2019年4月、桜が満開を迎え観光客で賑わう京都で、関西最大規模のよさこい祭り「京都さくらよさこい(以下、さくらよさこい)」が開催された。100チームが参加し、観客動員数は、過去最高の25万人となった。「目には見えない活力があふれだす、それがよさこいの魅力です」と熱い思いを語ってくれたのは、京都さくらよさこい実行委員長をつとめた設楽さんだ。15回目を迎えた今回のコンセプトは「舞い継げ、新たな時代へ」。「よさこいは、各チームの色が受け継がれている。この先も下の代に引継ぎ、新しい時代も輝いていてほしい」と、コンセプトに込めた思いを話す。

実行委員長としての覚悟

大学入学後、よさこいサークルに所属したものの、2回生になりテニスサークルを立ち上げるなど、他のことに注力していくうちに、よさこいから離れてしまった。しかし、よさこいが好きだという思いは捨てきれず、どのように関わっていけばいいのか悩んでいた。そうしたところ2回生の秋、よさこいサークルの先輩に「さくらよさこい」の実行委員をやってみないか、と声をかけられた。何かしらの形で、よさこいに関わりたいと思っていた設楽さんにとって、これ以上にないチャンスだった。

実行委員会は、関西の大学生18人が所属し、設楽さんは「これまで何かに熱中し、力を注いだことがありませんでした。『さくらよさこい』は、自分が責任を持ってやりたいと思えたことだったので、その思いからは逃げたくない」と実行委員長に立候補した。実行委員長として、大切にしていたことは、「一人で背負いこまず、いかに人を動かしていくか。そのためには、自分も率先して動き、『さくらよさこい』への思いを相手に伝えること」だ。共通意識を持つことで、目標に向かってみんなが同じ熱量で当日を迎えられるよう心がけていたという。

全国規模の大会に成長させるために

出場チームは関西のチームが多く、より全国から多くのチームに参加してもらいたいと考えていた設楽さんは、ただ参加依頼の連絡をするだけでなく、遠方からも参加しやすい態勢を整える必要性を感じていた。そこで、協賛企業である旅行会社と連携して宿泊先の確保や交通手段の確保がスムーズに行えるようにした。実際にそのプランを使って参加したチームもあり、「小さな一歩ではあるが、今後全国から多くのチームに参加してもらうための大切な一歩」と確かな手ごたえを感じている。

企業への訪問や営業活動、ラジオやテレビ番組での広報活動など、設楽さん自身もさまざまな活動に取り組んできた。準備を進めるうち、「さくらよさこい」が多くの人々にとって、思い出の機会であることを実感し、改めて「成功させなければ」という強い責任を感じていた。しかし、責任と同時に不安も強く感じ、不安に押しつぶされそうだったという。そして訪れた本番当日は、今までの不安を吹き飛ばすように、天候や桜の開花にも恵まれ、集まった多くの観客が踊り手の迫力ある演舞に見入っていた。設楽さんは岡崎会場の本部で、各会場の状況を把握しながら各会場に指示を出すなど、全体統括として2日間の祭典を見守った。

「さくらよさこい」を終え、「開催前の大きな不安が、今では自信につながりました。それによさこいへの愛着がさらに強くなりました」と晴れやかな笑顔を見せた。「これから歴史ある京都で、春の京都といえば、『さくらよさこい』といってもらえるよう、京都の風物詩になってほしいです」と語る彼の強い思いが、また次の代へと引き継がれていくことだろう。

PROFILE

設楽 拓さん

愛知高等学校(愛知県)卒業。テニスサークルLIBRE所属。環境教育に関心を持ち、桜井良准教授のゼミに所属。高校時代にテニスをはじめ、大学では、OICテニスサークル「LIBRE」を友人と共に立ち上げた。

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