表紙   点図作製マニュアル​ 2023  立命館大学 障害学生支援室 ​p2  はじめに ​  立命館大学 障害学生支援室では、以前より、主に全盲の視覚障害学生の修学支援として、授業や研究資料のテキスト校正(テキストデータとして提供するための校正作業)をサポートスタッフのサポート活動の一つとして行ってきました。​  履修科目の中には、図やグラフ、イラストを多く使用している授業資料もあり、校正者注での言葉の説明だけでは、視覚障害学生が十分に内容を理解することが難しい状況にありました。​  そこで、2022年度秋学期からテキスト校正に加えて、新たに点図作製を視覚障害学生へのサポートとして導入し、サポートスタッフがその作業を担っています。​  この冊子は、点図作製の作業手順をわかりやすく、共通理解を図ることを目的とし、導入時より点図作製に関わったサポートスタッフと一緒にマニュアルとして冊子にしました。​  これから点図作製のサポート活動に関わる方や、点図に関心を持った方など、いろいろな方に役立つ資料になればと思います。​  立命館大学 障害学生支援室​  2024年1月 p3  目次  はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2  1.点図とは何か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・4  2.修学支援における点図の活用例・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・5  3.点図の作成方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・6  ① 点図にしたい画像の切り取り ・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・7  ② 点図に不要な部分の削除 ・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・8  ③ 画像の透過  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・9  ④ 点図に必要な文字、説明文の点字化 ・・・・​・・・・・・・・・・・・・・13  ⑤ 点図の示し方のルール・・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・14  ⑥ 点字の印刷 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・​・・・・・・・・・・・・・・15  4.点図を利用する障害学生の声・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16​  5.点図作製に関わったサポートスタッフ(学生)の声・・・・・・18  【付録】点字について知っておくと便利な知識  ・・・・・・・・・・・19 p4  1.点図とは何か​  点図*(または触図)とは、紙などに凸点を並べて描いた絵や図をいいます。​  視覚障害のある方が絵や図、地図などを理解する際に、手で触って理解するために用います。​​  立命館大学では、視覚障害学生が講義資料内にある図やグラフを、より理解できるように、必要に応じて点図にして印刷しています。​  具体的には、資料内の図やグラフを加工し、立体イメージプリンター(イージー・タクティクス)で印刷、立体化し、​浮き出た線や点字に視覚障害者が触れることで、テキスト情報を補う手段として活用(校正者注:「テキスト~活用」太字、下線)しています。​  *このマニュアル内では、点図という言い方で統一して説明を行います。(校正者注:「*~行います。」赤字)​  立体イメージプリンターEasyTactix(イージー・タクティクス)とは​  表面に樹脂系の発砲インクがコーティングされた専用用紙を使用し、裏面から温度をコントロールしたサーマルヘッドをあてることで、点字や図の浮き出し印刷を可能にする点字プリンター。印刷した点図に別途、カラー印刷も可能なので、見た目にもきれいな点図を作ることができる。​  参照:https://creativethings.jp/  Check!様々な点図の活用場面 ​  大学では、授業支援以外でも、キャンパスマップや大学構内の案内図として点図を活用しています。