2019年度全学協議会確認文書 本文書は、10月2日(水)に公開で開催した第1回全学協議会の議論を中心に、その前後を含め2019年度を通して協議した内容を『2019年度全学協議会確認文書』としてまとめたものです。本文書は3章で構成し、第Ⅰ章は「2019年度全学協議会の意義と議論経過」、第Ⅱ章では「各パートから出された主要な論点」、第Ⅲ章は「2020年度以降の大学の取り組み(確認事項)」としてまとめています。 第Ⅰ章 2019年度全学協議会の意義と議論経過 全学協議会とは 全学協議会は、本学において、大学という「学びのコミュニティ」を構成する学部学生(以下、学生という)、大学院生(以下、院生という)、教職員および大学が、教育・研究、学生生活の諸条件の改革・改善に主体的に関わり、協議するために設置された機関です。協議の場である全学協議会は、大学を構成する全ての構成員が自治に参加する「全構成員自治」の考えのもと、学生の自治組織である学友会、院生の自治組織である院生協議会連合会(以下、院生協議会という)、教職員組合、大学(学部長が理事として参加する常任理事会)の4つのパートと、学生生活等を支援する立命館生活協同組合(オブザーバー)で構成されています。 2019年度全学協議会の意義と議論経過 ① 2019年度全学協議会の意義 2019年度に全学協議会を開催することとなった背景として、2018年度全学協議会の協議経過があります。2018年度全学協議会では、学生については、2019年度入学者のみ、院生は2020年度までの入学者の学費政策が提起されました。そのため、2019年度の全学協議会で2020年度以降の学生の学費政策を協議し、院生の学費政策については、学生の学費政策サイクルと一致させるかどうか、関連する大学院政策等とあわせて検討をすることを2018年度全学協議会で確認しました。加えて、2022年度以降の学費政策については2021年度に全学協議会を開催し議論をすることについても確認しました。 ② 議論経過 2018年度全学協議会では、大学から各パートにR2020後半期計画による教育・学生支援施策の取り組み状況の進捗を報告すると同時に、次の10年間(2021-2030年度)に向けた2019年度以降の教育・学生支援施策を「ラーニング・イノベーション(協創施策)」として提起し、協議を進めました。 大学と学友会は、2019年度全学協議会へ向けて2019年3月から懇談会を開始しました。大学は2019年6月に『学園通信RS2019特別号-2019年度全学協議会に向けて-』(以下、RS2019特別号という)を発行し、『2018年度全学協議会確認文書』を踏まえた協創施策前半期(2019-2020年度)における正課・課外の学びの充実、キャンパス環境の質向上、大学院教学の充実にむけた進捗を報告しました。その上で協創施策後半期(2021-2022年度)に向け学習成果の可視化や学習・学生生活支援、留学と国際交流等の検討状況とあわせて2020年度・2021年度の学費政策を、学生・院生・教職員に提起しました。特に、学生に向けては、全学部の小集団クラス等でRS2019特別号について配布・説明を行い、この中で出された意見についても集約を行いました。 これを受け、2019年6月以降、大学・学友会・院生協議会・教職員組合で構成する全学協議会代表者会議を2回と、そのための事務折衝を3回、各種懇談会を学友会と9回、院生協議会と5回実施し、2019年10月2日(水)に第1回全学協議会を公開で開催しました。以降も、全学協議会代表者会議を1回、事務折衝を3回、学友会との懇談会を7回、院生協議会との懇談会を1回実施し、協議を継続しました。 こうした議論経過に加え、2019年度は、R2020後半期計画を実行に移し、また2030年にむけた学園ビジョンR2030「挑戦をもっと自由に」を実現するにあたって、2021年度からの学園・大学の計画の検討が進められている年としても位置づけられます。 第Ⅱ章 各パートから出された主要な論点 1.学友会から出された主要な論点 2019年度全学協議会の議論では、学友会は2018年度までの議論を踏まえ、また学生の実態に即した協議を進めるため、学生部と共同で実施した「新入生アンケート(以下、新入生アンケートという)」や、学友会が独自に全学生を対象として実施した「全学学生アンケート2019(以下、学友会アンケートという)」において学生実態やニーズの把握を進めました。公開で行った第1回全学協議会では、こうした学生の声に基づき優先的に議論すべき論点を整理し、(1)教学施策について、(2)学生生活の向上について、(3)今後の学園創造(学費提起に関する論点も含む)の3点を重点的に議論することを求めました。学友会が提起した具体的な論点は以下のとおりです。 (1)教学施策について ① 受講登録について 学友会は、大学で充実した学びを進めるための手続きである受講登録について、以下の点を主張しました。シラバスは大学の学びにおいて重要であることは理解しているが、学友会アンケートの結果から学生の利用実態をみると、大半の学生がシラバスの「評価方法」を確認するものの、授業を選択する際に重要な「授業の到達目標」を確認する学生が少ないといった実態を指摘しました。その上で、シラバスの記載内容について確認すべきポイントが明確ではなく、学生が授業を選択する際に活用しやすいものになっていない点を課題として指摘しました。また、シラバスの有効活用に向けて、過去の授業アンケート結果が参照しやすいような工夫も必要である点を併せて主張しました。この他、受講登録に関わり、受講登録期間を第1回目の授業を受講した後に設定することにより、より的確な授業選択ができることも考えられることから、そうした設定となっていない現行の受講登録期間について、大学の見解を求めました。 ② 授業におけるフォローアップ 学友会は、予復習や授業を欠席した学生へのフォローアップとして、授業を支援するためのe-learningツール「manaba+R」の教材を配布する機能等について、授業担当教員の利用を促進する余地がある点を指摘し、具体的な改善策・数値目標の提示を求めました。 また、授業におけるフォローアップに関して、課外自主活動に参加している学生が試合・大会等の参加の際に教員に提出する「試合等参加証明書」の運用について、2018年度から継続して証明書が授業担当教員に受理されないといった、運用面の課題が依然として解消されていない実態を学友会アンケート結果から示しました。