理工系 板書代筆マニュアル 立命館大学 障害学生支援室 P1 理工系・板書代筆マニュアル 目次 1 はじめに 2.1 板書代筆の基本 2.2 板書代筆の応用                  3 Q&Aコーナー 4 コミュニケーションの重要性  付録A ギリシャ文字一覧 P2 1. はじめに このマニュアルは、板書代筆を行うサポートスタッフに向けたものです。 具体的には、2014年度から2016年度までBKC・理工学部で行われた、視覚障害(弱視)の学生に対するサポートの内容を整理したもので、サポートチームのミーティングで話し合われた題材が中心です。 「板書代筆」とは、黒板に板書された内容をノートに書き写していくサポートを指します。端的に言ってしまえば「黒板をノートに写すだけ」ですが、普段“自分のためにとっているノート”とは勝手が異なることも多いです。 そこで、サポートする中でサポートスタッフが感じたこと・困ったことや、サポートスタッフが行った工夫などをこのマニュアルでは紹介しています。 また、サポートを受ける学生が、サポートに対して感じたことも載っています。 これからサポートを始める学生だけでなく、サポートをある程度続けてきた学生にも, ぜひ読んでもらいたいです。 P3 2.1 板書代筆の基本 「板書代筆」は、黒板に書かれている内容をノートへ書き写すサポートです。基本的には、「黒板に書かれていることを、そのまま写すこと」が鉄則です。以下では、具体的な板書代筆サポートの流れや、方法について紹介します。 板書代筆サポートを行うにあたり、サポートスタッフが個人の筆記用具を使う必要はありません。支援室にサポートセットが用意されているので、それを使えばOKです。セットの中には、次のようなものが入っています:(絵図 ルーズリーフ、Pen、付箋、修正ペン、カバン) サポートを行っていくにあたり、サポートスタッフはサポート利用学生が必要としていることを把握しましょう。その上で、サポート利用学生の要望に応えた「見やすいノート」のための「工夫」を行っていくことが必要です。例えば、サポート利用学生が見づらい色のペンは、使用を避けるといった工夫があります。あるいは、文字を大きく書くために、罫線を無視するといった工夫も行ってきました。 次節「板書代筆の応用」では、より発展的な技術を紹介します。 P4 ノート原寸大例 板書工夫の一例紹介!参考にしてみてください。(絵図省略:実際のノート原寸大が掲載されています) 〈行間の取り方〉 式の途中に分数が入ったり、さらにその分数に上・下付き文字が出たりするkともあります。文字が小さくならないように前後の行間に注意しましょう。 〈点やコンマについて〉 点やコンマは特に大きく書いたほうが見やすくなるでしょう。 〈色ペンの利用〉 込み入った図には、判別しやすいように色をつけるとわかりやすくなるかもしれません。 〈図の余白について〉 図は後から説明文が付け加えられることも多いので、余白は大きめに取りこぼさないよう、綺麗に書くことに時間をかけすぎないように注意しましょう。 〈付箋の利用〉 口頭説明など板書されないけど重要な補足説明は付箋で付け加える方法があります。 P5 2.2 板書代筆の応用 板書をそのまま書き写すのが難しいこともあるでしょう。そんな時はこのような工夫をしてみてはどうでしょうか? このような工夫は、利用者とのコミュニケーションを取った上で行いましょう。 CHART #1 : 大きい行列や表を移すとき(絵図省略:グラフや図のノート例) 例えば、罫線を引いてノートに代筆することで、サポートスタッフ自身の書き間違いを防ぐのみならず、利用学生も把握しやすいノートにできます。 CHART #2 : ペンの色を変える 黒板では全て白いチョークで板書されている時でも、そのまま黒いペンで書いてしまうとノートが見づらくなってしまうことがあります。そのような場合は、色を変えて写してみることで、見やすくできることがあります。 P6 3 Q&Aコーナー ここでは、実際に私たちが経験したことをもとに、よくある疑問・質問をまとめてみました。個人差があるため、必ずしもすべての場合に当てはまるわけではないですが、ぜひサポートに役立てて下さい! Q.ノートは両面使っていいの? A.基本的に両面使用です。裏写りが激しければ片面を使っています。 Q.サポート中は、隣に座らなきゃいけないの? A.特に決まりはありません。お互いにコミュニケーションが取れる範囲で座っています。 Q.