第8章 サンシャイン・コ−スト(Sunshine Coast)への日帰り観光バス旅行



 平成7年12月下旬から平成8年1月初旬にかけて再度の渡豪をし、ゴ−ルドコ−スト(Gold Coast)に滞在した際、現地の友人に誘われ、初めての日帰り観光バス旅行を経験した。行き先は、それまで行ったことのなかった太陽の光が輝き白い砂浜の海岸など未だそれほど俗化されていない自然環境を持つサンシャイン・コ−ストであった。サンシャイン・コ−ストはクイ−ズランド州の州都であるブリスベ−ンの北約110kmのブライビ−島(Bribie Island)から始まり、カランドラ(Caloundra)、マロ−キド−ル(Maroochydore)、ヌ−サ(Noosa)といった町を抜け、150km先のテイン・カン湾(Tin Can Bay)に至る美しい海岸地帯である。ゴ−ルドコ−ストのような華やかさはないが、大変海が好きで、純粋に海と戯れてゆっくりした時間の流れの中でオ−ジ−たちばかりでなく、外国人旅行者も滞在生活を楽しめる人気の高いリゾ−トの一つである。

 サンシャインコ−ストと言ってもかなり広く、本来一日で観光などもできないのであるが、そこは短時間で主要な観光地を回ってしまおうという観光客対象のパッケ−ジ・ツア−がいろいろある。今回はクイ−ズランド州が所有・経営するコ−チトランス(CoachTrans)というバス会社の日帰りツア−に参加してみた。大人1名がわずか$45($1=\78 -->\3,510)、5歳以上の子供が$23(\1,794)という格安料金で参加でき、主要なホテルから乗り降りできるというものである。

 滞在中レンタルしていた車をバスタ−ミナルが隣接し、一日駐車しても$7(\546)くらいの格安料金で駐車しておける市営駐車場に入れ、そこから乗降した。ブリスベ−ンを経由して片道3時間半程かかるので、ゴ−ルドコ−ストの出発時間は朝6:45であったが、当然のことながら、バスの到着が遅れて7:05となった。市内の別の箇所とブリスベ−ンで数人づつをピックアップし、総数31名が一路北へと向かった。

 ブル−ス・ハイウエイ(Bruce Highway)を北上した後、途中別の道に入り、最初に出くわした光景はオ−ストラリア英語教材にもよく出ている、キャプテン・クック(Captain James Cook)が1770年に発見し名付けたというグラスハウス・マウンテン(Glasshouse Mountains)という高くはないが2千年前の火山活動の結果出来たという奇妙な形の山々を持つ国立公園であった。我々は通りながらの観光だけであったが、ハイキングコ−スもあって山歩きの好きな方にはお薦めとのことである。

 次にトイレ休憩も兼ねて数分立ち寄ったのは、開拓時代の名残のある建物の一つエタモガ・パブ(Ettamogah Pub)であった。パブで一杯というわけにもいかず、写真撮影とトイレ利用だけですぐに出発という慌ただしさであった。しばらく走った後、モ−ニング・テイ(morning tea)を楽しむという設定で立ち寄ったのが、世界最大の規模を誇る生姜工場(Ginger Factory)であった。新鮮なトロピカル・サラダ、生姜の入った数種類のアイスクリ−ムやソフト・ドリンクを味わうことができるが、我々はアイスクリ−ムとジンジャ−・ビ−ルというソフト・ドリンクを試した。味はまあまあであったと言えよう。ハ−ブやアンテイ−クなどの店もあり、馬車や蒸気機関車での遊覧観光もできたが、滞在時間の制約上出来なかった。また、生姜工場の見学ができるようになっているが、その日は停電のため、稼働している工場の見学はできなかった。さらに、ここには野生動植物を観覧できるブニャ公園野生動植物保護地域(Bunya Park Wildlife Sanctuary)もあり、時間があればゆっくり回りたい所であった。