​  公共機関の場合は、館内のフロアマップなどを点図化して、音声案内と共に活用されています。また最近では、美術館や博物館など、文化芸術における作品の鑑賞や説明用にも用いられる機会が増えています。​ p5  2.修学支援における点図の活用例​  視覚障害学生の学ぶ領域によって、点図の活用の有無は異なりますが、​例えば、以下のような講義の場合で活用しています。​  グラフ・図が多い、統計・実験の講義では、  ​  ・複雑なグラフの形状がイメージしやすくなる。​  ・フローチャートなどの項目間の循環や繋がりが​わかりやすくなり、全体像がつかみやすい。​(校正者注:「・複雑な~つかみやすい。」赤字)  イラストが多い、解剖学・生理学系の講義では、​  ・初めて学ぶ脳や体の器官の形や構造のイメージを持ちやすい。​  ・部位の位置と名称を共に学ぶ必要があるときに便利。​(校正者注:「・初めて~便利。」赤字)  Point!点図のメリット  視覚障害学生にとっては、点図があることで再確認しやすいことや、全体のイメージがしやすいメリットがあります。​  また、テキスト校正を行う支援者が言葉で説明しきれない情報や​全体像を、点図を介して視覚障害学生自身の触覚から補うことができます。​    グラフ省略「オリジナル資料」(校正者注:シンプルな棒グラフが例として記載されている)  写真省略「点図にした資料」(校正者注:例として挙げたグラフを点図にした写真が掲載されている) p6  3.点図の作成方法​  障害学生支援室では、下記の手順で点図を作成しています。   ①点図にしたい画像の切り取り  ②点図に不要な部分の削除   ③画像の透過  ④点図に必要な文字、説明文の点字化​  ⑤点図の印刷  図省略(校正者注:上記①~④に対する図が4つ掲載されている。)    Check!④には、点訳アドインソフト(校正者注:「点訳アドインソフト」太字)のインストールが必要です!​  EasyTactix(イージータクティクス)には、Microsoft Word/Excel用点訳アドインソフト(校正者注:「Microsoft~ソフト」赤字)が付属しています。わかち書き(※P21参照)などの専門知識が無い方でも、変換したい文章を選択するだけで点字文章へ変換できます。  (参照:https://creativethings.jp/Braille/)​ p7  3-① 点図にしたい画像の切り取り​  点図を作製する際、必要な箇所を画像として切り取る(校正者注:「必要な~切り取る」下線)必要があります。​  例として、パワーポイント資料を点図にする際の画像の保存方法を説明します。​  1.点図にしたい部分をスクリーンショットし、ペイントを使ってトリミングを行う。  図省略(校正者注:パワーポイントの資料のスライドのスクリーンショット)  2.ペイントにペーストする。  図省略(校正者注:パワーポイントから点図にしたい図をペイントにペーストしたスクリーンショット)  挿絵省略(校正者注:人物のイラストから「PDF・Wordも同じ方法で対応可。​ただし、Wordの場合は、スクリーン​ショットせずに直接、画像を保存する​方が簡単にできます。​」と吹き出しがある) p8  3-② 点図に不要な部分の削除  3.スライドの不要な部分を切り取る(文字を含む)​  方法1:「選択」を押し、不要な部分を四角形選択、あるいは自由選択で囲む。​→「Delete」で消す。​  方法2:「消しゴム」タブで細かく消す。  図省略(校正者注:ペイント上でパワーポイントから取り出した図が示されたスクリーンショット。)  図省略(校正者注:ペイント上の「選択」画面と「消しゴム」タブに赤枠を囲い示しているスクリーンショット。)  4.画面上「ファイル」から「名前をつけて保存」を選ぶ。「PNG画像」を選択。​  図省略(校正者注:ペイント画面にあるファイルのタブを開いたスクリーンショット。「名前を付けて保存」と「PNG画像」を赤枠で囲い示している。)  挿絵省略(校正者注:人物のイラストから「画像処理で問題が起こりにくいため、​PNG画像を選択します。​」と吹き出しがある。) p9  3-③ 画像の透過  画像の透過とは、特にイラストなどの場合、物体の形を正しく伝えるため、輪郭のみを残し、内側部分を消去する(校正者注:「輪郭のみ~消去する」下線)ことをいいます。  図省略(校正者注:犬の「未透過」→「透過済み」のイラストがある。