第Ⅲ章

2020年度・2021年度の学費政策について

1.2018年度全学協議会での学費政策議論

2018年度全学協議会の学費議論では、①文部科学省による入学定員管理の厳格化と、②政府によるいわゆる「働き方改革」を重大な情勢課題として挙げています。高等教育に対する公費助成の国際的な水準の低さと国私間格差の中で、本学を含めて私立大学の財政構造は、学納金が収入の約75%を、人件費が支出の約50%を占めています。入学定員管理の厳格化や働き方改革への対応は、法人・大学の社会的責務としての重要性とともに、学納金や人件費に関わるものとして財政運営にとっても重大な課題となります。

大学は、これらの外部環境変化に対応する課題がある中でも、学びの質向上を目指して、③2019年度~ 2022年度における協創施策(ラーニング・イノベーション)を通じた教育改革・学生支援を展開することを提起しました。

大学は、学費の重みの認識やこれらの課題が大学運営・財政運営に与える影響の重大性から、それぞれの課題については議論を継続し、その状況をふまえて2020年度以降の学部学費政策を検討することとしました。また、大学院については、2018年度全学協議会において2020年度までの学費政策を決定していることから、学部の学費政策サイクルと一致させるかどうかについて検討を行うこととしました。

2.2020年度・2021年度学費政策

(1)2018年度学費政策議論から継承する3つの課題とその検討状況

1)入学定員管理の厳格化への対応

R2020財政運営では、毎年度の予算・決算等を反映しながら基本収支試算を更新し、経常収支差額等の財政運営指標の見通しを点検しています。収支試算では学生数が重要な前提のひとつになりますが、この学生数について、2019年度入学試験にむけた検討の中で、入学者数は定員を原則とすることを確認しました。

この原則にもとづく基本収支試算では、2019年度以降の経常収支差額(法人全体)はほぼ均衡で推移する見通しとなっています。

しかし、文部科学省による入学定員管理厳格化やそれを背景とする大学・受験生の入学手続等をめぐる動向の変化により、入学者数が定員を下回る結果となっています。今後の大学入試改革による影響も視野に入れながら、引き続き適正な入学者数管理に努める必要があります。

2)社会諸制度改革への対応(働き方改革)

本学の教育・研究活動は多様な職種の教職員によって支えられ、実践されています。学生・院生のみなさんの学びと成長をより充実したものとするうえで、施設条件や教学制度と同様に、多様な職種によって構成されるすべての教職員にとって本学で教えること、働くことの魅力ややりがいを高めることが重要です。

社会諸制度改革への対応については、常任理事会のもとに委員会を設置して議論をすすめてきました。この委員会では、焦眉の課題として、公正な待遇の確保(同一労働同一賃金等)に関する課題整理等とともに、2022年度実施を目処とした「立命館版働き方改革」の必要性が検討されました。2018年度の検討内容をふまえて、具体的方策についての検討を継続することとしています。

3)協創施策(ラーニング・イノベーション)の推進

第Ⅱ 章のとおり、2019年度・2020年度の協創施策は、既存予算の組替により予算措置し、取り組みを開始しています。

協創施策の後半期にあたる2021年度・2022年度の施策については、今後、2019年度全学協議会での教学議論やR2030チャレンジ・デザインの検討等と並行して、協創施策推進本部会議を中心に具体化にむけた議論を本格化していく段階にあります。

  • 全学協議会 学生の様子
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(2)2020年度・2021年度学費政策

2018年度の学費政策議論において継続検討することとした3つの課題については、それぞれ検討がすすめられてきていますが、上記のとおり、具体的な方策や財政規模を決定する状況にはありません。

学費政策の本来的な前提のひとつとなる教学政策や2022年度以降を想定した「立命館版働き方改革」等について、今後、抜本的な検討がすすめられることになります。

2019年度全学協議会は、教学課題の具体化にむけたすすめ方や方策等についての共有化・懇談を行い、R2030がスタートする年度でもある2021年度に開催することになる全学協議会を視野に入れて、教学政策・学費政策それぞれ次の段階へと検討をすすめる出発点になります。

また、大学院の学費政策に関連する大学院改革については、第Ⅱ章のとおり、教学的課題として取り組んでいる定員確保について一定の水準を維持しています。また2019年度からキャリアパス形成支援等のいくつかの方策について新設・拡充を行うこととしています。

