に映像制作をするだけでは成り立たない。
映像を社会で効果的に活用するためには、映像演出で空間全体を作品として体験してもらうことと、創り出す世界観を共有することが大切だと、映像学部で学んできた。

メンバーでの意見交換を重ね、①伝えたいメッセージの見せ方、②インタラクティブ映像演出、③エンターテインメントが与える影響、④アーカイブと広報という4つのフェーズから実施計画を立てた(*1)。

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【企画ノートは何度も書き直しをした】


あっという間に準備期間は過ぎた。
演奏会前日は、緊張と不安で眠れなかった。
それでも、当日、演者も観客も全員が楽しそうに笑顔で参加してくれた。
あの高揚感を忘れることはないだろう。

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この経験があったからこそ、次につながる原動力になっている。
多様な人が住みやすい社会を実現するためにエンターテイメントを通じて、個性を尊重し認めるという「次時代のあたり前」を創りたい。
その結果として、今、世界が注力しているSDGsの「人や国の不平等をなくそう(No.10の目標)」や「住み続けられるまちづくりを(No.11の目標)」へアプローチすることもできると考えている。

キャンパスの中だけでの活動では、Entervibeが掲げるミッションは達成されない。総合大学という強みを活かして、社会とかかわっていく場を自ら築いていくことが必要だ。社会が抱える課題に向き合い、解決策を共想(お互いを思いやる)することで現状を正しく把握し、学生、企業や行政などと一緒に取り組んでいきたい。
それがきっと、映像学部生の未知なる可能性も引き出すことができるのではないか。
映像を通して、表現者として、プロデューサーとして、何を社会に伝えていくのか。
これからもたくさんの作品を生み出し、様々な人との交流を通して、考えていきたい。

〇『全員演者の演奏会』参加メンバー
3回生:小川玲香、胡桃琴、阿部真那実、植村光一、谷口和輝、西宮翔馬、矢代慧、横田光輝
2回生:武村祥太郎、前原由芽
1回生:多田圭吾

(*1)4つのフェーズからなる実施計画
①伝えたいメッセージの見せ方:
 どちらかの一方的な思いではなく、伝えたいメッセージに寄り添った内容であるか企画ミーティングを丁寧に行う。また、インタラクティブ映像演出で使用する映像やデバイスが、観る人の気分を害さないかなど、安全面も考慮したうえでデモンストレーションを入念に行う。

②インタラクティブ映像演出:
 映像のクオリティを高めるため、余裕をもったスケジュールを組んでコンセプトアートを完成させる。空間をいかしたインスタレーションや演出を考え、構成する。

③エンターテインメントが与える影響:
 モノづくりではなく、コトづくりであるということから演奏会後のヒアリングとアンケートを実施する。ヒアリングは感想だけでなく、観客の表情や新たなつながりによるコミュニティ形成はあったのかなども記録する。アンケートは開始前と開始後に実施し、意識、行動の変化を分析する。

④アーカイブと広報:
 映像による演奏会のアーカイブと本プロジェクトに関するドキュメントでのアーカイブを実施する。当日の記録映像だけではなく、映像が社会にどのように貢献していけるかについてプロモーションビデオ映像を制作する。

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