そのほかの「パソコンを活用した英語独習法」

                                野澤和典(豊橋技術科学大学)

これまでとは一味違った英語学習や英語圏文化を理解する方法の一つとして「インタ−ネット」や 「マルチメデイア教材」の利用が考えられます。しかし、実際には、モデムや専用回線を使って自宅に 「インタ−ネット」接続し、英語学習を目的としたホ−ムペ−ジにアクセスしたり、世界各地に散在す る有益なデ−タベ−スを活用したり、高価なマルチメデイアCD-ROM英語教材を購入して学習できる人 たちの数は少ないのではないでしょうか。ここではすでにあるコンピュ−タとソフトウエアを有効利用 する英語独習法の幾つかについて紹介してみます。但し、コンピュ−タはマッキントッシュを基本とし たものですので、DOSやWindowsを対象にしたものではないことをお断りしておきます。もちろん、 これらについても同じようなソフトウエアがありますので、ご心配なく。

まず、キ−ボ−ド操作を修得するためのタイピング・ソフトの利用が考えられます。タイピング技能 を修得できることは言うまでもなく、ソフトウエアによってはゲ−ムで遊びながら英単語のスペリング を確実に覚えられる方法もあります。例えば、Typing Tutor IVでは、いわゆるインベ−ダ−・ゲ −ム式に、上からランダムに落ちてくる文字や単語のスペリングを正しくキ−ボ−ドで打つと、それら が打ち落とされるというゲ−ムが含まれており、タイピング能力が上がれば、そのスピ−ドにも慣れ、 高得点が取れるようになります。まさしく遊びながら英単語のスペリングを修得する面白い方法の一つ と言え、結構夢中になってしまいます。

次ぎに、ビジネス用ソフトウエアとして人気の高い表計算ソフトの1つMS-Excelやカ−ド型デ−タ ベ−ス・ソフトの1つファイルメ−カ−Pro等を利用して、自分だけのデ−タベ−スを作成し、それを 英語学習に役立てることも可能です。例えば、定期購読している英字新聞や専門英文雑誌等の好きな、 あるいは取っておきたい記事や、文学作品等のペ−パ−バックを読みながら、難解な語句をワ−クシ− トやデ−タ・ファイルに入力し、それらの意味や用法も書き入れ、分野ごとの専門用語集やイデイオム 集を作成して語彙・表現をまとめることもできます。デ−タそのものはランダムに入力しても、「検索・ ソ−ト機能」を利用すれば、アルファベット順等に簡単に並べ替えられ、大変便利です。日本人として 知っておくべき日本の文化や伝統に関する英語について、覚えにくい語句集を作った場合は、図1また は図2のようになります。

図1:MS-Excelを利用した場合 (省略)

図2:ファイルメ−カ−Proを利用した場合 (省略)

とかく自文化である日本文化について英語でどのように表現されているのか、あるいはどのような表現 が適切かつ分かり易いか等を十分に理解していない場合が多いので、こういった自分だけのデ−タベ− スを作っておくと、突然外国人に尋ねられた時や友人・知人との英会話の中で文化比較をする時の参考 になるのではないでしょうか。

さらにはまた、最近の英語辞書作成の基本資源となりつつあるコ−パス(Corpus)的発想を持ち込むこ とも考えられます。コ−パスとは、英語母語話者の書き言葉(文)あるいは話し言葉(音声)を収集し、 利用しやすく加工した膨大なデ−タベ−スのことです。それらを利用すれば、非英語話者である我々日 本人英語学習者であっても、英語母語話者特有の用語やニュアンスの異なる表現の使い方を理解できま すが、膨大しすぎて一般的ではありません。そこで身近なものとして考えられます似たようなものとし ては、自身が書いたもの(作文)を種々の文法レベルからチェックするためのソフトウエアGrammatik IVを使って、一つひとつ詳細な文法項目を復習する方法や、フリ−ウエアとして入手可能なコンコ−ダ ンス作成ソフトウエアConc 1.76を利用して、作文ファイルを読み込んで、どのように語句や文法項目を 使っているか等の分析をしながら、英語の再学習に役立てることも可能です。但し、文法をチェックす るソフトウエアの信頼性はどうかというと、英語母語話者用にもともと作られている関係で、非英語母 語話者の学習者用ではありませんので、それらの機能のうち、約25%くらいのものが有益であると言わ れています。日本人英語学習者が弱いとされる冠詞(a, an, the)等、ごく基本的なものをチェックするに は有効なソフトウエアと言えます。以下は、ある英作文の一部での語句の使われ方を再認識する例です。

図3:Conc 1.76のWord Concordance機能を使った場合 (省略)

学習者自身のコンピュ−タにすでにインスト−ルされているソフトウエアや、簡単に、あるいは安価 に入手できるソフトウエアを有効に利用すれば、各自の目的にあった英語独習に役立つものが結構見つ かります。読者諸氏も自分だけのデ−タベ−ス作りを兼ねて、そういったソフトウエアの活用を考えて みては如何であろうか。


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本稿は『英語をモノにするためのカタログ'97』アルク、1997年2月、pp. 221-222に掲載されたものである。