授業内で配布されたレジュメは貰っていいの? A.manaba+Rにアップされているものは、サポート利用学生にあらかじめ印刷してもらっておくと便利です。授業内配布のレジュメは、先生に貰ってもいいかサポート利用学生が確認をとっています。(先生によっては不可のため) Q.ペンは何色を使っていいの? A.青は黒との見分けがつきにくいため、緑や赤を優先的に使っています。 Q.サポートスタッフが授業中に先生に当てられた!どうしよう? A.答える必要はなく、サポートスタッフである旨を先生に伝えましょう。 P7 Q.重要そうな単語以外でも、先生が頻繁にチョークの色を変えている。ノートでも変えるべき? A.ひとまずは板書通りに写すことを優先しましょう!余力があれば、サポート利用学生に直接尋ねてみてください。 Q.図と式のレイアウトについて、板書通りの配置で写すべき?ノートの幅の都合でそのままは入らない! A.ノートの見やすさ優先で、適宜自分で調整しています。ただし、小さくなり過ぎないように注意! Q.板書はしてないけど、先生が大事なことを言っているときはノートをとるべき? A.始めのうちは、板書を写すことに専念しましょう!慣れて余力が出てきたら、付箋に書き留めてノートに貼ると分かりやすいです! Q.先生が部分的に板書を書き換えて、写すのが間に合わない!! A.記号、式番号を自分で振り、それを代用して時間を短縮しています。 Q.他のサポートスタッフがどんな工夫をしているのか知りたい! A.1、2ヶ月に1回、サポートミーティングがあります!自分の抱えている疑問などを直接他のスタッフに相談できる貴重な場でもあります。 P8 4. コミュニケーションの重要性 <利用者との話し合い> サポートにおいては相手の立場で考えることは重要です。しかし相手の要望は大抵の場合、言葉なしには伝わりません。なにか困ったことがあったら、お互いに話し合って解決していきたいものです。そのことがより良いサポート活動に繋がるでしょう。話し合いの中で「そういうことに困っていたのか」「こんな意見もあるのか」と気づかされることも多いです。 些細な困りごとなどは言い出しにくいもの。相手がどうして欲しいのか、自分には何ができそうなのか、そういった普段からの意思疎通が重要です。サポート利用学生とスタッフとの間で、お互いに話しやすい雰囲気が作れればベストですね。   <ミーティング> 日々のサポートや話し合いの中で、様々なサポートの工夫が見つかります。その工夫を他のサポートスタッフとも共有することを主な目的として、1〜2ヶ月に1度、サポートチームのミーティングを行います。ミーティングの場では、サポート中に直面した問題に関して解決策を全員で話し合うこともよくあります。他のスタッフの担当する授業の様子も共有されます。ピンチヒッターとして自分の担当外のサポートをする場合もありますので、この情報は役に立ちます。 <最後に> このマニュアルは、ある弱視障害学生のサポートの中で発見した工夫をまとめたものです。サポート利用者が違えばまたサポートの工夫も変わってくるでしょう。利用者と話し合ってサポートに改良を加えてください。 私たちも日々の話し合いとチームミーティングの中で、サポート方法の工夫を続けてきました。このマニュアルを基に、実際のサポートの経験・ミーティングでの話し合いを通して、これからも工夫を重ねてより良いサポートにしていきましょう。 P9 付録A ギリシャ文字一覧 板書代筆中に、知らない文字や記号に出くわすこともしばしばあります。 そんな時に、この付録を見てみると、役に立つかもしれません。 *代表的な読み方、記号のみ記載しています。 A. ギリシャ文字(小文字) アルファ α イオタ ι シグマ σ ベータ β カッパ κ タウ τ ガンマ γ ラムダ λ ウプシロン υ デルタ δ ミュー μ ファイ φ φ エプシロン ε ϵ ニュー ν カイ χ ゼータ ζ クシー ξ プサイ ψ イータ η パイ π オメガ ω シータ θ ロー ρ B. ギリシャ文字(大文字) ガンマ Γ シグマ Σ デルタ Δ ウプシロン Υ シータ Θ ファイ Φ ラムダ Λ プサイ Ψ クシー Ξ オメガ Ω パイ Π 裏表紙 『理工系・板書代筆マニュアル』 【編集メンバー】 宮崎 史登 (機械工学科・4回生) 米田 大樹(物理科学科・4回生) 飯島 佑香(機械工学科・3回生) 難波 巧(電気電子工学科・3回生) 松波 実咲(物理科学科・3回生) 【発行】 立命館大学 障害学生支援室 URL : http://www.ritsumei.ac.jp/drc/ 【発行日】 2017年3月31日