第Ⅲ章

2020年度以降の大学の取り組み(確認事項)

2019年度全学協議会での協議を踏まえ、2020年度以降に大学が取り組んでいく具体的な内容を本章にて記載します。これらの取り組みは、今後の教育・学生支援施策である、協創施策(前半期:2019-2020、後半期:2021-2022)での取り組みも含みますが、主に2019年度全学協議会での各パートとの協議を踏まえて確認した点を中心にしたものです。

1.正課・課外の学びの充実

大学は、「立命館憲章」の目的である「地球市民として活躍できる人間の育成」を実現するため、R2020計画で「学びの立命館モデル」の構築を目指してきました。これを具現化するものとして「立命館大学学生育成目標」を定め、正課・課外を包摂した学生生活全体を通じた学びと成長の支援に取り組んできました。
今次の全学協議会での教学議論では、学びの実感がキーワードの一つとなりました。学びの実感は、新たな挑戦や目標の設定に向かう力の源泉となります。大学は、学生一人ひとりが確かな学びの実感を得ながら充実した大学生活を送ることを、いっそう重視します。正課カリキュラムはもとより、BBP、図書館、メディアセンター、さらには国外やインターネット空間を含むキャンパス外においても、学びの楽しさと成果を実感できる場を学生・院生と教職員がともに創り上げていけるよう、大学は力を尽くします。その際、学習の結果だけにとどまらず、多様な学生・院生が個性豊かに成長し、学び合う過程にも注目します。また、個々の科目やプログラム等がばらばらに見えてしまうのではなく、入学から卒業・修了まで一貫性の感じられる、まとまりのある学習経験の創造をめざして、各部局の間での連携を強化します。今次の全学協議会の協議を踏まえ、正課・課外の学びの充実に関する大学の具体的な取り組みは以下の通りです。

(1)受講登録・シラバスの記載内容の見直し

受講科⽬を選択する際に、科⽬の到達⽬標、授業の概要と⽅法、成績評価⽅法などを⽰すものとしてシラバスがきわめて重要であることを、学友会と確認しました。そのうえで、学友会アンケートの結果を踏まえ、2020年度シラバスの記載内容を改善し、また2020年度『学修要覧』における受講登録に関する説明の改訂にも着手しています。シラバスの改善点は次の通りです。

  • 科⽬のカリキュラム上の位置付けが分かるようカリキュラムマップや科⽬番号などを各科⽬のシラバスから参照できるようにする
  • 「授業の概要と⽅法」の項⽬において、授業の形式やフィードバックの⽅法などを記載する
  • 授業外学習の指⽰について、予習・復習の内容や分量をより具体的に記載する
  • 成績評価⽅法について、レポートの回数や平常点評価の内訳を具体的に記載する
  • 教科書について、授業内外での使⽤の頻度・⽅法を記載する。また『学修要覧』では、受講登録の考え⽅、シラバスの読み⽅、到達⽬標の重要性、過去の授業アンケート結果の参照⽅法などについてより丁寧な説明を⾏います。