 次に立ち寄ったのは、オ−ストラリア最大のパイナップル畑があり、様々なトロピカル・フル−ツを生産している地域にある観光名所の一つで112ヘクタ−ルの広さを持つザ・ビック・パイナップル(The Big Pineapple)で有名なサンシャイン・プランテ−ション(Sunshine Plantation)であった。ここでは熱帯農業、自然のままの熱帯雨林、美しい花が咲き乱れる庭、そして美味しい新鮮なフル−ツが堪能できる場所である。3種類の園内ツア−(Sugar Train Tour, Nutmobile Tour, Tomorrow's Harvest Tour)があるが、ここでも時間の制約上、Sugar Train Tourだけで、途中でパイナップルがどのように収穫され、生産されるかという説明を聞いた後、世界中から集められた様々なフル−ツの木を見ながら列車は走り、中間地点の駅に到着した。そこで下車し、子供のために触れる動物がいる場所へ行き、少し時間を過ごした後、歩いてレストランやお土産屋がある場所へ移動した。レストランでは、美味しい新鮮なパイナップル・ジュ−ス(Pineapple Crush)を飲んだのは言うまでもない。オ−ジ−たちは山盛りのトロピカル・フル−ツの上にアイスクリ−ムや生クリ−ムをのせたフル−ツ・パフェを好んで食べていた。Nutmobile Tourに参加すれば南半球最大規模のマカデミア・ナッツ工場の見学ができ、Tomorrow's Harvest Tourでは水栽培などのバイオテクノロジ−を駆使した農業について理解できるようになっているが、やはり滞在時間の制約上、それらには参加できなかった。次回の訪問で見学しようと思う。

 次に昼食を兼ねて訪れた所は「サンシャイン・コ−ストのリビエラ」と言われる高級海岸避暑地ヌ−サ・ヘッズ(Noosa Heads)であった。過去10年程で開発されたこともあり、幾つかのホテルを除いて、ほとんどの住宅や商店は木の高さ(2〜3階)の建物ばかりで統一されていて、新しいものばかりである。中心となるヘイステイング通りに様々な店やレストランがあり、ショッピングや食事が楽しめるようになっている。ここでも滞在時間の関係上、我々は気楽に選べるメニュ−があり、すぐに入手できる食堂街(food court)で、ピザやケバブ、中華料理など好きなものを食べた。

 食事が終わって、またバスの旅となり、未だ俗化されていない美しい海岸沿いの道を南下しながら、総合高級リゾ−トのハイアット・リ−ジェンシ−・ク−ラム(Hyatt Regency Coolum)ができて話題をよんでいるク−ラムの町を通り、約100年の歴史を持つ造船所を改築して造ったショッピング&レストラン・コンプレックスであるザ・ワ−フ(The Wharf)やオ−ストラリア最大の水槽を持つ水族館、アンダ−ウオ−タ−・ワ−ルド(Underwater World)のあるム−ル−ラバ(Mooloolaba)に到着した。ここでもわずか1時間10分の滞在時間しかなかったので、水族館だけを楽しんだ。水族館内は大きく8つに分かれており、最初に海の自然環境とアシカの生態を理解できるショウを見てから、それぞれのセクションを足早に見て回った。息子が一つひとつに目を輝かせたのは言うまでもないが、特に80mのトンネルを動く歩道に乗って、海の中に住む様々な生き物が間近に観察できるアンダ−ウオ−タ−・トンネル(Underwater Tunnel)が特に気に入り、2回も回って楽しんだ。

 ここでの見学が終わる頃はすでに午後4時となり、一路ブル−ス・ハイウエイを直走り、ブリスベ−ン経由でゴ−ルドコ−ストへ戻った。ゴ−ルドコ−ストでは激しい雷雨が出迎えてくれたが、車を止めてあった駐車場に到着する頃には幸いにも小止みになっていた。大変慌ただしい日帰りバス旅行であったが、初めて訪問したサンシャイン・コ−ストでもあり、次回は、ヌ−サの北にある世界最大の砂の島で、許可を得た4WDでしか行けないフレ−ザ−島(Fraser Island)も含めて、ゆっくりと宿泊をしながら自動車で回ってみたいと思っている。筆者にとって見知らぬ土地を訪れることは人生の楽しみである。皆さんも大いに未経験の土地への旅行を楽しんでみては如何がであろうか。


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