→の上には「透過」と記載がある。)  Cheak! Q.なぜ画像の透過が必要なのか?​  イージータクティクスは、画像の色のある部分(例:イラストや線の影の部分、画像の​ノイズなど)全てを読み取り、立体として出力します。​  そのため、上記の犬の画像であれば、細かな顔のパーツは判別できなくなります。​  ・画像の​輪郭をより綺麗な線として抽出する​  ・線の影やノイズを消す​  上記により、わかりやすい点図を作製することができます。​ ​ 【対策】元画像が粗い、鮮明でない場合​、以下の方法が有効です!​  ・ノイズ除去の処理​ (例:ペイントの消しゴムで削除) ​​  ・線の書き直し​ (例:ペイントやWordの画像挿入により、線を綺麗に引き直す)​  画像の透過作業には、以下のようにいくつかの方法があります。​  1.フリーサイトの活用  例:バナー工房​  https://www.bannerkoubou.com/photoeditor/transparent/ ​  2.フリーソフトの活用  例:輪郭抽出器 v2.10​  https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/rinkakucyu/​  3.Photoshopの「輪郭のトレース」機能​  今回は、初心者でも活用やすい1、2の方法をご紹介します。 p10  3-③ 画像の透過 ―1.バナー工房(フリーサイト)の場合-​ ​  1.サイトを開き、​  (1)「画像を選択する」から保存した画像を選び、​  (2)「画像を加工する」を選択。​  図省略(校正者注:バナー工房のスクリーンショット。図の上に(1)と(2)として赤でその場所を丸で囲み、示している。)  図省略(校正者注:バナー工房のサイトに選択した画像が載ったスクリーンショット。画像の周りを赤で囲み、そこに向かって矢印と「塗りつぶされている部分​(薄い水色、白色)を透過する。​」とコメントがある。また「隣接」を赤で囲んであり、図下の「2.まずは、初期設定を変えずに透過してみる。​」に向かって矢印がある。)  2.まずは、初期設定(近似値4、隣接の同色のみ)(校正者注:「隣接の同色のみ」赤字)で透過してみる。  図省略(校正者注:3つ図があり、透過の状況を横並びで3段階で示している。左の図の下に「(1)透過された箇所は​グレーになる。​」とある。真ん中の図に「(2)薄い水色を全て消す時は、 オプションの「隣接」を「隣接外の同色も処理」へ変更し、同様に左クリックをする。」とある。なお「隣接外の同色も処理​」は赤字。右の図下に「(3)白色も同様に透過を行い、輪郭が抽出できる。​」と記載がある。)   p11  Point!透過させるコツ​  オプション設定を変えることで、透過が行いやすくなります。画像に合わせて​最適な設定を探すことで、綺麗な輪郭を抽出できます。​  図省略(校正者注:バナー工房のスクリーンショット。画像下方に「近似値(推奨4-8)」と「隣接」が赤枠で囲いがある。)  【コツ1】「近似値」を調節する​  近似値の数字が大きくなるほど、透過力が強くなる。​(クリックした箇所と似た色をまとめて透過できる)​  近似値1 → 111111​​  近似値20 → 内側を確実に消去できるが、輪郭も消えてしまう​  【コツ2】 「隣接外の同色も処理」を適宜使用する。​  画面下部「隣接」から「隣接外の同色も処理」を選択すると、​​  クリックした箇所と同じ色の場所をすべて一度に透過できる​。​(校正者注:「すべて~できる。」下線)  3.画面右上部「保存」を押して(または画像を右クリックして)、透過した画像を「名前を付けて保存」する。​ p12  3-③ 画像の透過 ー2.輪郭の抽出(フリーソフト)の場合-  画像(BMP/JPEG/GIF/PNG形式)を“輪郭線だけの画像“に変換したい時には、「輪郭の抽出」を行えるアプリが便利です。​  また、“輪郭線と内側の色の差がない画像“にもお勧めです。 (★Adobe Photoshopの「線画抽出」も、類似の機能です)​(校正者注:「(★~です)」太字)  0.開いてすぐは、オプションの初期設定が以下になっている。​  図省略(校正者注:輪郭抽出器の初期設定のスクリーンショット。「開く」ボタンに赤い枠で囲んである。)    1.「開く」を押し、画像選択すると、初期設定で抽出された画像が表示される。