(2)manaba+Rを含むICTの授業への活用促進およびBYODの推進について

ICTを活用した学習管理システムとして本学で導入しているmanaba+Rについて、学友会から、授業での活用が不十分ではないかとの指摘がありました。大学ではこれまでも、教員にmanaba+Rの積極的活用を呼びかけてきましたが、今回の議論を受けて、manaba+Rの諸機能のうちでも、とりわけ教員がレジュメ等のプリントを配布するために使用する「コンテンツ(教材)」機能の活用を促し、復習や欠席時のフォローアップ、また事前に配布されたレジュメでの予習による授業外学習の活性化を進めていくことを確認しました。
「コンテンツ(教材)」機能の利用率の引き上げについては、全授業での利用率を現行の34%から2020年度末までに40%以上、2022年度末までに50%以上に引き上げるという数値目標を設定しました(授業規模別では、50人超の授業では2020年度末に75%以上、2022年度末に80%以上、50人以下の授業では2020年度末に33%以上、2022年度末に44%以上)。この目標の達成に向けて、利用ガイドブックの活用、TAを通じた利用支援、利用率の低い学部での講習会の開催要請、非常勤講師や授業担当講師への利用案内・支援などの取り組みを進めます。
また、manaba+Rの教材機能の利用にとどまらない、新たなICTの授業への導入についても、学友会より提起がありました。大学ではこの間、ICTを活用した反転授業やライティング・サポートなど、他大学や高校で導入されている先進的な事例についての調査を行ってきました。本学でも、教学上の効果が見込まれる施策については、全学協創施策期(2019-2022年度)の中でその導入が実現できるよう検討していきます。BYODの推進については、その教育効果や必要な施設条件についての全学的な検討に向けて、全学協創施策期中に試行的な環境整備および教育効果の検証に取り組みます。

(3)教学施策・学習成果に関わる情報発信方法の改善

上記の受講登録環境の改善やmanaba+Rの積極的活用の議論において、大学が行っている様々な施策が必ずしも学生には知られていない(見えていない)という問題提起が学友会からなされました。また立命館憲章をはじめとする立命館教学の特性や、2019年度からWEB形式で発刊した『学びと成長レポート』などの、学びのプロセスや成果を可視化したコンテンツを多くの学生の間で広く理解・共有するためにはどうすべきなのかという議論が行われました。
2020年度以降の『学びと成長レポート』の刊行や、2021年度に予定している『未来を拓く』の改訂では、できる限り読みやすく伝わりやすい形での表現・発信を追求します。また、学生への周知については、SNSの活用も含めて、より適切な情報発信方法を引き続き検討します。学部ごとの学びについても、学部の教育の質向上のために配分されている「教育力強化予算」による取り組みの内容や得られた成果について、学部のホームページや五者懇談会などを通じて説明を行います。

(4)外国語教学・グローバル化をめぐって

外国語教学およびグローバル化の⾯では、これまで、スーパーグローバル⼤学創成⽀援事業(SGU)などを通じて、⽇本⼈学⽣海外派遣数で全国第1位となるなどの成果をあげてきました。しかしながら、「学びと成⻑調査」は、個々の学⽣が外国語の学びの成果について実感をもって卒業するという点では、なお課題があることを⽰唆しています。また、学友会アンケートからは、学⽣が外国語や国際感覚をもっと⾝につけたいという想いは、多くの学生が共通して持ちながらも、外国語学習・多⽂化体験に期待するものや獲得したい⼒という点では多様な考えの学生がいることがわかりました。
こうした議論を経て、学習成果の評価において、学びのプロセスや実感に焦点をあてた学⽣⽬線の分析を強化する必要を認めました。またBBPを、習熟度や留学計画の有無にかかわらず、全ての学⽣が⽇常のキャンパスライフの中で外国語によるコミュニケーションや⾃律的な外国語学習を実践し、成⻑実感を⾼めていくことができる場として位置づけることを確認しました。今後BBPでは、正課の語学授業とも連携しつつ、こうした位置づけにふさわしい多様な取り組みを展開していきます。すでに、自律学習促進のためのBBPマイレージの導入など、具体的な取り組みが始まっています。さらに、次年度に向けて、より広い学生を対象とした新たな企画を準備中です。

衣笠キャンパスにあるBeyondBordersPlaza
衣笠キャンパスにあるBeyondBordersPlaza

(5)オリターによる新入生支援活動の充実

2019年度からは、『2018年度全学協議会確認文書』に付した『オリター活動・支援のフレームワーク』を踏まえ、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)と協働した新入生支援に取り組んできました。こうした2019年度の取り組みを踏まえ、2020年度以降の新入生支援に向けて、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)から共通して出された課題は次の2点です。

