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08.04

NEWS

2021

寺脇ゼミで研究成果報告会を開催しました

 私たちのゼミでは、春学期の授業期間終了後の7月26日に、「演習II」の中で取り組んだ研究成果を発表し合う研究成果報告会を開催しました。昨年度末に全員でテーマ案を出し合い、その中から以下の4つのテーマを選んで、この春学期にグループに分かれてそれらの研究活動に取り組みました。


・大豆ミートに対する支払意思額と環境・健康・食味情報提供効果
・エシカルファッションの構成要素に関する消費者選好分析
・グルテンフリー・スイーツに対する消費者評価とその市場拡大の可能性
・歴史地域における町家・古民家カフェの価値評価―金銭評価と時間評価―



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今回私たちが得た研究成果は以下のように要約されます。

・普通の牛ミートバーガーを基準としたときの大豆ミートバーガーに対する追加的な支払意思額の平均値は、大豆ミートの健康増進効果を情報として与えることで、情報提供前の-33.4円(基準価格の-22.3%)から-9.8円(基準価格の-6.5%)に上昇し、さらにその環境保全効果を伝えれば、支払意思額は-1.8円(基準価格の-1.2%)まで上昇して、両者はほぼ無差別になる。しかしながら、大豆ミートの食味情報を与えると、その支払意思額は情報提供前の水準にまで低下するため、その普及に向けては食味の改善が必要だといえる。

・綿と羊毛からなるセーターを事例に、エシカル商品を構成するフェアトレード、オーガニック素材の使用、リサイクル素材の使用、動物福祉への配慮の4つの属性の価値を金銭的に計測したところ、動物福祉への配慮が2857円(基準価格の57.1%)と最も大きく、ついでオーガニック素材が2245円(基準価格の44.9%)と2番目に大きな値を示した。一方で、その他の要素はゼロと有意差がない結果となり、エシカル消費における人々の関心は、動物や生態系など人間以外の対象に向かいつつあることがうかがえる。

・米粉バームクーヘンに対する追加的な支払意思額の平均値は、グルテンフリーを支持する理由を伝えることで68.3円(基準価格の6.8%)から214.0円(基準価格の21.4%)にまで上昇するが、支持しない理由を与えると、その金額は35.2円(基準価格の3.5%)にまで低下する。この結果は、情報の偏在による市場の歪みを是正する上で、中立な情報の提供が重要であることを示唆する。一方で米粉バームクーヘンの食味情報を与えると、その支払意思額は大きく上昇し、普通のバームクーヘンとの間の実際の価格差とほぼ等しくなる。

・歴史的な街並みの中にある「和」のカフェの要素として、町家・古民家、和風の近代建築、和スイーツの提供、和食器による提供の4つに注目し、それらの価値を金銭的に計測したところ、町家・古民家が最も大きく、ケーキセットの価格でみて492円(基準価格の36.4%)となった。これは、文化財保護の観点から町家や古民家をカフェとして活用することの意義を定量的に示すものである。また町家・古民家カフェを訪れるのに犠牲にできる時間を金銭換算した値は492円を下回る結果となり、それは人々が歴史的町並みを抜けてそのカフェを訪れることにプラスの価値を見出すことを含意する。


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報告会では、秋学期から新たにゼミに参加する2回生を招き、40人を超える参加者の中で、各グループがそれぞれの研究成果を報告しました。質疑では、3回生はもちろん、2回生からも鋭い質問が飛び出して、活発な議論が展開されました。報告会後のアンケートでは、3回生からは「初めて自分たちで調査から結果までを出す研究をやって、やりがいを感じた」「自分のプレゼン力の到達点を確認することができた」「発表内容だけでなくその背景も詳しく調べて、より深い知識を備えておくべきだった」など手ごたえや反省の声が聞かれ、2回生からは「1年後は先輩達に負けないような研究報告ができるようになりたい」「データをもとにしっかり分析されているのがすごいと思った」「来年の今頃はこうなっていなければいけないんだということがわかって、今後のゼミ活動のモチベーションになった」など前向きな感想が聞かれました。双方にとって意義のある充実した時間を過ごすことができたように思います。



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これから私たちは、上記のグループで得た成果をもとにして、個人で論文を仕上げ、論文集の形でまとめる予定です。そして、秋学期からの「演習III」では、それらの成果を発展させた地域連携型のプロジェクトを立ち上げ、その実践に取り組むつもりです。引き続きゼミ全体で協力して、地域の発展に資するような研究成果をあげたいと思います。


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経済学部3回生 吉田拓人

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