​  図省略(校正者注:輪郭抽出器に抽出された画像が入ったスクリーンショット。)    2.オプションの設定を変え、 「実行」を押す。 ​  最適な設定を見つけるまで繰り返し、「保存」で画像を保存する(bmp形式)。​  図省略(校正者注:輪郭抽出器のスクリーンショット。画像内にある「オプション」に赤枠の囲みがある。また抽出された画像が左右にあり、左には「(左)​線の太さ:細い ​コントラスト:3」とあり、右には「(右)​線の太さ:細い ​コントラスト:5」とコメントがある。また図に向かって「左)内側に黒い点が残らず、消す手間が​省ける。​右)少し輪郭が消えるが、細い輪郭線を​抽出でき、「ペイント」アプリで線の追​加が可能。 ​」とコメントと矢印が向いている。)    Point!オプションの設定について  ①コントラスト:コントラストの数字は1(細かい)~16(荒い)まで16段階から設定可能。 ​数字が小さいほど輪郭がしっかり残る。​(校正者注:「数字が~残る。」下線)  ②線の太さ:輪郭線の太さも「細い/太い」の2段階で設定可能。​  ③ゴミ除去:ONにすると輪郭と関係の無い点を消し、綺麗に輪郭を抽出できる。 ​ p13  3-④ 点図に必要な文字、説明文の点字化​  1.透過した画像をWordに挿入し、点字を入れる箇所に「テキストボックス」を​作成する。​  図省略(校正者注:透過したイラストとそのイラストに「プロフェッショナリズム」と文字がある図が横並びにある。文字のある図の横に「かな入力ではなく漢字入力​→点字の変換ミスが減少する。​例)・文節の切れ目​ ・ひらがなの誤変換など​」と記載がある。)  2.入力した文字を①、②、③の順で点訳する​  図省略(校正者注:点訳アドインソフトの入ったWordのスクリーンショット。図の文字のところに向かって「①変換する文字をドラッグ」と赤字である。「点字(わかち書き/6点入力)」に向かって「②タブを開く」の矢印がある。「点字変換」が赤い丸で囲まれ「③「点字変換」を押す」とある。図の横、②に向かって「点字にしたい文字は、かな入力ではなく漢字入力することで、 点字の変換ミスが減少!​ 例)・文節の切れ目​ ・ひらがなの誤変換など)」のコメントがあり、①に向かって「文字を選択(ドラッグ)しないと、点字変換機能が作動しないので注意!​」のコメントがある。)  図省略「点字変換のコマンド​」(校正者注:上の図③の部分のコマンドを開いたスクリーンショット。「原文」のところに赤枠で囲みがあり、「「原文」の✔を外すことで、​テキストボックス内に点字のみ​表示される。​」と図の外から矢印およびコメントがある。図の中の「再変換」にも赤枠の囲みがある。)  3.「原文」が正しく「かな点字」に変換されている​ことを確認後、「確定」をクリック。​  ※修正したい時:「かな点字」(校正者注:「「かな点字」~修正」赤字)の欄を修正し、​「再変換(校正者注:「再変換」赤字)」→「確定」をクリック。​  図省略(校正者注:透過後の点字が入った図。図の下に「点字が入力完了!」とある。)   p14  3-⑤ 点図の示し方のルール​  点図の情報は、一定のルールを決めて配置することで、読み手にわかりやすい図を作製することができます。​  図省略(校正者注:脳のイラストがあり、その脳の説明する点字が記載されている。脳の図の上にある点字に「①授業名 第1回 スライドタイトル スライド2」の矢印が向いている。図の四方に空白を示す区切りに赤で○囲みして「②」の矢印が向いている。脳の部位を説明する点字の囲いの部分に向かって「③」の矢印が向いており、脳の目の部分を指した矢印に向かって「④」が向いている。)  ①授業名、スライドタイトルなど、必要な情報を始めに入れる。​  ②余白は「標準」(校正者注:「標準」太字)幅で!​  ③各部位の名称などは、テキストボックスの枠線を残す。​  ④図と説明用の矢印の太さは、違いが分かるよう区別をつける。  ​  また、矢印は説明したい箇所から離れ過ぎずに挿入する。(校正者注:「説明~挿入」下線)​  Point!点字入力の際の留意点  EasyTactixの点字変換アドインソフトは、一般的な日本点字入力だが、英語圏ではUEB(Unified English Braille:統一英語点字)表記が使われており、表記が異なる場合がある(記号の表記、特に、カッコやプラス/マイナスなど(校正者注:「記号の~など」青字))。