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04.04

PEOPLE

2017

比較文化の手法で、日本のこれからを予測する。


黒川 清登教授

担当科目国際経済機構論、国際経済協力論、開発経済学 など
研究テーマ地域経済の振興/民間セクターの活性化研究/災害に対する経済の強靱性(Economic Resilience)
主な研究経済成長と格差の是正に寄与する、地域経済開発のための研究。世界中に広がる都市と農村の経済格差の拡大に着目し、これを是正するための経済振興策はいかにあるべきかを国際的な事例の比較研究を踏まえて取り組んでいる。

意外性のある衝突がイノベーションを生む。

経済学を学ぶ最大の特長は、将来の変化を見通す能力を身につけられることです。法学が過去の判例や既に起きている問題の解決が得意なのに対して、経済学ではリスクやニーズを予測しこれから起こりうる問題についての対策を練ることができます。将来を語る見識のあるプランナーを育てるのが経済学部の役割です。

前を見るための根拠には、過去の事例や論文の研究も大事ですが、同時代の異なる地域の事例が新たな発見を引き出してくれることがあります。計量経済学という過去のデータから将来のトレンドを見る経済学もありますが、私が取り組んでいる開発経済学では国際比較研究の手法をとっています。それは、流行り動画のPPAP、まったくそのものなんです(笑)。「わたしたちは滋賀県のことを知っている♪ わたしたちはタイのことを知っている♪」、そのふたつをぶつけて考えるから高齢化社会の問題が見えてくる。意外性のあるもの同士を刺す(比較する)ことでイノベーションが起こるんです。
国内だけを観察しているエコノミストは気がつかないんですけど、海外の課題に類似性が見いだせるものです。国際協力機構(JICA)での経験を生かして、そこに着目して比較研究しているのが私の特徴といえるでしょう。

同時代のタイの事例が、湖北にとってヒントになる。

開発経済学のコアは、富をどう公平に分配し、社会がどう成長していくかに尽きます。ただしこのふたつを並行して考える必要があります。なぜなら成長を考えずに分配のゆがみを直そうとすると「累進課税をもっと厳しくする」のように強制的な方向に進み、毛沢東の失敗のように社会的混乱をきたすだけになります。富裕層が生み出す成果が経済成長を引き出していることを利用しつつ、その富の偏りをいかに分配して是正していくか。その対策を考えるのが経済学のエッセンスだと学生に常に話しています。

いま世界中で都市部と農村の経済格差拡大が問題になっています。アメリカでもタイでもラオスでも、農村から都市部に人が流出しています。それは滋賀県湖北も同じです。いまは東京との経済格差が2倍程度で、「土地代や物価を考えれば地方で暮らすのもいいよね」と考える人が多いので大きな社会問題にはなっていません。しかしこの格差が現在のタイのように7倍になれば、日本も非常に危うい状況になるでしょう。
韓国では人口の半数以上が既にソウル一極に集中しています。2030年までに「ラピッド・アーバニゼーション(急激な都市化)」が進み、世界全人口の68%が都市部に住むようになるだろうとも言われています。農村部の高齢化問題、孤独死、空き家問題などが深刻化します。それは既にタイの東北で起きていることです。農村の家に取り残されるのは男性よりも平均寿命が長い女性の方です。つまり高齢化社会問題はジェンダーの問題をも含んでいます。
このように、国内だけを見ていたら気づかない問題を、国際比較によってあぶり出すことができるのです。

本学にはグローバリゼーションの動きを敏感に感じ、海外のフィールドで積極的に学ぼうという姿勢の学生が多いと感じます。しかし国際貢献や途上国援助に携わりたい学生だけでなく、国内の地方自治体やインバウンドの取り組みでも比較研究の考え方は大きく役立ちます。みなさんには、大学時代に広い視野と豊かな英語コミュニケーション能力を身につけてもらえたらと思います。

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