こうした状況等を勘案して、2021年度までの学費政策では、基準授業料は据え置き、現行の授業料改定方式を継続することとし、上記3つの課題への対応等としての学費改定は行いません。

そのうえで、近年、他大学において入学金の減額が相次ぎ行われた結果、本学の入学金が他大学に比べて高い水準になっていることから、入学金の引き下げを行います。この見直しによる財政的な影響への対応と、過去における入学金増額に対応して導入したという経過から、学部の1年次授業料に適用していた新入生特別減免を原則解消することとします。

入学金

近年、他大学では今後いっそうのグローバル化の進展等を見据えて、入学金が減額されてきています。この動向や他大学の入学金水準等をふまえて、2020年度以降の学部および大学院の入学金は現行の30万円から20万円に引き下げます。

2019年度以前の入学者に適用する授業料

2019年度以前入学者の2020年度授業料は、すでに入学時に明示しているとおりとします(変更はありません)。

2020年度・2021年度の入学者に適用する授業料改定方式等

※グローバル教養学部については、現行どおり、オーストラリア国立大学との協定に基づいて授業料を決定します。

学部、大学院(博士課程前期課程、修士課程、一貫制博士課程(1・2年次)、専門職学位課程)

学部、大学院いずれも、2021年度入学者まで、基準授業料を据え置いたうえで、現行(学部は2019年度まで、大学院は2020年度まで既決)の授業料改定方式を継続適用します。

なお、今回の入学金の引き下げに伴い、これまで学部の1年次授業料に適用していた新入生特別減免(1年次授業料は、基準授業料から薬学部薬学科以外の学部学科は16万円、薬学部薬学科は21万円を減額)は、薬学部薬学科の減免額を5万円として継続するほかは解消します。

このことにより学部入学者の学費額(入学金と授業料の合計額)は増となりますが、今回の入学金および新入生特別減免の見直しは、入学手続者の人数規模や構成等をふまえながら、財政規模(収入規模)を維持すること(見直しによる減収や教学条件の悪化をさせないこと、また増収を図るものではないこと)を前提に判断しています。

2020年度入学者の授業料は直近年度(2018年度)の消費者物価指数にもとづくアップ率(1.4%)を用いた計算の結果、別表のとおりとします。

2020年度・2021年度入学者に適用する授業料改定方式

新年度授業料=基準授業料×(1+物価指数アップ率)

  • 「基準授業料」は2018年度入学者の授業料とし、新入生特別減免を除く授業料年額とします。
  • 「物価指数アップ率」は、消費者物価指数(全国総合)の2015年度平均値を基準として、直近年度平均値における上昇率を用います。ただし、上昇率が1.0ポイント未満の場合は適用しません。
  • 算出された新年度授業料が前年度授業料を下回る場合は、前年度授業料と同額とします。
  • 算出された新年度授業料の1/2(百円単位で四捨五入)を学期授業料として当該年度入学者に適用します。
  • 経営管理研究科の「基準授業料」は「単位授業料(1単位授業料×23単位)+固定授業料(春学期+秋学期)の額とし、1単位授業料は48,000円、方式による改定があった場合は固定授業料に加算します。

大学院(博士課程後期課程、4年制博士課程、一貫制博士課程(3年次以上))

大学院(博士課程後期課程等)については、2021年度入学者まで現行の授業料(学期額250,000円)を継続します。

在学期間の授業料明示

現行と同様に、入学時に在学期間の授業料を明示する方式とします。

ただし、社会的要因による急激で大幅な物価上昇等があり、その影響への対処として在学生を含む授業料改定が余儀なくされた場合には、緊急的な措置として授業料改定を提起します。

R2030にむけた財政課題

学費の重みや今次の学費政策の内容等をふまえて、学費政策以外の財政課題として、主に次の経営努力課題に徹底的に取り組みます。

これらの課題は、いずれもR2020後半期の財政課題として位置づけているものであり、その進捗を図りながら、R2030チャレンジ・デザインおよびR2030財政運営基本方針等の検討・策定をすすめていきます。

  • 入学者数(学則定員)の適正管理
  • 事業評価等に基づく支出予算見直し(PDCAの本格実施の前倒し)
  • 寄付金政策の強化(体制強化)等
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