この背景として、制度の意義や目的について、教員・学生の双方の理解が不足していることが想定されると指摘しました。 ③ 英語での学び 社会において急速なグローバル化が進む今日では、大学で外国語(英語)を学び、英語能力を身に付けることの重要性が高まっています。学友会は、大学が実施した「学びと成長調査」において、大学の英語の授業で身に付けた英語能力について自己評価が低い学生が多い傾向があることが重要な課題であると捉え、指摘しました。また、学友会は、外国語の運用能力を測ることができる国際的な指標であるCEFR※1の在学生の成績では、B1レベルに達する学生が増加傾向にあるという大学が実施した調査結果に対し、学友会アンケートでは英語能力に関わる成長を3割程度の学生しか実感していない実態について明らかにしました。このことから、大学で身につけた英語能力が、学生が理想とする英語能力に達していない点も課題として指摘しました。 この改善に向けて学友会は、既存の英語の学びについて、正課の授業、Beyond Borders Plaza※2(以下、BBPという)における語学学習コンテンツ、留学といった大学による様々な施策の関連性を学生が把握できていない点を指摘しました。また、こうした状況を解消するために、大学の各部門が連携し、外国語授業や教養科目、留学等を組み合わせて語学運用能力を高める仕組み等を提供し、学生の成長に寄与するプログラムを展開することを求めました。さらに、この英語能力については、全学で共通する事情と、学部の特性に応じた事情もあり、特に学部の特性に応じた学びについて、各学部の五者懇談会等で学生と議論していくことを求めました。 ※1 語学力を測る基準として欧州評議会が研究し、欧州を中心に2001年から公式に活用されている国際基準。 ※2 教学部と国際部が協働運営するコモンズ。オンキャンパスの国際交流や企画立案を通じ、多文化共生や海外派遣意欲の醸成ならびに留学生への多様な支援を行い、また、外国語の自律学習支援における拠点の役割を果たす。 ④ 初年次教育について 学友会は、2018年度全学協議会で確認した『オリター活動に関する確認事項』『オリター活動・支援のフレームワーク』に基づく、オリター・エンター(以下、オリターという)活動および支援の進捗の共有・確認を求めました。また、2019年度に学友会と大学が共同で実施した新入生アンケートから、入学直後のオリエンテーション期間において、同時期に履修登録、奨学金、課外自主活動などの多くの情報が新入生に提供され、情報過多の傾向が見られるという実態が明らかとなりました。 この上で、学友会は今後の新入生に向けた支援を行うにあたり、 1)学内外の他のピア・サポート団体の活動情報・ノウハウ・課題等の情報、学部が独自で新入生を対象に行っている支援に関する情報をオリター団に提供をすること 2)こうした新入生の支援を取り巻く環境を踏まえ、オリター団の役割について改めて大学と協議・検討・確認をすること 3)学部とオリター団がさらに連携を図れる取り組みを進めることなどを求めました。 (2)学生生活・キャンパス環境向上について ① 食環境について 学友会アンケートにおいて、98%の学生が「食堂の混雑を感じている」と回答した結果を踏まえ、学友会は、最優先で取り組む課題として昼時間帯の一時的な混雑の緩和を大学に求めました。その改善に向けては、各キャンパスにおける食堂の混雑状況の分析、大規模な施設改修を含めた中長期的かつ抜本的な混雑を解消する施策の検討、学生の利便性を高めるキャシュレス決済の導入を提起しました。あわせて、キャンパスごとの現状を踏まえ、衣笠キャンパスでは食堂以外で食事ができるスペースの確保、移動販売車等のランチストリートの充実、びわこ・くさつキャンパス(以下、BKCという)ではコンビニ・ファーストフード・カフェ等の外部企業の誘致、大阪いばらきキャンパス(以下、OICという)では食事ができるスペースの確保など、具体的な協議を進めることを求めました。 ② 空調管理について 近年の猛暑等の外部環境の変化によって、夏期を中心に室内でも熱中症等の危険性が高まっていることから、学友会は空調管理について、 1)教員が授業中に適切に教室の温度管理ができるよう空調設備の利用方法や問い合わせ先の周知徹底 2)教室規模や受講する学生数に応じた適切な教室の温度管理(大規模な教室で室内の温度にムラが発生する問題)の実施 3)学習スペースやコモンズとしての利用度が高まっているコンコースや廊下、教室以外の共有スペース(課外自主活動施設等を含む)の適切な温度管理、空調設備の導入 4)建物を管理する部署によって異なる空調設備の利用ルールを整理・明確化するための実態調査 を行い、スケジュールを含めた具体的な改善策の提示を求めました。また、空調管理についてもキャンパスごとの状況が異なることから、具体的な改善に向けてキャンパス単位での懇談会等で継続して協議することを求めました。 ③ キャンパス禁煙について 学友会は、健康増進法の改正に伴って全面禁煙から特定屋外喫煙場所を除く敷地内禁煙へとキャンパス禁煙の取り扱いが実質的に変更となった点について、喫煙する学生が一定数存在するキャンパスの実態に即した対応であると、大学の取り組みを一定評価しました。その上で学友会アンケートでは4割の学生が「望まない受動喫煙の被害を受けている」と回答している実態を指摘し、キャンパス内での受動喫煙防止策の徹底や新たにたばこを吸い始める学生を生まないための喫煙リスクの周知、および現在たばこを吸っている学生への卒煙支援の促進を求めました。 ④学生生活・キャンパス環境の向上のため継続的に協議する論点 学友会は、第1回全学協議会で協議した上記論点とともに、その後開催された懇談会において、以下の点についての改善と継続的な協議を大学に求めました。 1)OICアリーナの空調施設、OICでの課外自主活動施設の拡充、キャンパス外のスポーツ施設(柊野、艇庫等)の運用など、利用実態と学生ニーズを調査し、課外自主活動施設の整備改善にむけた議論を継続していくこと。 2)シャトルバスについては、利用が集中し、混雑する時間帯があるかなど、キャンパスを超えて活動するクラブへのヒアリング等の実態調査を行い、運行の改善に向けた協議を継続すること。 