インタ−ネット利用の異文化・自文化理解

野澤和典(豊橋技術科学大学)

はじめに


日本でも1995年は、まさしく「インタ−ネット(The Internet)」が爆発的に広まった年であり、1996年は「イントラネット(The Intranet)」中心のインフラ構築が一歩進んだ年であった。さて、1997年はどうなるのであろうか。さらなる情報化社会への移行は進むに違いないが、教育界も徐々にその影響を受けつつ、変革を余儀なくされていくであろう。筆者の関係者にもネットサ−ファ−たち(Netsurfers)が増え、通常のコミュニケ−ション手段に電子メ−ル(E-mail)、専門的な研究情報や意見の交換にメ−ルリスト(Mail-list)、研究成果の情報公開の手段にWWW(World Wide Web)などが当たり前となりつつある。そんな状況下で、インタ−ネット利用の異文化理解に役立つ情報源としてWWWから2つの例だけであるが、簡単に紹介してみよう。

世界旅行が簡単にできてしまう仮想旅行者(Virtual Tourists)になろう


インタ−ネットで現在最も急速に発展を遂げていると言っても過言でないWWWでは膨大なデ−タベ−ス(情報源)が世界各地に散在している。その中で異文化理解に役立つ場所の一つにVirtual Touristというホ−ムペ−ジがある。テキストだけの情報を得ながらという方法でも可能だが、分かり易いのはやはり地図から入っていく方法である。以下はそのVirtual Tourist II (http://www.vtourist.com/vt/)というホ−ムペ−ジで、訪問したい場所をクリックすれば、どんどん大陸→地域→国→市へと狭まっていき、最終的なデ−タベ−スがあるサ−バ−から公開されている必要な情報が得られる。旅行をする前の情報収集や「もっと知りたい」世界中の市町村や異文化についての情報が簡単に得られるのである。日本にいて仮想世界旅行ができる楽しいサイトである。

WWWプロジェクトを通して自文化を理解する


平成8年度の1〜2学期間(約20週)の大学院修士課程の授業の一つを通して、筆者が住む豊橋市及びその周辺に関するホ−ムペ−ジ作り(Toyohashi - A Great Local City)に取り組んでみた。その主たる目的は、英語学習を兼ねた自(地方)文化理解の促進であった。当初、予想以上の履修希望者が集まり、予定していたCALL (Computer Assisted Language Learning)ラボでは希望者全員の参加が不可能になったため、抽選で50名の履修者に制限した。バランスを考慮して9つのグル−プに分け、前もって用意したテ−マを選択させ、学習者中心の授業を展開した。筆者は、必要最低限の、しかし英語での情報提供と実践指導をした。基本的には、グル−プ内の共同・個人作業を重視した自主的なホ−ムペ−ジ作りが中心の活動となった。彼らの集大成は、筆者によって修正や改訂が加えられず、未保証ながら、すでに公開されているので、是非ともご訪問して感想をいただければ幸いである。アドレスはhttp://www.lc.tut.ac.jp/project96/index-j.htmlである。豊橋出身者は少なかったため、学生達は数年住んできた豊橋市について学ぶことができた上、英語でどのように表現するかといったことも学び、自(地方)文化理解に大いに役立ったとコメントしている。世界的にほとんど知られていなかった地方都市も今や世界に向けて情報を発信しているのである。

おわりに


上記の例は、膨大なインタ−ネット利用方法のほんの一例に過ぎない。クラスあるいは個人単位でテキストを基本し、電子ペンフレンド(E-pal/Electronic Penpal)として相互交流をしたり、CU-SeeMeなどを利用し、音声や画像を介してインタ−ラクテイブにコミュニケ−ションをするTV会議など、ネットワ−ク環境が十分整っていれば、これまでにできなかったスタイルの異文化理解ができる。読者諸氏もアナログの世界ばかりでなく、デジタルの世界であるCyber Spaceへ飛び込んでみては如何であろうか。
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<注>本稿は浜松英語研究会の年次報告書に掲載されたものである。