第Ⅱ章

各パートから出された主要な論点

2018年度全学協議会の協議の中で、各パートから出された主要な論点を本章で記載します。

1.学友会から出された主要な論点

学友会は、多くの学生が課題認識を持ち改善が必要な事項について、優先的に大学(常任理事会)と協議をする必要があるという立場から、2018年度全学協議会で論点を提起するにあたり、学友会独自に全学生を対象としたアンケート(以下、学友会アンケート)を実施しました。この学友会アンケートの結果を踏まえ、(1)大学の学び(正課・課外)について、(2)キャンパス環境について、の論点を提起しました。また、(3)大学から提起をした2019年度以降の教育・学生支援施策についても学生の立場から主張・指摘をしました。さらに、(4)学費提起と全学協議会の開催についての論点を提起しました。具体的には以下のとおりです。

(1)大学の学び(正課・正課外)について

学友会は、まず第1に、学友会アンケート結果を受け、学びの環境を安心・安全に確保するという観点から、自然災害等の非常時における授業の休講措置に関する判断基準の見直しを求めました。この休講措置に関連し、学生の学ぶ権利への配慮から自然災害等によりやむを得ず授業を欠席した場合に、この欠席を補うための教員から学生への授業外学習の指示等の適切なフォローアップも併せて検討することを求めました。

第2に、立命館大学生の授業外学習時間が相対的に少ないという実態を背景に、学生の知的好奇心を喚起し、興味関心を高める授業の実践を求めました。また、この授業方法を実践するにあたり、すべての教員が教育・研究に専念できる労働環境が重要であることも指摘しました。これらの主張は、「教育の質向上」を求めるものであり、この教育の質向上や学生の満足度、成長実感に関して客観的な評価指標を設定し、検証をすることも求めました。

第3に、正課・課外ともに学生の成長にとって重要で教育的意義のあるフィールドであるという認識を学友会・大学ともに改めて確認をした上で、課外自主活動によりやむを得ず授業を欠席する場合に、授業配慮の制度として運用されている「試合等参加証明書」が、教員によっては受理されないなどの実態がある点を指摘し、改善を求めました。

第4に、課外自主活動で使用する施設に関して、安心・安全に活動できるよう、修繕・改修についての相談窓口やフローの透明化を求めました。また、新たに整備が必要な施設については、引き続き協議することを要望しました。

(2)キャンパス環境について

キャンパス環境の整備に関わる課題に関して、学友会は2016年度全学協議会の確認事項をさらに具体化し、「キャンパス整備の検討段階において、様々な学生の意見が反映される意見交換の場を設ける」ことを継続して要望しました。また、学友会アンケート結果から、特に学生の関心が高かった以下3点の検討を求めました。

①食環境について、食堂の回転率や快適さの向上、食堂以外の食環境の多様化の検討。

②大学が提示したキャンパス全面禁煙に関わる具体的な4つの取り組み[1)健康と社会に対して喫煙が与える害について、学園構成員に教育し、啓発する。2)受動喫煙による健康被害から非喫煙者を守る。3)新たな喫煙者を発生させない教育、啓発を行う。4)喫煙者の禁煙を支援する。]とそれを達成するための方法として、キャンパス全面禁煙という手段をとっている点の再検討。

③空調設備の柔軟な運用と自習環境について、試験期間における施設開室時間の拡大の検討。

学友会は、特にキャンパス全面禁煙化の取り組み課題について、学生実態に即した重点課題として主張をしました。この背景として、学友会アンケート結果から、受動喫煙の被害を受けていると多くの学生が感じていることを挙げ、これまで大学が取り組んできたキャンパス全面禁煙の取り組みが不十分であることが浮き彫りになってきていることや、これまでの取り組みの継続では、この被害が無くなる見込みが薄い点を指摘しました。また、こうした受動喫煙被害の状況を打開するために、キャンパス内に喫煙専用施設を設けることも案の一つとして提示をしました。

(3)2019年度以降の教育・学生支援施策について

大学が提示した2019年度以降の教育・学生支援施策について、学友会は大学に以下の9点について、見解を示しました。

①導入が検討されているmanaba+Rの新機能である履修・ポートフォリオが、学生支援に効果的に活用されることは重要としつつ、学生の多様で自由な活動の阻害にならないかの懸念があること。

②学友会(自治会)の中に位置づけられるオリター団が長年の取り組みの中で役割を果たしてきたという到達点がある一方で、新入生に対する初年次教育の高度化を考えた場合に、課題も出てきているため、今後のオリター団の活動について、学友会と大学とが協同してワーキングを設置し、別途検討を進めることを要望すること。

③教養教育改革に関わり、IoT・AIなどの技術革新による産業構造の社会的変化である第4次産業革命を見越した分野や、日常生活に関連する分野での教養教育科目の設定を検討してもらいたいこと。

④LGBTや経済困窮層など多様なバックグラウンドをもった学友を迎え入れる観点から、ダイバーシティ&インクルージョンの一層の推進を求めること。

⑤地域貢献や海外経験など、学生の学びのフィールドを拡げる際には、具体的な運用に関する情報提示を求めること。

⑥英語で教育課程を履修する入学者に対し、日本語科目を始めとした系統的なカリキュラムの提供を求めること。

⑦Beyond Borders Plaza(以下、BBP)の積極的な利活用を推進すること。

⑧海外からの留学生の受け入れが増加している一方で、これらの留学生が、履修や住居の情報収集など生活上の困りごとの相談に対応できる窓口が十分ではないことから、言語の壁を超えて相談できる体制として留学生支援コーディネーターの設置を求めること。

