EIZOVOICE

2021年度 卒業式・卒業研究の「学会賞」「特別賞」「審査員奨励賞」発表!

2022.4.5

cias/db20220405-1
3月20日(日)に2021年度卒業式が行われました!!
当日は、未だ新型コロナウイルスの影響で日本に入国できない方たちも参加できるよう、
ZOOMを用いてライブ配信も行いました。

cias/db20220405-2

新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、卒業生一人一人に卒業証書を手渡しすることは叶いませんでしたが、映像学部の先生方が作成した卒業生全員の名前が書かれた動画に合わせて、北野圭介学部長が卒業生全員の名前を呼びました。


卒業式では、「立命館大学映像学会『優秀研究(制作・論文)の顕彰』」の受賞作品の発表も行われました。

「映像学会」とは・・・
映像学に関する学術の研究と普及を目的とした学会で、映像学部・研究科に属する教員、映像学部生・研究科院生、卒業生・修了生などから構成されています。

学会賞とは、その映像学会から、学びの集大成でもある「卒業研究」「修士研究」に授与される栄えある賞です。

最も成績が優秀と認められたものに「学会賞」、今後の活動を期待し表彰される「審査員奨励賞」、成績に関わらず特筆すべき意義をもったものと認められたものに「特別賞」が授与されます。

【受賞作品をご紹介】受賞理由もぜひあわせてご覧ください!!

■学会賞(論文)
氏  名 : 長谷川 綾音
論文題目 : 音による操作支援を中心としたゲーム設計に関する研究
―調査用アプリケーション制作を通じた検証―
受賞理由 :
本研究は、視覚に障碍を持つ方と晴眼者とが別なく共にゲームを楽しむことのできる環境をいかに実現するかという課題に対して、独自開発の検証用ゲームを用いて必要な機能や方法に関する知見の導出を目指すものである。ゲームのアクセシビリティに関する先行研究や関連の取り組みの丹念なレビューを踏まえつつリサーチクエスチョンの設定がなされ、視覚に障碍があってもプレイできるようゲーム空間内の移動や探索に必要な操作を音程やパンニングに紐付けることによるサウンドベースの支援が設計・実装された。そして、その有効性について、量的分析と質的分析を組み合わせるミックスドメソッドに基づく重層的な考察がなされ、論旨には高い説得力がある。
また特筆すべきは、Unityを用いて開発された検証用ゲームが、調査
のための機能実装として割り切った作りに留まらず、クリエーション的観点において非常に質の高いエンターテインメント作品に仕上がっていることである。ゲームとしてのクオリティをしっかりと担保しつつ、社会的な問題意識を踏まえた研究課題についての深い考察がなされている点は、総合大学におけるゲーム研究・制作の新たなパラダイムの到来を期待させるほどの優れた功労といえよう。長谷川氏は、開発においてプランニング、プログラミング、アートワーク等の必要な工程のほぼ全てを自身で行っており、調査検証に関わる作業も併せ膨大な時間と労力が注がれていることがわかる。
こうした長谷川氏の取り組みは、「学術研究」と「作家性のある創作」を見事に融合しつつ、社会的課題の解決に寄与するという卒業研究としては類稀な水準に達しているといえる。このようなアプローチは、理工系学部や社会科学系学部における研究スタイルとは異なるものであり、芸術・美術系学部の取り組みとも異なる独創的なものといえ、映像学部における学びの理念を高次に体現するものとして高く評価できる。

■学会賞(制作物+解説論文・小論文)
氏  名 : 北野 弘樹
論文題目 : フォトリアル背景における非現実的な世界の表現
受賞理由 :
本研究は、3DCGを用いることにより、現実にはあり得ない風景をフォトリアルな映像として表現することを目的としたものであり、荒廃した近未来都市の中をワンショットで移動するカメラを通して、細部にまで作り込まれたハードサーフェス・オブジェクト群を可能な限りリアルに描き切ろうとした取り組みである。
研究の初期段階においては、近未来という非現実的な世界にリアリティを持たせるために、まずは現実の世界をしっかり観察するというプロセスにも重点が置かれており、その結果として、作成されたオブジェクトの一つ一つの形状や質感、テクスチャにおいて、非常に説得力のあるリアルなビジュアルを生み出すことに成功している。そうして作られたオブジェクト群を3D空間内に丁寧に配置し、緻密なライティングを施すことにより、空間全体をフォトリアルなものとして作り上げることに成功している点は高く評価しうるものである。
加えて、自身の表現したいビジョンを実現するために、アンリアル・エンジンやサブスタンス・ペインターといった周辺ソフトについても自発的な研究を積極的に行い、そこから得られた知見を、しっかりと作品制作に活かしたという研究姿勢についても高く評価したい。特に、アンリアル・エンジンによるレンダリング・スピードの速さに着目し、これをプリ・レンダー作品に応用することにより、レンダリング効率を飛躍的に上げることで、長尺の作品制作を可能にした点は高い評価に値する。すなわち、本研究は、単に作品を制作するだけでなく、効率よく質の高い映像を生み出すためのワークフロウをも視野に入れた、制作過程全般に関する研究としても非常に意義深いものである。
こうした過程を経て完成した作品「New World」は、全編を通して非常に存在感のある世界をフォトリアルに描き出すことに成功している。

