一教員から見た職員に望む能力・力量について

野澤和典(経済学部)
1.はじめに
 立命館大学教職員組合青年部のこれまでの取り組みについては、資料(1999年度の「青年実態調査アンケ−トまとめ」「青年部アピ−ル第5号」「BKCグル−プアピ−ル」「青年部春闘総括」)から、その活発な活動状況が理解できると共に問題点が幾つか浮き彫りにされてきている。それら資料を基本として上記標題の視点から考えていくこととする。

2.職員の能力・力量レベル

 職員の能力・力量レベルについては、一般的な企業のホワイトカラ−・ワ−カ−を基準としているが、中央職業能力開発協会(JAVADA) http://www.javada.or.jp/の能力開発マトリックス及び認定基準が、必要される学習内容、程度によって上級、中級、初級の3段階のレベルに分けていて、参考になるであろう。各職員がどのレベルに属するかは、各自が判断していただくこととする。

3.一教員から見た職員の能力・力量について
 あくまでも勤務年数の短い一教員であり、狭い人間関係と限られた教育・研究活動及び組合活動を通しての経験を踏まえた「個人的な感想・意見」であることを考慮していただきたい。まず、現況を分析すると、
 (1)大学の規模、学生数、それに対する職員数などを考慮しても一人ひとりに課された業務量は非常に多く、セメスタ−中は特に学生への対応業務に追われ、サ−ビス残業を含め、日々厳しい労働条件下にあり、致し方ないことであるが、教員側が求めることに十分かつ迅速に対応できていないことが時々生じてきている。
 (2)適材適所という点からの職員の配置がきちんとされているかどうかは疑問に思うケ−スに出くわす。即ち、職務内容を十分に理解していない状態で対応してくれるので、逆に混乱・ミスなどを生じさせる種のものである。しかし、これはBKCでの新展開実践における新人職員の配置あるいは経験者不足という点から生じた問題でもあり、次第に解決していくのかも知れない。
 上記(1)(2)に状況にあっても、結果としては、経験豊かな上司レベル者の迅速且つ的確な補助行動あるいは、各自の自助努力によって、ほとんどのことが解決できるレベルに達してきていると思う。それだけ、各職員の基礎的能力・力量は高いものと判断できるが、さらにスム−ズに遂行できる能力の向上(スペシャリスト/プロフェッショナル化)に向けて、種々の研修制度を有効に活かした自己研鑚活動に取り組む必要があろう。

4.研修制度について
1999年春闘において、理事会側は以下のような回答を示した。
「研修制度全般に関しては、実務等の基礎に関わる研修の強化(1〜3年目)、部門別  専門能力量を高めて行くための研修(3ステップ)、中堅・課長補佐層のマネ−ジメ ントを中心とした研修、指名による研修、などに重点をおいて組合との協議も踏まえ ながら検討をを進めていきたい。また個人研修費のあり方(見直しを含む)についても検討する。」(青年部アピ−ル第5号、3ペ−ジ)  また、同号4ペ−ジでは、アンケ−トの結果分析から、 48%の回答者が不足している力量を「自助努力」で補い、自己の能力向上に高い意欲 を持っていることを示している一方、現行研修制度の不十分さも示す結果であるとしている。また、実施してほしい研修についても、「フォロ−アップ」19%、「課題別業務研修」29%とあり、青年部の指摘通りという。
 採用時における職員としての資格・能力についての明確な基準などの情報が手元にないため、「理想的な職員像」というものが具体化できない。しかし、春闘'99での取り組みのように、
(1)学園創造を高度に実現する力量として、
 ア)全ての職員が必要とする基礎的な力量は何か、
 イ)それぞれの部門で必要な力量は何か、
 ウ)具体的スキル(パソコンの使い方、語学能力等)といった視点から明らかにし、その力をいかに身に付けていくか、
(2)学園の将来像を描く基礎力量としての、高等教育情勢に対する認識をいかに深めていくか、
(3)これら(1)(2) の能力を融合させながら、どう実現していくかという企画立案能力をどう身に付けていくか、 という目標の設定で研修制度を考えていく必要があると主張している。
 具体的な研修としては、 (1)では新人研修、フォロ−アップ研修、 (2)では部門別研修、課題別研修、 (3)では、外部機関、通信教育 を利用して行うとある。
 「BKCグル−プアピ−ル」(1999.6)でも、BKCにおける教学・研究の一層の内実化・高度化に向けて、創造性やマネジメント能力を含め、さらに多様で高度な力量を身に付けていくことが自分たちの課題であることを指摘している。また、21世紀の学園創造の担い手として、
(1)配属されたそれぞれの部門においてスペシャリストとしての力量を身に付ける、
(2)学園やキャンパスの中での業務の有機的つながりを理解し、広い視野に立って業務創造をしていける、
(3)それぞれの経験や個性を活かして、その能力を伸ばす(学外機関への研修・派遣の利用を含めて)など、
 段階を経て、青年層が確実に力量形成することのできる体系的な研修政策の確立を求めている。

