偏りある内閣での政策がどこまで実行できるか

 地方党員と国会議員だけの自民党総裁予備選挙では、これまでの派閥選挙とは大きく異なり、小泉純一郎氏が予想を覆して圧勝した。しかし、これは自民党員の多くが、これまでの旧態依然とした派閥幹部の論理で自民党の政策が決められ、当選回数などの党への貢献度だけで大臣職を得た不適材不適所の集団政策などに呆れ果てた結果でもあり、連日マスコミでバブル経済崩壊後の経済建て直し政策や外交問題への不備などの問題点を取り上げられたことも大きな要因とも言える。
 対抗馬となった他候補者の構造改革への非積極性や過去の政策失敗も大きく影響したと思えるが、積極的な発言パフォーマンスで総裁本選挙も圧勝し、前内閣同様、保守党、公明党と連立して組閣した。しかも、今回はこれまでに無い数の女性議員や民間人の大臣登用が特徴でもあり、それ自体は大変良い。しかし、よく見ると、前内閣から留任した大臣も7人が含まれており、派閥を離脱した適材適所の形での組閣であったにも拘らず、偏りが見られる上、この方はどうしてなのかと思わせるほど専門家でない大臣も出現させてしまっている。フレッシュな方もおり、期待できることもあるが、果たして、それぞれにどれだけの実行力があるのか疑わしい。
 また、予想に反した展開で誕生したこともあり、時間的に無理であったのかも知れないが、小泉首相の主張する政策で構造改革や外交政策など具体的なビジョンと実施案がよく見えてこない。すでに不良債権処理などで多額の税金が使われてきているが、財政構造改革を実施するにあたって一体どういう負担をさらに国民に求めるのか。首相公選制などをする前に、改悪した国会議員選挙制度はどうするべきか。公私混同とも言える首相の靖国神社公式訪問を実行させるのか否か。教科書問題を契機に中国や韓国の反日感情を再び高まらせた文教・外交政策をどのような具体策で対応し展開していくのか。まだまだ不透明な面が多い。こういった不透明さを極力なくすことが小泉首相に求められていることではないか。
 しかし、その誕生のプロセスから失言問題に至るまで不人気の原因が満載であった前森首相の内閣とは好対照に、最初から現小泉内閣への支持率は80%前後と高い数字で推移しているようであるが、いつまでこのレベルの支持率が続くかは掲げた政策の実行力によるであろう。一国民として厳しい目で実行される政策を見ていきたいが、自民党内の多数派の影響も少なからずあり、多くの変化は期待できない。


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