3)施設利用に関する受付窓口の開室時間が課外自主活動の活動時間帯と乖離があるため、十分な支援がなされているとは言えないことから、受付窓口の開室時間の延長を検討すること。加えて、キャンパスを超えた活動を促進することにもつながることから、教室予約のWEB化についても検討すること。 4)課外自主活動に関する情報発信機能の充実と大学から発信する情報を学生に効果的に伝えるための情報発信場所(掲示板やデジタルサイネージ)の確保について検討すること。 5)奨学金について、必要な情報を受け取れていないことで制度への理解が不足している学生が存在しているという懸念があり、各種奨学金の制度や目的について学生へ周知徹底すること。 6)通学で利用するバスの混雑解消に向けて(増便すること)や駐輪場の新設・移設、自転車の通学ルール等について、学生の利用実態を調査した上で、改善の必要性も含めて継続して協議していくこと。 7)ダイバーシティ&インクルージョン※3に対応する環境の整備に向け、昨年度全学協議会で確認されたジェンダー・セクシャリティ相談・支援体制の構築に関する大学の取り組み状況の進捗を共有すること。 ※3 学園として、立命館憲章に基づき、「個人、組織、地域、国、風習、文化、世代をはじめとする社会のあらゆる多様性を前提とし、個人の意見や考え方の違いを理解・尊重し、他者と協働しながら多様な『つながり』を育む学園(R2030学園ビジョンより抜粋)」を目指して、性的マイノリティに対する支援、障害学生支援等を推進する取り組み。 (3)今後の学園創造について 学友会としては、学費・財政政策が、教学課題や学生生活をはじめとした学園創造との関わりの中で議論されるべきものであるとの立場を示した上で、以下の論点を提起しました。 ① 学部学費政策について 大学が提示した2020年度・2021年度学費提起について、学友会は反対の立場を表明しました。増収を図る目的ではなく、財政規模(収入規模)を維持することを目的としていることに一定の理解を示しつつ、実質増額となるにも関わらず、それに見合った教学や学生生活に関する課題の改善が十分に示されていないことから、大学に対し学生・負担者が納得できる説明を求めました。 その上で、2021年度の全学協議会へ向けて、 1)2022年度以降の学費について協議するにあたり、前提となる学園財政などの情報公開・提供といった可視化の取り組みを十分に行うこと 2)可視化された情報を踏まえた財政に関わる学習会や懇談会といった機会を持つこと 3)2030年度にむけた中長期的な計画において学費への依存度を下げる取り組み(寄付、資産運用等)の具体化 を求めました。 ② 学生の成長の可視化について 学友会は、学生の成長を可視化することが、大学での正課の授業や課外自主活動を通じた学生自身の成長の実感につながるとの見解を示しました。また、大学入学後の学生の成長のプロセスを可視化することが、大学の魅力発信につながるとの見解も示しました。その上で、授業アンケートや学びの成長調査等の正課の授業を通じた成長に関する調査に加え、課外自主活動を通じた学生の成長の可視化を具体化し、学生生活を通した総合的な学生の成長に関するデータを蓄積する仕組みづくり、データを活用した学生への学びのアドバイスや発展的な学びにつなげる支援構築の検討を求めました。 ③ わくわくするキャンパスづくり 仲谷総長より出された今後の学園創造に向けたメッセージである「わくわくするキャンパスづくり」について、学友会は賛同し、積極的に関わっていきたいという立場を表明しました。そのために、学生の知的好奇心を喚起し、時代に即した学びやすい環境づくりを進めることが重要であり、学友会アンケートでの学生の意見を踏まえ、 1)キャンパス環境の充実に向け、まずは駐輪場や食堂の混雑状況、バスの待ち時間等の情報等を最新の技術を活用して可視化すること 2)授業でのICT機器の利用や学生が保有するデバイスをキャンパスに持ち込み、学習、研究するBring Your Own Device(以下、BYODという)の推進 3)本学の最先端の研究に学生が触れ合い知的好奇心の喚起を促す環境の整備、について検討することを求めました。 ④ 学園の見える化・発信 学友会は、大学の教学施策、財政政策を含めた様々な情報が学生に十分周知できていないことが、教学、学生生活における改善を学生が実感できていない原因になっており、多くの課題につながっていることを指摘しました。学生にとっては、「大学が変わった、変わっていくという『実感』が必要」であると主張し、学生が実感を得ることにつながる施策の実行と、その情報が学生に届くよう大学から発信されることを求めました。 2.院生協議会の主要な論点 院生協議会からは、(1)グローバル化について、(2)施設整備について、(3)院生のキャリアパスについて、(4)大学院学費について、以上の4点の論点提起がありました。具体的には以下のとおりです。 (1)グローバル化について 院生協議会は、「大学のグローバル化」を取り上げました。具体的には、大学が積極的にグローバル化を推進する中で、文化的・社会的な背景の違いによって生じる課題への対応や、外国語学習支援における英語以外の言語の取り扱いについて、大学に見解を求めました。その際に、具体的な課題として以下の4点を取り上げました。 ① 学内窓口における留学生対応の改善として、留学生との母語ではない日本語によるコミュニケーションに起因して生じる認識違いの対策を図ることを求めました。 ② パートナーを帯同した(日本で安価な賃貸住居契約のハードルが高い)短期留学生への住居支援として、インターナショナルハウスの入寮条件の緩和を求めました。 ③ 留学生の増加を背景として、留学生が標準と考える大学の研究環境(施設の24時間利用等)の整備の一つとして、図書館等の学内研究施設の利用時間の延長について見解を求めました。 ④ 英語以外の言語習得を希望する院生に向けて、外国語講座もしくはe-learningによる外国語講座の開設を求めました。 (2)施設整備について 衣笠キャンパス究論館開設やOICリサーチコモンズの整備等、大学による院生のリサーチコモンズ整備状況について確認したうえで、各キャンパス間の研究施設整備における機能や条件の違いについて大学に見解を求めました。その例として以下の2点を指摘しました。 ① 衣笠キャンパス・OIC共同研究室内の座席不足解消について 人文・社会系の院生にとって、個人で利用できる研究スペースの確保は重要であり、改めて共同研究室の座席不足の解消を大学に求めました。 ② 朱雀キャンパスのプリントステーションの機能について 現状、朱雀キャンパスでは、他キャンパス所属の院生に加え、教員・職員が利用できる印刷施設が整備されていないことを指摘し、印刷施設の利用制限の解除にむけて大学の見解を求めました。 (3)院生のキャリアパスについて 院生協議会は、「初任研究員制度」や「博士論文出版助成制度」等のキャリアパス推進支援制度の高度化を肯定的に評価し、今後も安定的に制度が維持されることを要望しました。その中で、「博士論文出版助成制度」の春学期の申請期間の見直し、助成金の支払い手続きの改善(助成金が院生を経由することなく、大学から出版社に直接支払われるように改善)を要望しました。また、制度とその運用について大学と協議する場を確保することを求めました。さらに、アカデミックキャリア以外を希望する院生の就職支援について、学生と同程度の支援を継続することを求めました。 (4)大学院学費について 院生協議会は、2021年度の大学院学費が据え置かれたことを高く評価し、現行学費を2022年度以降も継続することと合わせて、キャリアパス推進制度の維持とさらなる高度化を要望しました。 3.教職員組合の主要な論点 教職員組合は学生の学費政策について、RS2019特別号において具体的な学費値上額の不記載は不誠実であるとし、学費の重みの認識、維持されるとされた現行の教学政策・教学条件の重要性と成果の説明、寄付金政策など学費への依存度を下げる取り組みといった点での大学の説明は不十分であると指摘しました。そのうえで、「仕送りの減少やアルバイトの増加、消費税増税の影響などの学生実態を踏まえれば、学生や父母にさらなる負担を強いる学費値上げは慎重に判断するべきである。実質的な学費負担増を伴う今次の学費提起は教学・学生生活支援と一体の議論として展開されていないことに根本的な問題がある」とする見解を表明しました。加えて、今後の全学協議会議論に向けては学費を社会的に公表する前に各パートと各種懇談会や全学協議会代表者会議等で協議することを求めました。 4.立命館生活協同組合(オブザーバー)の見解 全学協議会の議論にあたって、立命館生活協同組合が実施している学生実態調査での学生の仕送り額の減少傾向やアルバイト収入の増加といった学生実態を踏まえて議論を進めることが重要であり、学生・院生・教職員などの組合員を支える立場から協議に参加するとの見解表明を行いました。 第Ⅲ章 2020年度以降の大学の取り組み(確認事項) 2019年度全学協議会での協議を踏まえ、2020年度以降に大学が取り組んでいく具体的な内容を本章にて記載します。これらの取り組みは、今後の教育・学生支援施策である、協創施策(前半期:2019-2020、後半期:2021-2022)での取り組みも含みますが、主に2019年度全学協議会での各パートとの協議を踏まえて確認した点を中心にしたものです。 1.正課・課外の学びの充実 大学は、「立命館憲章」の目的である「地球市民として活躍できる人間の育成」を実現するため、R2020計画で「学びの立命館モデル」の構築を目指してきました。これを具現化するものとして「立命館大学学生育成目標」を定め、正課・課外を包摂した学生生活全体を通じた学びと成長の支援に取り組んできました。 今次の全学協議会での教学議論では、学びの実感がキーワードの一つとなりました。学びの実感は、新たな挑戦や目標の設定に向かう力の源泉となります。大学は、学生一人ひとりが確かな学びの実感を得ながら充実した大学生活を送ることを、いっそう重視します。正課カリキュラムはもとより、BBP、図書館、メディアセンター、さらには国外やインターネット空間を含むキャンパス外においても、学びの楽しさと成果を実感できる場を学生・院生と教職員がともに創り上げていけるよう、大学は力を尽くします。その際、学習の結果だけにとどまらず、多様な学生・院生が個性豊かに成長し、学び合う過程にも注目します。また、個々の科目やプログラム等がばらばらに見えてしまうのではなく、入学から卒業・修了まで一貫性の感じられる、まとまりのある学習経験の創造をめざして、各部局の間での連携を強化します。今次の全学協議会の協議を踏まえ、正課・課外の学びの充実に関する大学の具体的な取り組みは以下の通りです。 (1)受講登録・シラバスの記載内容の見直し 受講科⽬を選択する際に、科⽬の到達⽬標、授業の概要と⽅法、成績評価⽅法などを⽰すものとしてシラバスがきわめて重要であることを、学友会と確認しました。そのうえで、学友会アンケートの結果を踏まえ、2020年度シラバスの記載内容を改善し、また2020年度『学修要覧』における受講登録に関する説明の改訂にも着手しています。シラバスの改善点は次の通りです。 ① 科⽬のカリキュラム上の位置付けが分かるようカリキュラムマップや科⽬番号などを各科⽬のシラバスから参照できるようにする ② 「授業の概要と⽅法」の項⽬において、授業の形式やフィードバックの⽅法などを記載する ③ 授業外学習の指⽰について、予習・復習の内容や分量をより具体的に記載する ④ 成績評価⽅法について、レポートの回数や平常点評価の内訳を具体的に記載する ⑤ 教科書について、授業内外での使⽤の頻度・⽅法を記載する。また『学修要覧』では、受講登録の考え⽅、シラバスの読み⽅、到達⽬標の重要性、過去の授業アンケート結果の参照⽅法などについてより丁寧な説明を⾏います。 (2)manaba+Rを含むICTの授業への活用促進およびBYODの推進について ICTを活用した学習管理システムとして本学で導入しているmanaba+Rについて、学友会から、授業での活用が不十分ではないかとの指摘がありました。大学ではこれまでも、教員にmanaba+Rの積極的活用を呼びかけてきましたが、今回の議論を受けて、manaba+Rの諸機能のうちでも、とりわけ教員がレジュメ等のプリントを配布するために使用する「コンテンツ(教材)」機能の活用を促し、復習や欠席時のフォローアップ、また事前に配布されたレジュメでの予習による授業外学習の活性化を進めていくことを確認しました。 「コンテンツ(教材)」機能の利用率の引き上げについては、全授業での利用率を現行の34%から2020年度末までに40%以上、2022年度末までに50%以上に引き上げるという数値目標を設定しました(授業規模別では、50人超の授業では2020年度末に75%以上、2022年度末に80%以上、50人以下の授業では2020年度末に33%以上、2022年度末に44%以上)。