5.よりプロフェッショナルになるために

 ここでは、筆者の専門的な立場から、上記(1)ウ)を考えてみよう。即ち、学園創造を高度に実現する力量として、具体的スキル(パソコンの使い方、語学能力等)をいかに身に付けていくかという視点からである。
 コンピュ−タ&ネットワ−ク・リテラシ−については、ほとんどの職員が電子メ−ル、ワ−ドプロセッサ、統計処理ソフトなどを使いこなしているものと推察できるが、問題はコミュニケ−ション・ツ−ルとして十分に活かして業務を遂行しているのかどうかという点である。現行のATSON-Iシステムの中のBBSはもとより、立命館学園ホ−ムペ−ジを利用して学生や教員に周知徹底し、相互コミュニケ−ションを活性化する必要がある。そこで問題なのが、広報活動の不備か、BBSなどが有効に利用されているとは言えないと同時に、現ホ−ムペ−ジ上には各教務センタ−なども存在せず、その結果、どこに連絡をすればよいかなど不明であり、情報化社会での高等教育を携わる組織にとって大変お粗末な状態であり、それらを早急に改善する必要性があるが、改善後に設置される連絡網で各人が即座に対応できるようにしておくことが求められよう。また、各部門ごとのホ−ムペ−ジも立ち上げ、各自の担当するする業務内容について、新規作成や修正をする情報の維持管理能力もこれから必要になってくるであろう。
 さらに、とかく会議が多いせいか、その結果として資料としての文書量も自然と多くなる。資源の有効利用と節約という観点からは、もっとデジタル化して、ペ−パ−レスを実現する必要があり、そのための最新機器類の導入は不可欠であろう。特に回収する資料などは、大画面に示しながら説明すればよいのであるから。教員に渡すもの(例えば、出張旅行などの提出書類)の選択肢としてファイルを内部関係者のみアクセスできるデ−タベ−スサイトから必要な時にダウンロ−ドできるようにしてほしいものである。また、学生側への連絡も電子掲示板(現行の紙ベ−スの掲示板ではないもの)を利用して学生たちへの連絡をするシステムも導入すれば、効率良いコミュニケ−ションができよう。こういったことに対応する能力は日々の研修で修得できるであろう。
 語学(外国語運用)能力については、これも各人がどれほどの能力をもっているのか不明なので、これまでに経験してきたことから判断すると、本学出身者も含め、著名大学出身であっても、「話す」「聞く」を中心としたオーラル・コミュニケ−ション能力は相当持ち合わせていると思える。しかし、いざ「書く」能力についてはかなりの研修を経ても、なかなか良い文章は書けないのが実情であり、それよりは経験豊かな教員(ネイテイブ・スピ−カ−教員も含む)にチェックしてもらうことをせずに、お粗末な表現やミスを含む文書などが出てくることがある。従って、総合的な能力を必要とする語学については、日々自己研鑽をする必要があり、そのための研修費補助制度が不可欠である。
 さらに、もう一つ必要なのが異文化人間としての能力・力量である。即ち、留学生をはじめ、外国人教員、内外からの訪問者(即ち、ストレンジャ−)に対して、文化相互主義に立つ異文化コミュニケ−ション能力(Intercultural Communication Competence)が持ち合わせている必要がある。具体的には、日本文化の三大下位文化でもある関東文化、中京文化、関西文化なども含めて、異文化圏からの人々とのコミュニケ−ションが偏見なしに対等の立場でできることが重要である。言語差、経済差、教育差、性差などあっても、それはお互いのコミュニケーションを阻害する要因となってはいけないのである。そういった異文化人間としての基礎的な能力も疑似体験できる研修会等への参加や、日々関連書物を読むことによって修得できるものである。 Just a piece of my ideas for you!