■学会賞(修士研究)
氏  名 : 長尾 優花
論文題目 : 遠隔授業における3Dアバタと相槌の強調表現を用いた
意思表示インタフェース
受賞理由 :
本研究では、COVID-19パンデミックのため多くの高等教育機関において遠隔教育が急速に導入されたことを背景とし、ビデオ会議システムを用いた双方向型遠隔授業を支援するインターフェイス開発が行われた。具体的には、学生・教員間及び学生間の相互作用の促進を目的とし、3Dアバタによる動作の可視化と表情の重畳表現、さらにビデオ背景色の変更による相槌の強調表現の機能を持つ授業向けインターフェイスの開発が行われた。
本研究では、遠隔教育において、授業の質向上のためには授業内での学生・教員間および学生間における相互作用が欠かせないが、ビデオ会議システムを用いた双方向型遠隔教育では、プライバシー保護等の希望からビデオ機能の使用が避けられる傾向があり、円滑な相互作用が阻害されているという課題の明確化がなされている。この課題を解決するため、利用者のカメラ映像を3Dアバタに代替し、利用者の頭部動作の解析により相槌をアバタに重畳表示するインターフェイスアプリケーションの開発が行われた。利用者がより直感的に授業内での意思表示が行えるよう、非言語コミュニケーションの文化差の課題についても考慮しながら、検出する頭部動作を頷きと首振りに焦点化したインターフェイス設計は、実装面や現実的な運用場面にかなったバランスの取れたものであり、高い評価に値する。評価実験は、遠隔教育に関する先行研究の精査し、社会的存在感を基軸とした評価実験の指標を定めた上で行われた。この結果、より多くのサンプル数による実験が望ましいものの、既存のビデオ会議システムのインターフェイスの利用比較実験において、提案インターフェイスの優位性が示されていることも成果として評価できる。
本研究からは、今後のウィズコロナ/アフターコロナ時代に訴求するための精度改善やさらなる評価実験の計画など展望も示されており、今後の社会に還元し得る質の高い実践的な研究であると評価することができる。

■奨励賞(論文)
氏  名 : 上松 南菜子
論文題目 :  ゲームプレイ視聴とe スポーツ観戦の相違に関する実証研究
~プレイヤー配置と視聴者の視線に注目して~
受賞理由 :
本研究は、日本社会におけるeスポーツの評価や認識に独自性を探求する論文となる。事業としてのeスポーツの健全な拡大の障害になっていることを指摘すると共に、その認識が古くからの日本人の遊戯観やスポーツ概念の多義性、スポーツ観戦における観ることと視ることの認識論的な相違などの観点から複雑に起因するものではないかと洞察している。この洞察は非常にユニークであるとともに説得力があり、従来の社会経済的あるいは法的な観点のみからのeスポーツ論とは一線を画す課題設定に成功している。 
また、観戦者の視線移動回数や滞留時間がそれぞれ異なる傾向にあることを有意に実証することに成功しており、“eスポーツらしさ”という認識についても特徴のある相関を導くことに成功している。特に、主観的注視意識の回答と視線移動箇所分析の複合によって「手元の重要性」という結論が導かれ、実際のeスポーツ事業者にとっても、重要な価値を有する示唆となっている。
本研究はテーマ設定、論文構成および結論の妥当性、独自性において卓越して優れていると判断し、奨励賞として推薦する。

■奨励賞(論文)
氏  名 : 木下 実音
論文題目 : 原作漫画の読者による実写化映画への批判言説に関する研究
受賞理由 :
原作漫画と実写化映画の関係性と、それに関するインターネット上の批判的言辞を巡る問いは、多くの学生が関心を抱いている問いである。この問いに対して、真摯に向かい合い、深く考察をめぐらせた上で、議論を単純な論理に集約させることを避け、多彩な分析手法を用いて多層的に検証が重ねられた結果、当初の仮説を超え、表層的な言辞の向こうにある観客の受容行動の本質にまで迫るものとなった秀逸な研究である。本研究は、文学理論を確認したうえで、インターネット上の言辞に対するテキストマイニングと、GTA(Grounded Theory Approach)に基づいた鑑賞者に対するインタビュー調査を重ねていった混合研究であるが、いずれのアプローチについても深い理解に基づいて展開されている。そして最後まで貫かれた精緻な論理構成によって、原作漫画と実写化映画を巡る批判的言辞の深層を解き明かそうとされていくプロセスはスリリングでさえある。
以上の点から、本研究は卒業研究としてたいへん秀逸なものであり、奨励賞として推薦することが妥当であると判断した。

■特別賞(制作物+解説論文・小論文)

氏  名 : 山本 知沙
論文題目 : 粘土型インタフェースを用いた色と言葉に親しむためのAR 教材
受賞理由 :
Yamamoto-san’s project involved a multi-disciplinary study  of a visuotactile mixed-reality system intended for STEAM education on the topic of colour. Her research skillfully leverages the power of touch and visual design to effectively motivate self-directed learning. This challenging project combines many fields: computer vision, projection mapping, colour theory and taxonomy, design, and interaction. Yamamoto-san skillfully blended technological and aesthetic aspects to develop a system for active learning that is elegant and appealing. She tested her system empirically through careful user studies. The thesis presents the results clearly, efficiently, and beautifully. The accompanying documentary video and presentation slides are also excellent. Significantly, she has demonstrated or will soon present her work at two international conferences (SIGGRAPH Asia 2021, Laval Virtual 2022) and one domestic conference (Interaction 2022). Such a level of scholarly activity is rare for an undergraduate and indeed would be considered excellent for a graduate student at the Master’s course level.
In summary, Yamamoto-san’s effort, thesis research, and scholarly output demonstrates a very high standard of quality and is worthy to receive the award.

受賞された皆さん!おめでとうございます!!!!

式典後、充光館(映像学部の建物)での卒業生の皆さんの
様子を少しだけお届けします!!!
cias/db20220405-5

cias/db20220405-6

cias/db20220405-4
映像学部の機材庫の方が卒業生の皆さんのために設置!!!

皆さん卒業おめでとうございます!!!!

それぞれの道に向かって頑張ってください☆

一覧へ