この目標の達成に向けて、利用ガイドブックの活用、TAを通じた利用支援、利用率の低い学部での講習会の開催要請、非常勤講師や授業担当講師への利用案内・支援などの取り組みを進めます。 また、manaba+Rの教材機能の利用にとどまらない、新たなICTの授業への導入についても、学友会より提起がありました。大学ではこの間、ICTを活用した反転授業やライティング・サポートなど、他大学や高校で導入されている先進的な事例についての調査を行ってきました。本学でも、教学上の効果が見込まれる施策については、全学協創施策期(2019-2022年度)の中でその導入が実現できるよう検討していきます。BYODの推進については、その教育効果や必要な施設条件についての全学的な検討に向けて、全学協創施策期中に試行的な環境整備および教育効果の検証に取り組みます。 (3)教学施策・学習成果に関わる情報発信方法の改善 上記の受講登録環境の改善やmanaba+Rの積極的活用の議論において、大学が行っている様々な施策が必ずしも学生には知られていない(見えていない)という問題提起が学友会からなされました。また立命館憲章をはじめとする立命館教学の特性や、2019年度からWEB形式で発刊した『学びと成長レポート』などの、学びのプロセスや成果を可視化したコンテンツを多くの学生の間で広く理解・共有するためにはどうすべきなのかという議論が行われました。 2020年度以降の『学びと成長レポート』の刊行や、2021年度に予定している『未来を拓く』の改訂では、できる限り読みやすく伝わりやすい形での表現・発信を追求します。また、学生への周知については、SNSの活用も含めて、より適切な情報発信方法を引き続き検討します。学部ごとの学びについても、学部の教育の質向上のために配分されている「教育力強化予算」による取り組みの内容や得られた成果について、学部のホームページや五者懇談会などを通じて説明を行います。 (4)外国語教学・グローバル化をめぐって 外国語教学およびグローバル化の⾯では、これまで、スーパーグローバル⼤学創成⽀援事業(SGU)などを通じて、⽇本⼈学⽣海外派遣数で全国第1位となるなどの成果をあげてきました。しかしながら、「学びと成⻑調査」は、個々の学⽣が外国語の学びの成果について実感をもって卒業するという点では、なお課題があることを⽰唆しています。また、学友会アンケートからは、学⽣が外国語や国際感覚をもっと⾝につけたいという想いは、多くの学生が共通して持ちながらも、外国語学習・多⽂化体験に期待するものや獲得したい⼒という点では多様な考えの学生がいることがわかりました。 こうした議論を経て、学習成果の評価において、学びのプロセスや実感に焦点をあてた学⽣⽬線の分析を強化する必要を認めました。またBBPを、習熟度や留学計画の有無にかかわらず、全ての学⽣が⽇常のキャンパスライフの中で外国語によるコミュニケーションや⾃律的な外国語学習を実践し、成⻑実感を⾼めていくことができる場として位置づけることを確認しました。今後BBPでは、正課の語学授業とも連携しつつ、こうした位置づけにふさわしい多様な取り組みを展開していきます。すでに、自律学習促進のためのBBPマイレージの導入など、具体的な取り組みが始まっています。さらに、次年度に向けて、より広い学生を対象とした新たな企画を準備中です。 (5)オリターによる新入生支援活動の充実 2019年度からは、『2018年度全学協議会確認文書』に付した『オリター活動・支援のフレームワーク』を踏まえ、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)と協働した新入生支援に取り組んできました。こうした2019年度の取り組みを踏まえ、2020年度以降の新入生支援に向けて、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)から共通して出された課題は次の2点です。 ① 学部とオリター団との連携を促進するための定期協議等の継続的なコミュニケーションの促進(各学部の1回生小集団科目の実施方針や新入生への支援に関する情報の共有、オリター活動の進捗の共有と助言等)を図ること ② 支援者としてのオリター学生の力量向上に向けた研修のさらなる充実と研修実施時期の早期化を図ること これらの課題をクリアにする取り組みは既に開始しています。例えば、2019年度新入生支援に向けたオリター団や執行部を対象にした研修は、2018年12月中旬~2019年2月にかけて実施してきました。これを2020年度新入生支援に向けては、研修内容を充実させた上で、2019年12月初旬から段階的に実施しています。こうした、新入生支援の充実に向けた取り組みは、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)と連携を継続して進めます。また、新入生オリエンテーションにおいて、情報過多の傾向が見られる実態への対応については、提供する情報を含めた新入生支援におけるオリターが果たすべき役割の整理・設定について、学友会と継続して協議していきます。 (6)試合等参加証明書の意義や目的の周知徹底 この間、教員に対して本制度の趣旨等を周知するために、教学委員会や学生生活会議で改めてこれを確認しました。その上で、専任教員へは教授会を通じて周知を徹底してきました。また、教授会に属さない非常勤講師等へは書面での制度説明を行いました。しかし、学友会アンケートでの、「依然として試合等参加証明書を受理しない教員が一定数いる」との指摘を重く受け止め、専任教員および教授会に属さない非常勤講師等への効果的な周知に今後も引き続き取り組みます。また、試合等参加証明書が受理されなかった場合の学生の相談窓口を整備し、個々の状況を踏まえた対応ができる体制を構築していきます。 2.キャンパス環境の向上と学園創造について (1)食環境の改善について 大学として、学友会アンケートで示された98%の学生が「食堂の混雑を感じている」という実態を重く受け止めています。これまでも、2019年度OICに開設した分林記念館への飲食可能スペースの設置、2021年4月供用開始を目指したBKCユニオンスクエアの食堂改修の検討等、昼食時の一時的な混雑緩和に向けた継続的な取り組みを進めてきました。