⑨英語で教育課程を履修する入学生向けに開講されている科目の拡大を求めること。

(4)学費提起と全学協議会の開催について

学友会は、2019年度入学者学費が据え置きになった点は評価しました。その上で、2019年度以降の新たな教育・学生支援施策に必要となる予算は現行の政策予算等を見直すことで捻出するという大学からの説明に対して、学友会は、現行の教学や、それを支える環境の質低下を招くことに繋がらないかという危惧を示すとともに、残予算の有効活用について指摘しました。また、学費提起のあり方と全学協議会の開催は相互に連関するものであり、持続可能な学園振興や教学・研究の高度化をめざすことを念頭に置いて全学協議会を開催するのであれば、この協議の準備等を勘案すると少なくとも2年以上の期間が必要であることを主張しました。このことから、2019年度の全学協議会では複数年度の入学者学費を提起することを求めました。また、学費提起に関わる協議の場のあり方についても引き続き検討することも求めました。

  • 全学協議会 学生の様子

2.院生協議会連合会から出された主要な論点

院生協議会連合会からは、(1)院生の多様化に関して、(2)院生のキャリアパスに関して、(3)コモンズなどの環境整備に関して、(4)2019年度・2020年度の学費提起に関して、以上4点について論点の提起がありました。具体的には以下のとおりです。

(1)院生の多様化に関して

院生協議会連合会は、「グローバル化による多様化」と「社会人院生も含めた多様化」を取り上げました。留学生院生が増加する中で、各種窓口での日英2言語での対応を求めました。また、キャンパス内だけでなく日常的な生活面でのサポートを求める留学生への対応も課題として指摘しました。これまでは、日本人院生がボランタリーにこうしたサポートを行ってきましたが、日本人院生と留学生院生の割合が逆転したことにより、こうした課題が表面化してきた背景があります。また、海外からパートナーとともに留学に来た院生の住居にも課題がある点を指摘しました。

このほか、これまで院生協議会連合会は社会人院生が学ぶ環境の充実として、託児所の設置を要望してきました。こうした経過を踏まえ、2018年度から保育所がキャンパス内に設置された点を評価するとともに運営に関して連携して取り組みたいとの意見表明がありました。

(2)院生のキャリアパスに関して

以下3つの論点を指摘しました。

①ティーチング・アシスタント(以下、TA)制度が、大学の教育・研究活動にとって重要な制度であり、院生にとっての経済支援の側面もあるなど、一定の役割を果たしてきたという到達点を踏まえ、さらなる業務範囲(学部生に対するアドバイザリーや論文指導補助など)の拡大を求めました。

②奨学金やキャリアパス支援制度について、院生の研究モチベーションにつながるような助成金や支援制度の設置、博士課程後期課程の学会参加費や参加への補助などの制度の拡充、標準修業年限を越えた院生への経済的支援拡充を求めました。さらに、こうした新制度設置や制度変更に際して、院生の意見を踏まえて検討することや新たな制度を始めた場合、複数年度に渡り固定して運用をすることを求めました。

③継続した課題として博士課程後期課程修了後のポストドクトラルフェロー(以下、PD)のポスト拡充を求めると同時にPDの研究環境として机などが十分に配置されていないなどの課題を指摘し、待遇改善を求めました。

(3)コモンズなどの環境整備に関して

リサーチ・コモンズが配置されている、衣笠キャンパスと大阪いばらきキャンパスにおいて、院生数に対して、座席数が十分ではない点を課題として指摘し、改善を求めました。また、リサーチ・コモンズを始めとした院生の研究環境を新たに整備する際や、変更を検討する際には、その検討のプロセスに多様な院生が参加できる機会を設けることも求めました。

(4)2019年度・2020年度の学費提起と全学協議会の開催について

院生協議会連合会は、2019年度・2020年度の学費提起に関して、大学からの提示を肯定的に評価しました。その上で、現行学費を2021年度以降も継続することを要望しました。また、全学協議会の開催については、この間の2016年度からの継続した協議による院生に関する課題解決の進展を評価する一方で、全学協議会での確認事項を評価するには一定の期間が必要であることから、数年に一度の全学協議会の開催を求めました。

3.教職員組合から出された主要な論点

教職員組合からは、全学協議会に参加するにあたり、全学協議会の歴史的経過から、学生・院生を支える立場で協議に参加をしたいとの見解表明がありました。また、教職員組合からは、学友会から出された教育の質向上に関わる課題に関連し、大学教員の労働環境の実態として研究時間の確保が不十分である点や、安定的に充実した教学を提供するために授業担当講師が有期雇用である点を課題として指摘しました。加えて、教職員組合は教学議論に基づく学園財政議論を行うために、財政公開を十分に行うことを求めました。

4.立命館生活協同組合(オブザーバー)から出された主要な論点

立命館生活協同組合(オブザーバー)からは、全学協議会に参加するにあたり、全学協議会の歴史的経過や立命生協で把握している学生実態を踏まえ、学生・院生・教職員などの組合員を支える立場で協議に参加をしたいとの見解表明がありました。

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