  • 学部とオリター団との連携を促進するための定期協議等の継続的なコミュニケーションの促進(各学部の1回生小集団科目の実施方針や新入生への支援に関する情報の共有、オリター活動の進捗の共有と助言等)を図ること
  • 支援者としてのオリター学生の力量向上に向けた研修のさらなる充実と研修実施時期の早期化を図ること

これらの課題をクリアにする取り組みは既に開始しています。例えば、2019年度新入生支援に向けたオリター団や執行部を対象にした研修は、2018年12月中旬~2019年2月にかけて実施してきました。これを2020年度新入生支援に向けては、研修内容を充実させた上で、2019年12月初旬から段階的に実施しています。こうした、新入生支援の充実に向けた取り組みは、学友会(全学自治会初年次担当、各学部自治会・オリター団等)と連携を継続して進めます。また、新入生オリエンテーションにおいて、情報過多の傾向が見られる実態への対応については、提供する情報を含めた新入生支援におけるオリターが果たすべき役割の整理・設定について、学友会と継続して協議していきます。

(6)試合等参加証明書の意義や目的の周知徹底

この間、教員に対して本制度の趣旨等を周知するために、教学委員会や学生生活会議で改めてこれを確認しました。その上で、専任教員へは教授会を通じて周知を徹底してきました。また、教授会に属さない非常勤講師等へは書面での制度説明を行いました。しかし、学友会アンケートでの、「依然として試合等参加証明書を受理しない教員が一定数いる」との指摘を重く受け止め、専任教員および教授会に属さない非常勤講師等への効果的な周知に今後も引き続き取り組みます。また、試合等参加証明書が受理されなかった場合の学生の相談窓口を整備し、個々の状況を踏まえた対応ができる体制を構築していきます。

NEXT:第Ⅲ章 2020年度以降の大学の取り組み(確認事項)2.キャンパス環境の向上と学園創造について

2.キャンパス環境の向上と学園創造について

(1)食環境の改善について

大学として、学友会アンケートで示された98%の学生が「食堂の混雑を感じている」という実態を重く受け止めています。これまでも、2019年度OICに開設した分林記念館への飲食可能スペースの設置、2021年4月供用開始を目指したBKCユニオンスクエアの食堂改修の検討等、昼食時の一時的な混雑緩和に向けた継続的な取り組みを進めてきました。今後は、民間レストランの誘致を含めたBKC・C-cubeの全面リニューアル(2020年9月開業予定)、分林記念館1階への飲食店の誘致等を具体化することで、座席数・飲食スペース・メニューの豊富化等の課題改善に取り組みます。検討にあたっては学生も参加したワークショップ等の取り組みも実施していきます。その他、BKCでのコンビニエンスストアやカフェ等の誘致、衣笠キャンパスでは教室deランチ等の食事スペースや移動販売車等のランチストリートの拡充といった要望についても、学生のニーズや利用実態を踏まえた検討を進めていきます。キャッシュレス決済の導入については、OIC・BKCのランチストリートで2019年度中から一部導入を始め、導入店舗の拡大にむけた働きかけを進めます。

分林記念館に新たに設けられた飲食可能なスペース
分林記念館に新たに設けられた飲食可能なスペース

(2)空調管理

学友会の指摘した空調管理の課題について大学は、安心・安全の観点から重要な課題であると認識しています。昨今の夏の猛暑をはじめとした、従来とは異なる熱環境(気候)が背景にあることから、既存の空調設備で対応が可能かどうか検証を行います。また、教室以外の共用スペースでの空調管理について、これまで大学では、共用部(廊下等)は非空調もしくは準空調(間接空調)と位置づけてきましたが、共用部がコモンズや学習スペースとして活発に利用されている現状を踏まえ、共用部の熱環境の改善についても取り組みを進めます。
衣笠キャンパスの明学館の空調設備については、2020年度夏期までの間に性能の確認や熱環境の実態を調査した上で、必要な対策を実施します。OICのコンコースについては、2019年度中に測定した暑さ指数(WBGT値※4)等について検証を行います。その検証結果を踏まえ、2020年度の夏期を視野に入れ、必要な改善を進めます。
この他、教室内での空調の取り扱いに関する周知徹底について、教員へは各種会議体を通じて呼びかけを行います。また、利用する教員・学生に共通する対応として、空調に関する問い合わせ先を記載した案内を各教室に2019年度秋学期中から順次掲出します。