今後は、民間レストランの誘致を含めたBKC・C-cubeの全面リニューアル(2020年9月開業予定)、分林記念館1階への飲食店の誘致等を具体化することで、座席数・飲食スペース・メニューの豊富化等の課題改善に取り組みます。検討にあたっては学生も参加したワークショップ等の取り組みも実施していきます。その他、BKCでのコンビニエンスストアやカフェ等の誘致、衣笠キャンパスでは教室deランチ等の食事スペースや移動販売車等のランチストリートの拡充といった要望についても、学生のニーズや利用実態を踏まえた検討を進めていきます。キャッシュレス決済の導入については、OIC・BKCのランチストリートで2019年度中から一部導入を始め、導入店舗の拡大にむけた働きかけを進めます。 (2)空調管理 学友会の指摘した空調管理の課題について大学は、安心・安全の観点から重要な課題であると認識しています。昨今の夏の猛暑をはじめとした、従来とは異なる熱環境(気候)が背景にあることから、既存の空調設備で対応が可能かどうか検証を行います。また、教室以外の共用スペースでの空調管理について、これまで大学では、共用部(廊下等)は非空調もしくは準空調(間接空調)と位置づけてきましたが、共用部がコモンズや学習スペースとして活発に利用されている現状を踏まえ、共用部の熱環境の改善についても取り組みを進めます。 衣笠キャンパスの明学館の空調設備については、2020年度夏期までの間に性能の確認や熱環境の実態を調査した上で、必要な対策を実施します。OICのコンコースについては、2019年度中に測定した暑さ指数(WBGT値※4)等について検証を行います。その検証結果を踏まえ、2020年度の夏期を視野に入れ、必要な改善を進めます。 この他、教室内での空調の取り扱いに関する周知徹底について、教員へは各種会議体を通じて呼びかけを行います。また、利用する教員・学生に共通する対応として、空調に関する問い合わせ先を記載した案内を各教室に2019年度秋学期中から順次掲出します。 ※ 4 人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射( ふくしゃ) など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標。 (3)キャンパス禁煙について 大学は法令改正を受けて、「特定屋外喫煙場所」としての要件を満たす新しい「卒煙支援エリア」の段階的整備等による受動喫煙防止策の実施や、教職員を対象にしたキャンパス内禁煙を含む受動喫煙防止に関する規程の制定等を実施してきました。一方、学友会アンケートで4割の学生が「望まない受動喫煙の被害を受けている」と回答している実態を大学は、深刻に受け止めます。今後の取り組みとして、衣笠キャンパスでは以学館西側の特定屋外喫煙場所の吸煙式灰皿の設置及び移設、BKCでは喫煙の多いコラーニングハウスⅠの外階段ドアのパニックオープン化※5、OICでは秋学期に現在2カ所ある特定屋外喫煙場所を1カ所に減らすこと等の検討を進めていきます。また、2019年6月に大学が制定した『学校法人立命館受動喫煙の防止に関する規程』を踏まえた教職員のキャンパス禁煙を促進する取り組みをさらに進めます。加えて、2019年度から新たな喫煙者を生まない取り組みとして、学友会と連携した新入生への健康教育を始めており、この取り組みを広げていきます。 キャンパス禁煙化を目指す方向性については、各パートと見解が分かれました。しかし、大学として、学生生活の向上・キャンパス環境の充実を図っていく上で、キャンパス禁煙化は不可欠な取り組みであると認識しています。この上で、受動喫煙防止とキャンパス禁煙化の取り組みは、大学と各パート、教職員と学生・院生が一体となって取り組む必要があると考えています。今後も大学として受動喫煙の防止とキャンパス禁煙化に向けたより一層の取り組みを進めます。 ※ 5 一般的には非常時に“自動ドア”や“電気錠”が開放されて避難経路を確保する仕組みのことを指しますが、こちらでは、非常時には破壊して避難経路を確保できるような非常用カバーを屋外へのドアのサムターンに設置することを指します。 (4)学生が最先端の研究に触れられる環境の整備について RS2019特別号で仲谷総長は、最先端の研究成果を日常的に体験するなど、知的好奇心を喚起する機会、そこから課題の発見や挑戦にいざなう、質の高いグローバルな教育・研究環境となる「わくわく」する大学・キャンパスを創造する議論を呼びかけました。この一環として、企業と連携した最先端の運搬ロボットや清掃ロボット等の実証実験を始めています。学生も参加して人とロボットが協業する新たな価値の創出に向けたチャレンジとして進めていきます。他にも2019年4月に「立命館SDGs推進本部」を設置し、SDGs※6の達成に向けた学生・生徒・児童や教職員の教育研究活動を取りまとめた情報発信やそのサポートを進めます。 他方、全学協議会の協議の中でもこうした取り組みが学生に十分届いていないとの指摘がありました。多くの学生が最先端の研究成果に触れ、知的好奇心を高め、社会が直面する課題にチャレンジするような施策を、学生とも継続的に議論していきます。 ※ 6 開発アジェンダの節目の年、2015年の9月25日-27日、ニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』が採択されました。アジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげました。この目標が、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継であり、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」です。 (国際連合広報センター主な活動持続可能な開発目標SDGsとは 閲覧日:2020年1月8日) (5)その他、キャンパス環境の質向上に関して 上記以外で学友会を中心に出されたキャンパス環境の質向上に向けた取り組みは以下の通りとなります。なお、こうしたキャンパス環境の質向上に向けた取り組みは、キャンパス懇談会等で継続的に協議し、改善をすすめます。 ①課外自主活動施設の整備について 学友会からはOICの課外自主活動施設に関して、多くの学生と活動・交流できる場所を一定期間確保したいという要望が出されましたが、既存の施設・制度で対応することが可能であることから、施設等の利用方法の学生への周知、情報発信を工夫することを確認しました。 本学は正課・課外を通じた学びを支援する観点から、施設整備・貸与をはじめ奨学金・助成金等、顧問・副部長等の配置など、これまで様々な課外自主活動への支援を行ってきました。こうした中、既存のクラブ・サークル等に加入して活動する学生は近年減少傾向にあり、2018年度の学生数に占める既存のクラブ・サークル等である課外自主活動団体参加者の割合は61.4%(学生情報システムの登録情報による)となっています。他方、2019年度の新入生アンケートや学友会アンケートでは、7割~8割程度の学生が学内外問わず正課以外の活動に参加していると回答しています。このことから、学生が従来のクラブ・サークル活動だけはなく、学外でのインターンシップやボランティアを含めた多様なフィールドでの学びの機会を課外自主活動と捉えていることが推察されます。今後の懇談会等でこうした学生実態を学友会と共有し、学生の意識や活動実態を踏まえた大学としての適切な支援のあり方と合わせて施設整備についても検討を進める必要があります。 ②学生窓口の拡充・学園のスマート化、キャンパス環境(混雑状況等)の見える化 学友会が求めた施設利用に関する受付窓口の開室時間の延長・拡充は、受付窓口の開室時間の制約を受けない教室・施設利用申請を可能にすることで、既存の活動のさらなる活性化やキャンパスを超えた課外自主活動を促進する環境整備を求めるものであると理解しています。こうした趣旨を受け止め、受付窓口の開室時間の変更は行いませんが、利用申請をWEB化することで、時間・場所を問わず、使用状況の確認、利用申請ができる仕組みを構築し、学生の課外自主活動環境整備に取り組みます。WEB予約システムは、2020年度中の導入を目指して検討を進めています。 また、課外自主活動に関する情報発信の充実について、デジタルサイネージやWEBの一層の活用等の課題について実態を踏まえつつ、対応策を検討します。 この他、快適なキャンパス環境の整備につなげるため、食堂や駐輪場、バス乗り場等のキャンパス内の混雑状況が「見える」環境づくりの課題に取り組みます。この一つとして、IoTに関する最新の技術と経験を持った企業等と連携し、2020年度から試行的な取り組みの具体化を始めます。 ③キャンパス間シャトルバスの運行の改善 大学は、学部やキャンパスを超えた自主的な学びを促進するため、シャトルバスの運行を行っています。この利用実態は、全体の乗車率が25%程度です。他方、一部のダイヤに学生が集中し混雑が生じている現状があり、この点が学友会からの指摘の課題であると受け止めています。この課題解決に向けて、混雑している時間帯としていない時間帯を見える化した「混雑マップ」を、利用する学生に配布する取り組みを行うことから始めます。また、これまでも学生の声を踏まえたダイヤの改善を進めてきましたが、改めて2020年度の運行ダイヤ策定に向けても学友会と連携して検討し、課外自主活動の実態に即した運行ダイヤの設定を進めます。 ④通学に関する課題 大学での充実した学びを進める観点から、これまでも行政・公共交通機関等と連携し、キャンパスごとの学生の通学環境の整備・改善を図ってきました。2020年度に向けて、衣笠キャンパスでは通学時間帯のバスの混雑解消を図るべく、行政や公共交通機関等と増便等について継続的な折衝を行っています。折衝は2020年2月を目途に完了する予定です。 また、BKCでは、2019年12月にキャンパス内駐輪場の適切な設置場所を検証する実証実験を学友会と連携して行いました。この実証実験結果を踏まえ、改善策を検討します。 ⑤奨学金に関して 私学として可能な限り教育の機会均等を保証し、正課・課外を通じた多様な学びと成長を促進するため、本学の奨学金制度は、2012年度以降、「成長支援型奨学金」と「経済支援型奨学金」の2つの枠組みを設定し、運用を行ってきました。現在、これらの奨学金制度の到達点と課題を整理するとともに、2021年度以降の次期奨学金制度を検討しています。特に経済支援型奨学金については、2020年4月の国による高等教育の修学支援新制度の実施を踏まえ、現行制度の再整理を既に進めています。 上記の枠組みのもと、多様な奨学金制度を通して多くの学生を支援してきた一方で、学友会からは「制度がわかりにくくなっている」という指摘がありました。現行奨学金制度の見直しにあたっては分かりやすい制度設計に努めるとともに、奨学金ホームページおよびmanaba+R における情報発信や新入生向けの奨学金ガイダンス等を実施し、引き続き奨学金別に適切な時期に情報発信を行っていきます。 ⑥ダイバーシティ&インクルージョンに対応する環境の整備について 本学は2011年度以降、包括的学生支援の体制を段階的に構築してきました。2018年度全学協議会ではジェンダー・セクシャリティに関する支援・相談体制の整備が議論され、この間、学生部を中心に検討を実施してきました。2020年度中には大学におけるジェンダー・セクシャリティに関する支援の基本方針案を作成した上で、支援ガイドラインについて検討します。また、この支援の前提となる学生実態を把握するため、定性的な調査を2020年度中の実施に向けて取り組みを進めていきます。 3.大学院教学の充実について (1)グローバル化 ⼤学院においても、教学の国際化が、院生⾃⾝が海外の⽂化などに対する意識を⾼め、多様な⽂化的背景をもつ⼈々との交流により、新たな学びや気付きに到達することを⽬指すものである点は、学部と同⼀です。日本語を母語としない留学生への手続きや制度に関する窓口での説明については、わかりやすい説明を行います。さらに、留学生に関わる行政関連の諸手続き等については、各研究科を含めた関連部局の情報共有を強化していきます。図書館など⼤学施設利⽤の24時間化や国際寮の⼊寮基準緩和の要望については、環境⾯・施設⾯の制約により、短期的に解決策を⾒出すことは現状では困難です。しかし、国際的⽔準を意識することは必要であり、⼤幅に劣る部分の改善について引き続き検討を⾏います。外国語教育では英語に焦点があたることが多いですが、⽇本⼈院⽣が英語以外の外国語を習得することは、研究において重要であり、時として不可⽋です。BBPを含む⼤学の外国語教育のリソースを活⽤する可能性の具体的な検討に向けて、まずは、院⽣協議会の協⼒を得ながら、教学部と国際部で⼤学院⽣の要望やニーズの把握に取り組みます。 (2)施設整備課題 共同研究室の座席不⾜並びに⽼朽化の課題は以前から⼤学としてもよく認識しています。施設整備を進めるにあたっては、キャンパスの特性や教学・研究の分野ごとのスタイルの違いや⼤学院⽣の要望を考慮します。そのためにキャンパスごとの施設整備計画を検討する将来構想検討委員会などの適切な場での議論を⾏い、可能な対策を順次実施していきます。当⾯の具体的対策として、2020年4月の共同研究室不⾜が予想されるOICで、新たな研究室⽤のスペースを確保します。印刷環境などの利⽤可能な施設機能がキャンパスによって異なる点については、その運⽤を取り決めた時点での⼤学院⽣の要望を取り⼊れた結果ですが、全学的な統⼀が現時点での⼤学院⽣の要望であるならば、それに沿った⾒直しを検討します。 (3)キャリアパス形成と就職活動の⽀援 現行のキャリアパス形成支援制度群は、実施状況や成果を定期的に検証し、院生の利便性の向上や予算の有効活用のための部分的な見直しを重ねながら継続的に実施してきました。それらは全体としては、院生からの高い評価を受けていますが、いくつかの改善の要望も出されています。博士論文出版助成制度の運用上の課題に対しては、院生の要望に沿って改善を行います。これらの制度は5年間を単位として設計しており、院生協議会との議論や各種アンケート等を踏まえながら、2021年度以降の中期的なスパンで制度全体の見直しに取り組みます。 博士課程前期課程・修士課程の院生への就職活動支援は、キャリアセンターにおいて学生と同様に行われており、より一層の充実を目指して継続します。また、今後は、博士課程後期課程院生への就職支援についても、教学部とキャリアセンターで連携して検討を進めます。 4.学費提起と2021年度全学協議会へ向けて (1)2019年度全学協議会での学費議論 今次の学費政策として、大学は、2018年度の学費政策議論において検討を継続することとした3つの課題(入学定員管理厳格化への対応、社会諸制度改革への対応、協創施策(ラーニング・イノベーションの推進))についてそれぞれ検討を進めてきました。しかし、現時点では具体的な方策や財政規模を決定する状況になく、今後抜本的な検討が進められる状況にあることを勘案して、2021年度までの学費政策では基準授業料を据え置き、現行の授業料改定方式※7を継続すること、大学院の学費政策を継続すること、入学金の引き下げと、そのことによる収入減少への財政的な対応として、これまで学生の授業料(1年次春学期)に適用していた新入生特別減免を原則解消することを提起しました。 これに対して学友会からは、実質増額となる学費に見合った教学や学生生活課題の議論が伴っていないことを考えると、全ての学生に対して納得のいく説明がされていないという指摘がなされました。また、教職員組合からは学費を負担する側の立場に立って説明する必要があり、学費を負担する学生や父母の実態や、受益感覚に真摯に向き合わなければ、学費への納得感を得ることは困難であるとの見解が表明されました。 大学は、今回の学費提起に際して、学生父母の家計実態や今後の情勢対応課題等を含む厳しい議論をしましたが、収入の大部分を学納金に依存せざるを得ない私学の財政構造そのものの課題を抱える中で、学費額増加をお願いすることになってでも収入規模を維持せざるを得ないと判断したのは、現在の教学条件・財政条件を保障しながら、今後の諸課題への対応を通して、さらに教学を充実・発展することが重要であるとの結論に達したためであるという説明をしました。このうえで2022年度以降の学費政策については2021年度に改めて全学協議会を行い協議することを提起し、これを確認しました。 ※ 7 現行の授業料改定方式(2020 年度・2021 年度入学者に適用する授業料改定方式)は以下の通りです。 新年度授業料=基準授業料×(1+物価指数アップ率) ※ 「基準授業料」は2018年度入学者の授業料とし、新入生特別減免を除く授業料年額とします。 ※ 「物価指数アップ率」は、消費者物価指数(全国総合)の2015年度平均値を基準として、直近年度平均値における上昇率を用います。ただし、上昇率が1.0ポイント未満の場合は適用しません。 ※ 算出された新年度授業料が前年度授業料を下回る場合は、前年度授業料と同額とします。 ※ 算出された新年度授業料の1/2(百円単位で四捨五入)を学期授業料として当該年度入学者に適用します。 ※ 経営管理研究科の「基準授業料」は「単位授業料(1単位授業料×23単位)+固定授業料(春学期+秋学期)の額とし、1単位授業料は48,000円、方式による改定があった場合は固定授業料に加算します。 (2)今後の全学協議会について 2018年度全学協議会での確認の通り、2021年度の全学協議会では、R2030中期計画とそれに対応する財政運営基本方針の策定を受けて2022年度以降の4年間(2022年度〜2025年度。中間点検を行う方針で、その点検内容等は今後検討を行う)の学費政策について提起することとしました。 2021年度の全学協議会に向けては、学友会から論点としてあげられた「学費の重みに応える」財政運営として、学納金への依存軽減を図るための「収入強化」「経費削減」に引き続き努めることと、同時に「学費負担の納得感」が得られるよう、「教学施策」と「財政施策」を両輪で考え教学・学生生活の質を向上するように取り組み、学習成果や学生の成長の可視化と財政の可視化に引き続き取り組んでいくことを確認しました。 財政の可視化については、2019年度に学友会と大学とで意見交換等を行いました。2021年度全学協議会に向けては、2020年度中に各パートとの懇談等を行いながら、学生・院生が学園財政の理解をより深められるような情報公開のあり方等について今後検討することとしました。 こうした全学協議会の取り組みは、学生・院生・教職員とのコミュニケーションを図りながら、より良い大学・学園にしていく場として重要です。このより良い大学・学園に向けた取り組みを評価する観点として「学生が成長を実感できているかどうか」が重要であることを確認しました。これを可視化する取り組みに向けた協議が、今次の全学協議会の象徴の一つであったと言えます。次回の全学協議会に向けて、2020年度には全学協議会代表者会議を開催し、各パートとも継続した協議を行っていきます。