立命館アジア太平洋大学(APU)訪問研修に参加して

野澤 和典(立命館生協)

 まだ暗い早朝4時半に起床し、眠い目を擦りながら5時24分瀬田駅発の空席の多い電車に乗り、京都駅に着いた。八条口から6時発の空港バスに乗り込もうとしたら、すでに長い列ができていた。なんとか乗車でき、予定より少し早く大阪国際(伊丹)空港に到着し、サンドイッチとコーヒーの朝食を済ませ、出発を待った。これまでほとんど個人・家族旅行ばかりであったため、総勢80名という団体研修旅行は本当に久しぶりであった。参加者全員ほぼ定刻に集まり、出発となった。しかし、我々の団体の参加者数が多さも影響していたのか、観光シーズンの週末のせいか、搭乗機は満席状態であった。
 予定通り1時間ほどの飛行時間で大分空港に到着。初めての飛行機での大分入りであり、その空港の小ささに少し驚いたが、地方空港らしくていいのではとも思った。2台のチャーターバスに分乗しAPUへ向かい、10時半頃到着してみると、何やらパトカーが一台と高級車数台が止まっているではないか。カンボジアの皇太妃が訪問中とのこと。当日朝にアジア太平洋諸国9カ国14代表の要人が集まって、「都市環境フォーラム」があったことからも、その国際性の高い活動を肌で感じられた。

 到着後のお昼までの短い時間に伊藤昭副学長から歓迎の挨拶とAPU創設の歴史と現状の話を聞いて、学校法人立命館、大分県、別府市、そしてアドバイザリー・コミテを形成する内外の要人たちの全面的な協力を受け、周到な準備を経て、グローバル・スタンダードに立つ21世紀の高等教育の一モデルを提供するユニークな理念とダイナミックな教学システムに基づき開学したAPUの存在意義を理解することができた。
 その後、5つのグループに分かれ、APUの主たる施設(メディアセンター、スチューデントオフィス、ミレニアムホール、体育館、APハウス)を見学したが、短時間の計画では全てをゆっくりと見て歩くこともできず、また一番関心のあったメディアセンターでも1階のみで、CALLラボラトリーのある3階へ行く余裕さえなかったのが、残念であった。
昼食は食堂で好きなものを各自入手したが、土曜日に団体客が来ることは分かっていてもレジで長蛇の列ができてしまい、サービス体制がやや手薄であったことが暴露されてしまったのが残念であった。しかし、価格を抑え、ベジェタリアン向けのものを含むエスニック料理も積極的に取り組んで提供してきている姿勢は大いに参考になったのではないだろうか。昼食後、ショップを見て歩いたが、そこで思わぬ発見もあった。それは、人文・社会系の学部からなるAPUとはいえ、BKCショップと比較して、私の専門分野に関係ある書籍に魅力的な品揃えがされているではないか。思わず最新の書籍2冊を購入してしまった。
午後の研修では、まず初めに中上健一教学部長が、学習しなければならない環境を制度で保証するために、APUが挑戦する日本における高等教育改革の試みとコンセプトについて熱弁を振るわれた。筆者自身も「常に発展途上人たれ」という気持ちで日々を過ごしているので、特に新しい環境での「挑戦」は想像以上の時間と労力が求められる故に、そのエネルギッシュな活動に大いに感動した。次に、今村正治学生課長が、学生支援の実状や地域との連携について、具体的な資料を示しながら報告し、その交流や連携の大切さを改めて感じた。
 さらに、学生代表からの報告として、国内学生及び国際学生から2名づつ、生協職員代表として、店長とパート職員からあり、「生」の声を聞け、それぞれの問題提起や奮闘ぶりが伺えて有意義であった。
次に、分科会会場に場所を移し、6班に分かれて、各自の感想を入れた意見交換を行った。筆者は教職員及び生協職員のグループに参加した。その後、夜景の美しい風景を見下ろせる広い食堂で夕食交流会となった。忙しい中、食堂店長さんの用意してくれたエスニック料理を参加者一同味わったが、久しぶりに食するものものや初めて経験するものと、APUならではのもてなしに感慨深い交流会となった。
 第二日目は、会場を生涯交流センターに移し、分散会及び交流会が行われた。筆者は教職員グループ及び立命館生協グループに参加したが、それぞれ時間が短く感じるほど熱心な討議が行われ、大変有意義であった。その後、まとめと感想の全体集会を短いながらももって、今回の研修の意義を再確認した。
夕方の大分空港での待ち合わせ時間までの午後は各自フリータイムとなったが、実際数時間の余裕しかなく、タクシー相乗りで地獄温泉数カ所や竹細工伝統産業会館などを急ぎ足で回り、APUと親密な関係を持つ地元別府市の特徴を理解する一助となった。

 今回の研修は、短期間集中型のものであり、大集団での交流であったが、各分科会での討議は有意義なものであり、多くの示唆に富む内容であった。未来学者のアルビン・トフラーの言う「Learn, Unlearn, Relearn」をまさしく実行し、再確認した充実した研修旅行であったと言える。最後に、この企画を考案し、実行していただいた関係者諸氏に紙面をお借りして感謝致したい。


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