※ 4 人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい①湿度、②日射・輻射( ふくしゃ) など周辺の熱環境、③気温の3つを取り入れた指標。

(3)キャンパス禁煙について

大学は法令改正を受けて、「特定屋外喫煙場所」としての要件を満たす新しい「卒煙支援エリア」の段階的整備等による受動喫煙防止策の実施や、教職員を対象にしたキャンパス内禁煙を含む受動喫煙防止に関する規程の制定等を実施してきました。一方、学友会アンケートで4割の学生が「望まない受動喫煙の被害を受けている」と回答している実態を大学は、深刻に受け止めます。今後の取り組みとして、衣笠キャンパスでは以学館西側の特定屋外喫煙場所の吸煙式灰皿の設置及び移設、BKCでは喫煙の多いコラーニングハウスⅠの外階段ドアのパニックオープン化※5、OICでは秋学期に現在2カ所ある特定屋外喫煙場所を1カ所に減らすこと等の検討を進めていきます。また、2019年6月に大学が制定した『学校法人立命館受動喫煙の防止に関する規程』を踏まえた教職員のキャンパス禁煙を促進する取り組みをさらに進めます。加えて、2019年度から新たな喫煙者を生まない取り組みとして、学友会と連携した新入生への健康教育を始めており、この取り組みを広げていきます。
キャンパス禁煙化を目指す方向性については、各パートと見解が分かれました。しかし、大学として、学生生活の向上・キャンパス環境の充実を図っていく上で、キャンパス禁煙化は不可欠な取り組みであると認識しています。この上で、受動喫煙防止とキャンパス禁煙化の取り組みは、大学と各パート、教職員と学生・院生が一体となって取り組む必要があると考えています。今後も大学として受動喫煙の防止とキャンパス禁煙化に向けたより一層の取り組みを進めます。

※ 5 一般的には非常時に“自動ドア”や“電気錠”が開放されて避難経路を確保する仕組みのことを指しますが、こちらでは、非常時には破壊して避難経路を確保できるような非常用カバーを屋外へのドアのサムターンに設置することを指します。

(4)学生が最先端の研究に触れられる環境の整備について

RS2019特別号で仲谷総長は、最先端の研究成果を日常的に体験するなど、知的好奇心を喚起する機会、そこから課題の発見や挑戦にいざなう、質の高いグローバルな教育・研究環境となる「わくわく」する大学・キャンパスを創造する議論を呼びかけました。この一環として、企業と連携した最先端の運搬ロボットや清掃ロボット等の実証実験を始めています。学生も参加して人とロボットが協業する新たな価値の創出に向けたチャレンジとして進めていきます。他にも2019年4月に「立命館SDGs推進本部」を設置し、SDGs※6の達成に向けた学生・生徒・児童や教職員の教育研究活動を取りまとめた情報発信やそのサポートを進めます。
他方、全学協議会の協議の中でもこうした取り組みが学生に十分届いていないとの指摘がありました。多くの学生が最先端の研究成果に触れ、知的好奇心を高め、社会が直面する課題にチャレンジするような施策を、学生とも継続的に議論していきます。

※ 6 開発アジェンダの節目の年、2015年の9月25日-27日、ニューヨーク国連本部において、「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として、『我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ』が採択されました。アジェンダは、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標をかかげました。この目標が、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継であり、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」です。
国際連合広報センター主な活動持続可能な開発目標SDGsとは 閲覧日:2020年1月8日)