​  障害学生がどの点字を学んだか、事前に確認した上で点字にしていく。​ p15  3-⑥ 点図の印刷​  Check!点図を印刷する際は、以下の項目を事前に確認しましょう!​  印刷前に・・・​(校正者注:「印刷前に・・・」赤字)  □ 授業名、授業週、スライドやページ番号、スライドタイトル(校正者注:「授業名、~タイトル」下線)が抜けて​いないか?点字の打ち間違いがないか?​  →入力後の点字をドラッグし、「点字修正」タブでひらがなへ再変換(校正者注:「「点字修正」~再変換」赤字)して確認​  →ミスの有無(文節の切れ目(校正者注:「文節の切れ目」赤字)がおかしい、誤変換(校正者注:「誤変換」赤字)など)を確認 ​  □印刷可能範囲にテキストボックスが入っているか?​​ →Wordの「余白のガイドライン」(校正者注:「Word~ガイドライン」」赤字)に接していると印刷されない​  □テキストボックスに書かれた点字が見切れていないか?​  →1行に納まらず見切れている(校正者注:「1行~見切れている」赤字)場合は、ボックスを拡大する​  □点字と点字の間隔が近すぎないか? ​  →近接すると、読み取りづらい​  □テキストボックスが、指し示す箇所から遠くないか?​  → 離れると、どこの説明かわかりづらい​  印刷後…  □点字の一部が切れていないか、Wordの元データを見て上下左右をチェック!(校正者注:「Wordの~チェック!」赤字) p16  3-⑥ 点図の印刷  【印刷方法】  印刷には、専用の印刷用紙「立体シート(A4)(校正者注:「立体シート(A4)」赤字)」を使用します。  1.印刷メニュー画面の「プリンター選択一覧」からプリンターを選択する  USB 接続で印刷する場合は、「EasyTactix」を選択。  Wi-Fi 又は有線 LAN を使用して印刷する場合は、「EasyTactix(Network)」を選択。  2.「印刷」ボタンをクリック する  ・プリンターは印刷データを受信すると LED が点滅し、印刷を開始する。  ・最初の1枚目は、印刷を開始するまでに2~3分間印字ヘッドを温め、印刷準備をする。  ・印字ヘッドが適温になると立体シートを給紙トレイから取り込み、印刷を開始。  ※注意:給紙トレイは、手差し1枚ずつしか入れることができない。複数枚セットすると、紙詰まりを起こすため注意!(校正者注:「※注意~注意!」ハイライト)  印刷の設定  標準→ 点字などの小さな部分もできるだけ高くなるように印刷する。   精細→ 画像の立体部の表面が滑らかになるように印刷する。  印刷速度  1から6まであり、1は遅い(立体は高くなる)→6は速い(立体は低くなる)。  3が初期値。4で行うのがおすすめ。   注)印刷方法の詳細は「EasyTactix(イージータクティクス)取扱説明書」をご確認ください。以下のサイトよりダウンロードできます。    https://creativethings.jp/downloads/ p17  4.点図を利用する障害学生の声  サポート利用学生 Aさん  視覚障害(全盲)  総合心理学部に所属  1.これまでの点図利用の経験  小学校4年生の時から点図を使用していました。盲学校に通っていた8年間は、ほぼすべての授業で点図のページが組み込まれた教科書が用意されました。歴史の顔写真や英語のイラストなどは省略されていましたが、グラフや表、模式図などはすべて点図化していただきました。高校(海外の学校)では、数学・生物・心理学のみ、必要な点図を用意してもらっていました。解剖学など、図しか出てこないような科目に関しては、模型などで解説をしてもらい、自分でメモを取っていました。  2.点図を活用している授業  グラフや表でデータの移り変わりやばらつきを図式的に説明される授業で使っています。例えば、心理学統計法・青年心理学・行動分析学など。また、生理学的な知識をその器官の大まかな場所と役割を紐付けて学習する授業では、身体組織や脳の点図を用いて学習しています。例えば、認知心理学・神経生理心理学・医学総論など。他にも、ゼミの研究ではほぼすべての論文の結果部分で図の理解が必要となります。  3.どのような手順で点図を理解しているか  ①図の紙に対する大きさを把握する。  ②図の上部らへんから細かく下に向かって細部を把握していく。なお、上部の密度がスカスカな場合は下→上に触る事が多い。  ③図の中に書かれている点字や「→」を探しながら、もう一度スキャンする。  ④ここまで行って初めて図の意味する関係性や内容から読み取れることについて考えながら触る。この時に、図の全体を頭の中でイメージしながら手で触っている一部の情報と結びつけを行う。  ⑤最後に全体をさっと眺める。  4.点図を学習のどのような場面で活用しているか  ・授業前は、時期や授業にもよりますが、図の解説テキストのみ読んでいます。  ・授業の時は、認知心理学系の図についてのみ、授業中に解説を聞きながら活用しています。理解が困難な実験のステップや結果なども図を触ると分かりやすいと感じています。  ・授業後の復習では、図を見ると思い出しやすいため、よく使っています。また、わからなかった図を友達に聞き、直接解説を受けられるため、時間をかけて読み取る事が出来ます。  ・試験の前には、コンセプトやキーワードを記憶するためにも図式的理解が役立っています。  写真省略「サポートスタッフの作業の様子」 p18  5.点図作製に関わったサポートスタッフ(学生)の声  サポートスタッフ Bさん  サポート活動:1年8カ月  点図作業:8カ月  サポートスタッフ Cさん  サポート活動:2年4カ月  点図作業:1年3カ月  1.活動に参加したきっかけ  Bさん:空きコマを有効活用できないかと考えていた時に、学内のポータルサイトで障害学生支援室のサポート活動を知り、興味を持ちました。1回生の春学期から活動に参加しています。  Cさん:パソコンテイクに興味があって参加したが、所属キャンパスでパソコンテイクの活動がなく、結果的に点図の作業をすることに…。でも想像以上に楽しかったです!特に障害学生から良い反応があるとやりがいを感じています。  2.工夫した・力を入れた点  Bさん:複雑な図やグラフを点図化する際に、どのような配置にすればいいか悩むことがありました。構図によっては、グラフ上の線と対象を指す矢印の区別が難しくなってしまう事があり、その度に位置関係を考え直す必要がありました。  Cさん:点図作製の際に可能な限り障害学生の意見を反映させること。利用する人が満足するものを作らなければ仕事をしたことにならないと思います。試行錯誤を重ねて要望に応えるようにしています。  3.点図作製を通して学んだこと  Bさん:視覚障害者にとって、視覚的イメージの一つ一つが大切な情報。そのためこちらの判断で決めつけるのではなく、きちんと伝えることが大切だと学びました。  Cさん:身の回りに全盲の方がいなかったので、どのような世界を見ているのか、徐々に点図の作り方や伝わりやすい話し方などから学んでいくことができました。  4.今後へ向けた提案・希望  Bさん:時間の関係上難しいとは思いますが、点図化作業をする際、実際に印刷したものに触れてもらって直接フィードバックがあれば、どこが判りづらいのか、どこを修正すればいいのかをすぐに知ることができ、より良い点図が作成できるのではないかと思います。  Cさん:作成者が直接、点図の解説ができた方がいいと思います。元の資料に忠実に作るようにしていますが、作成時の都合などで、どうしても変更しないといけない場合に、誤った情報が伝わる可能性があって。障害学生支援室を介してまとめて、利用学生に点図を渡しているのですが、作成者が直接、利用学生に渡して解説する機会があっても良いのではないかと思います。  5.これから点図制作に関わる方へ  Bさん:もしかすると初めは戸惑うかもしれませんが、分かりやすい点図化作業のマニュアルがありますし、分からない時には障害学生支援室の職員の方が丁寧に教えてくださるので、気軽に参加していただけたらと思います。普段、自分が見えている世界を改めて見つめ直す貴重な経験ができると思いますよ。​  Cさん:利用学生との距離が近い支援なので、学びが多く面白いです。また自分の支援が上達していく感覚も得られることや、直接お礼を言われることもあるので、やりがいを感じることができると思います。楽しみながら作業をしていけば、利用学生にとっても、自分にとっても良い支援になるのではないでしょうか。ともに点図界隈を盛り上げていきましょう。 p19  【付録】点字について知っておくと便利な知識  ●点字のしくみ  図省略(校正者注:点字のイラスト。左上から下に1~3、右上から4~6とある。1,2,4が赤丸、3,5,6が青丸に数字がある。)  点字は、タテ3点・ヨコ2列、6つの点の組み合わせでできています。  この単位を「マス」と言います。    