1996年度外国語教育セミナ−(第2回CALLワ−クショップ)

はじめに


本センタ−では、過去11年間にわたり、語学教育のシンポジウムやより専門的なワ−クショップを開催し、全国の大学、高専、高校等の複数の研究領域にまたがる語学担当の先生方と議論を重ねてきた。12年目を迎えた平成8年度は、テレビ会議システムや多くのマルチメデイア関連ソフトが加わり、さらに充実したCALL (Computer Assisted Language Learning)ラボ等を再度利用し、平成7年度に引き続き、語学教師に有益なインタ−ネット利用の語学教育、WWWホ−ムペ−ジの作成法、コ−パス研究とオンライン情報源の効果的な活用方法を修得する「CALL入門」と、基本操作、ワ−プロ、プレゼンテ−ション、教材開発を集中的に学習する初心者のための「Windows入門」という同時進行スタイルのダブル・セミナ−で第2回CALLワ−クショップを開催した。

セミナ−1に対する参加申し込みは、前年同様、参加者公募をしてほぼ2週間で募集人数を超え、心苦しくもお断りするケ−スもあった。参加者は、例年のことながら、北は北海道・東北、南は九州・中国・四国からあり、セミナ−1に48名、セミナ−2に10名であった。専門分野も英語教育、ドイツ語教育、フランス語教育、日本語教育、計算機工学などと多岐にわたり、異分野交流が再度実現した。唯一残念であったことは、早々と参加申し込みをしたにも拘らず、病気や災難で不参加となった方が2名いたことであったが、これは不可抗力につき致し方ない。

語学センタ−長の挨拶と講師陣及び協力者の紹介をした別棟での合同開会式後、各セミナ−毎に会場を移し、各ワ−クショップが開始された。


セミナ−1の概要

第一日目最初のワ−クショップ1「インタ−ネット利用の語学教育(ネットワ−ク・コミュニケ−ションの実践)」では、尾関修治先生(中部大学)が自分のホ−ムペ−ジに準備したオンライン資料(http://langue.hyper.chubu.ac. jp/ozeki/tut96.html)を提示しながら、インタ−ネットを利用したコミュニケ−ションと語学教育での利用方法について議論を提供した。コミュニケ−ションがリアルタイムに進むのか、文字が中心か音声や画像が中心かという分類をして解説した。「非同時・文字」の例として、メ−リングリスト、ネットニュ−ス、WWW、「非同時・音声」の例として、音声ファイルの転送、「同時・文字」の例として、IRC(Internet Relay Chat)、MOO、「同時・音声+画像+文字」の例として、RealAudio、CU-SeeMe、QuickTime Conferenceを挙げながら、それらの具体例を概説した。

次に、ワ−クショップ2「HTML入門とホ−ムペ−ジの作成」では、朝尾幸次郎先生(東海大学)が用意周到な準備で担当し、分かり易い資料と説明方法で聴衆を魅了させた。次に、「WWWを使ってみましょう」でナビゲ−タ−の基本操作を、「WWWのしくみ」でHTML (HyperText Markup Language), HTTP (HyperText Transfer Protocol)及びブラウザ−(Brouser)の概説をした。さらに、あらかじめ用意されたフロッピ−・デイスクの中にある各種ファイルの解説とそれらの読み込みをして表示させた。そして、「練習問題」のセッションに入り、内容の置き換えや応用技法を学びながら、自分のホ−ムペ−ジ作りに挑戦した。参加者の中には、セミナ−後、ホ−ムペ−ジ作りに挑戦しているという報告をしてくれた方々がいたので、大変実践的なワ−クショップで好評を得た内容であったと言えよう。

第二日目最初のワ−クショップ3「第二言語学習者のデ−タベ−ス(コ−パス)構築と研究方法」では、投野由紀夫先生(東京学芸大学)が、まだ研究分野として新しい世界ではあるが有益なコ−パス研究の方法を具体例をふんだんに示しながら、「コ−パスとは何か」、「一般のコ−パスと学習者コ−パスの違い」、「コ−パスの検索ツ−ル紹介」、「学習者コ−パス構築の実際」というトピックのもとで、基礎と応用を概説した。世界各地に散在するデ−タベ−スとしての英語母語話者コ−パスとは異なり、日本人英語学習者コ−パス作りへの挑戦についても呼びかけがなされたが、今後膨大なデ−タベ−スが日本でも構築されていく予感を感じざるを得なかったワ−クショップと言える。

最後のワ−クショップ4「英語教育・言語学・コミュニケ−ション分野におけるOn-line Resourcesの活用」では、北尾謙治先生(同志社大学)が、英国ランカスタ−大学での在外研究中(1995-96)に構築したOn-line Resources (http://ils.doshisha.ac.jp/users/kkitao/online/)をWWW上で提示しながら、それらの背景、特徴、検索方法、整理方法などを概説した。インタ−ネット上の膨大な資料をいかに役立てるかも語学教師にとって情報収集の一環として大切であり、世界に向けての積極的な研究成果の公開の必要性を改めて考えさせられたワ−クショップであったと言えよう。


セミナ−2の概要


セミナ−2「初心者のためのWindows入門」は、亀山太一先生(岐阜工業高等専門学校)が一人で担当し、事前調査(http://www.lc.tut.ac. jp/lc/jizenchosa96.html)で参加者のレベルを把握し、二日間にわたり孤軍奮闘した。最初にキ−ボ−ドに慣れるためにタイプ・ソフトを利用して練習したり、マウスの使い方やアプリケ−ションの起動の仕方などといった基礎的な技能を修得する訓練をした。次に、Windows付属のアプリケ−ションで「文章」や「イラスト」を作ったりした。さらに進んで、インスト−ルされているMicrosoft Officeを利用し、ワ−プロソフトのWordで図、グラフ、罫線などを取り組んだ「書類」の作り方を学んだ。続いて、学会や授業で利用できるプレゼンテ−ション・スライド資料の作成をPowerPointで行う方法を学び、最後にそれら両方を活用して、授業でできる教材作りに挑戦した。参加者の中にはパソコンに不慣れな方もおり、四苦八苦しながら、努力を重ねていたようであるし、「習うより慣れろ」と言った教訓が身に滲みた経験が出来たことと思う。

おわりに


今回のセミナ−は、前回と異なった内容ではあったが、二つのセミナ−に少し拡大し、しかも同時進行で実施するというスタイルにした。その点で何かと行き届かなかった点も多かったであろうと推測している。忙しい時期に遠方よりかけつけていただいた参加者各位に紙面を借りて再度お礼を申し上げたい。両セミナ−参加者へのアンケ−ト調査結果(http://www.lc.tut. ac.jp/lc/seminar96quest.html)などから判断すれば、概ね成功裡に終えたと言える。企画運営を担当した者として責任を果たせたことの喜びを感じざるを得ない。前年度に引き続き、今回も東京本社及び名古屋営業所のソニ−(株)マルチメデイア推進課、日本電子計算(株)名古屋営業所、教育産業(株)豊橋営業所、洋販出版(株)、アルク(株)の関係者諸氏には多大な協力をいただき、講師陣及び本学関係者を含めて、改めて感謝の念を表したい。平成9年度の企画は未定であるが、さらに充実したセミナ−が企画されることが求められているようである。(文責 野澤和典)