子供たちがプレゼントとして欲しがる携帯電話機

 技術革新の進む日本ならではの現象なのかも知れないが、ここ数年高校生や大学生など青年層の間で急速に普及してきた携帯電話・PHSが、ビジネスマンを中心の成人層に拡大し、さらにクリスマスや誕生祝いなどのプレゼントとして子供たちが希望するものの中にも入ってきており、若年層にも拡大しつつある。
 やや古いデータではあるが、回答者が全国の中学3年生1,778人と保護者1,743人 で、回収率がそれぞれ74.1%、72.6%であった(社)日本PTA全国協議会「子供の社会環境に関するアンケート調査(http://kenkyu.mukogawa-u.ac.jp/kyouiku/ks/shinbun/KS1932-3.htm) (教育新聞 第1932号)1997/11/27」」によれば、携帯電話などの通信機器に関しては、ポケットベルの所有率は5.8%、携帯・PHSは4.6%で、その使用料の負担はそれぞれ58.7%、69.5%が「保護者」だったという。最新情報が入手できていないので、推測の域を超えないが、ポケベルの所有率は極端に下がり、携帯・PHSは大幅に上がっていることと思う。
 この理由にはさまざまな要因が考えられる。友達が持っていて便利だし、その友達とのコミュニケーションを携帯・PHSでしたいといった時代の流行に乗り遅れまいとするような理由から、財政的に余裕のある家庭の子供がTVゲーム機を購入する感覚で買ってもらう場合が考えられる。まさに経済力の差というデジタル・デバイドの一面なのかも知れないが、何とも理解に苦しむ。また、バブル経済後の不景気の中で、両親とも(あるいは片親であっても)フルに働かなくてはならない生活環境を持つ場合、親子間のコミュニケーションをより円滑にするばかりでなく、非常時に備える目的で子供たちにも携帯・PHSを持たせている場合もあろう。実際、筆者の職場にもシングルマザーがフルに働いており、まだ小学生の息子に携帯を持たせ、頻繁にお互いの連絡に使っているが、これは致し方ない場合であろう。
 一方、気掛かりな点もある。携帯電話の電磁波に関して、世界中で携帯電話の使用が急増する中、ワシントン大学での研究(携帯電話から発せられる電磁波が脳に影響するか否か)が行われた結果、明らかに電磁波を流していないネズミよりも電磁波を流したネズミたちの方が、脳にある記憶力に重要なアセチルコリンの低下が原因で記憶力が悪いという。様々な事を記憶して成長していく子供たちに、携帯電話を持たせる事は、はたして良いのかどうか、疑問を持たせる研究成果とも言えまいか。しかし、電磁波を出しているのは携帯電話だけではないことも心しておかねばならないだろう。
 いずれにしても、子供に携帯・PHSを持たせるべきかどうかの判断は、各家庭の事情を第一に優先して考えられるべきものであり、日常生活での必要度が高ければ持たせても良いであろうし、新たなTVゲーム機やソフトを購入し、流行を追うがごとく感覚で与えるべきではないであろう。


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