6つの点は凸面(読む面)からみて、左上を①の点、左の真ん中を②の点、左下を③の点、右上を④の点、右の真ん中を⑤の点、右下を⑥の点と呼んでいます。    図省略(校正者注:上記の点字のイラストが横並びにあり、「進む方向→」とイラストの下にある。)  ★ひらがなの点字  ア行(母音)  点字省略  あいうえお  カ行:母音「あいうえお」+⑥の点  点字省略  かきくけこ  サ行:母音「あいうえお」+⑤と⑥の点  点字省略  さしすせそ  タ行:母音「あいうえお」+③と⑤の点  点字省略  たちつてと  ナ行:母音「あいうえお」+③の点  点字省略  なにぬねの   ハ行:母音「あいうえお」+③と⑥の点  点字省略  はひふへほ  マ行:母音「あいうえお」+③と⑤と⑥の点  点字省略  まみむめも  ヤ行:母音「あうお」を一番下までおろしてから+④の点  点字省略  かきくけこ  ラ行:母音「あいうえお」+⑤の点  点字省略  らりるれろ p20  ★数字の点字  数字を書く時は1マス目に数字をあらわす記号の数符(すうふ)(③④⑤⑥の点)をつけて、2マス目以降(いこう)に数をあらわす点字を書きます。  点字省略(校正者注:数符が記載)  点字省略(校正者注:1~9,0の数字が記載)  イラスト省略(校正者注:人物のイラストに「数符や外字符がないと、「1 2 3 」、「あいう」、「ABC」が同じになってしまいます!」の吹き出しがある。)  ★アルファベットの点字  点字省略(校正者注:A~Zと1~0の点図が記載)  ・アルファベットの場合は外字符(校正者注:「外字符」ハイライト)をつけることで区別する。  例:1m  点図省略(校正者注:数符1外字符mが記載されている)  ・大文字を表す場合は、大文字符(校正者注:「大文字符」ハイライト)を入れる。また全部大文字で書かれている場合は、二重大文字符といって、大文字符を2つ続けて入れる。​  例:DVD  点図省略(校正者注:外字符 二重大文字符 D V Dとある。) p21   ●点字のきまり  Check! わかち書きとは?  語と語または文節と文節の間に空白を置いて書くこと。また、その書き方。  例)墨字の文章 「裏庭に赤い花が咲いた」      ひらがなですべて書くと 「うらにわにあかいはながさいた」  このまま点字にして並べると読みづらいので、点字にする時は文節が分かるように、1マス空けて表記する。         「うらにわに  あかいはなが  さいた」  例)〈どこがちがうのかくらべてみよう〉  日本点字図書館(にっぽんてんじとしょかん)  ○ 点図省略(校正者注:点字が記載されているが、「にっぽん」「てんじ」「としょかん」と間に空白がある。また点字に向かって「にっぽん てんじ としょかん」のコメントの矢印がむいている。)  ✕ 点図省略(校正者注:点字が記載されている。点字の間にスペースがない。)  ・助詞の「は」「へ」は、発音どおり「ワ」「エ」とする。(校正者注:「・助詞の~とする。」ハイライト)  例)兄はやさしい(校正者注:「は」下線) ➡ あにわ やさしい(校正者注:「わ」下線) /  駅へ行く(校正者注:「へ」下線) ➡ えきえ いく(校正者注:「え」下線)  ・ウ列とオ列の長音のうち、「現代仮名遣い」で「う」と書き表す部分は、長音符の②⑤の点で表す。(校正者注:「・ウ列~表す。」ハイライト)  例)おとうさん(校正者注:「う」下線) ➡ おと―さん(校正者注:「ー」下線) / さんすう(校正者注:「う」下線)  ➡ さんす―(校正者注:「ー」下線)  ※ ア列の長音(例 おかあさん)は「ア」   イ列の長音(例 おにいさん)は「イ」   エ列の長音(例 おねえさん)は「エ」 と書く。  ※ 動詞の活用語尾は長音ではないので「ウ」と書く。      例)言う → イウ   / 結う → ユウ    出典:  ■点字のしくみ ― にってんキッズページhttps://www.nittento.or.jp/about/kids/braille.html  ■点・てん・テンジ「アルファベット(ローマ字)はどうかくの?」https://contest.japias.jp/tqj13/130030/tukuri/housoku3.html  いずれも最終アクセス2024年1月 裏表紙  点図作製マニュアル  発行日:2024年1月   作成:立命館大学 障害学生支援室  作成協力:小栗 弘毅