(5)その他、キャンパス環境の質向上に関して

上記以外で学友会を中心に出されたキャンパス環境の質向上に向けた取り組みは以下の通りとなります。なお、こうしたキャンパス環境の質向上に向けた取り組みは、キャンパス懇談会等で継続的に協議し、改善をすすめます。

①課外自主活動施設の整備について

学友会からはOICの課外自主活動施設に関して、多くの学生と活動・交流できる場所を一定期間確保したいという要望が出されましたが、既存の施設・制度で対応することが可能であることから、施設等の利用方法の学生への周知、情報発信を工夫することを確認しました。
本学は正課・課外を通じた学びを支援する観点から、施設整備・貸与をはじめ奨学金・助成金等、顧問・副部長等の配置など、これまで様々な課外自主活動への支援を行ってきました。こうした中、既存のクラブ・サークル等に加入して活動する学生は近年減少傾向にあり、2018年度の学生数に占める既存のクラブ・サークル等である課外自主活動団体参加者の割合は61.4%(学生情報システムの登録情報による)となっています。他方、2019年度の新入生アンケートや学友会アンケートでは、7割~8割程度の学生が学内外問わず正課以外の活動に参加していると回答しています。このことから、学生が従来のクラブ・サークル活動だけはなく、学外でのインターンシップやボランティアを含めた多様なフィールドでの学びの機会を課外自主活動と捉えていることが推察されます。今後の懇談会等でこうした学生実態を学友会と共有し、学生の意識や活動実態を踏まえた大学としての適切な支援のあり方と合わせて施設整備についても検討を進める必要があります。

②学生窓口の拡充・学園のスマート化、キャンパス環境(混雑状況等)の見える化

学友会が求めた施設利用に関する受付窓口の開室時間の延長・拡充は、受付窓口の開室時間の制約を受けない教室・施設利用申請を可能にすることで、既存の活動のさらなる活性化やキャンパスを超えた課外自主活動を促進する環境整備を求めるものであると理解しています。こうした趣旨を受け止め、受付窓口の開室時間の変更は行いませんが、利用申請をWEB化することで、時間・場所を問わず、使用状況の確認、利用申請ができる仕組みを構築し、学生の課外自主活動環境整備に取り組みます。WEB予約システムは、2020年度中の導入を目指して検討を進めています。
また、課外自主活動に関する情報発信の充実について、デジタルサイネージやWEBの一層の活用等の課題について実態を踏まえつつ、対応策を検討します。
この他、快適なキャンパス環境の整備につなげるため、食堂や駐輪場、バス乗り場等のキャンパス内の混雑状況が「見える」環境づくりの課題に取り組みます。この一つとして、IoTに関する最新の技術と経験を持った企業等と連携し、2020年度から試行的な取り組みの具体化を始めます。

③キャンパス間シャトルバスの運行の改善

大学は、学部やキャンパスを超えた自主的な学びを促進するため、シャトルバスの運行を行っています。この利用実態は、全体の乗車率が25%程度です。他方、一部のダイヤに学生が集中し混雑が生じている現状があり、この点が学友会からの指摘の課題であると受け止めています。この課題解決に向けて、混雑している時間帯としていない時間帯を見える化した「混雑マップ」を、利用する学生に配布する取り組みを行うことから始めます。また、これまでも学生の声を踏まえたダイヤの改善を進めてきましたが、改めて2020年度の運行ダイヤ策定に向けても学友会と連携して検討し、課外自主活動の実態に即した運行ダイヤの設定を進めます。

④通学に関する課題

大学での充実した学びを進める観点から、これまでも行政・公共交通機関等と連携し、キャンパスごとの学生の通学環境の整備・改善を図ってきました。2020年度に向けて、衣笠キャンパスでは通学時間帯のバスの混雑解消を図るべく、行政や公共交通機関等と増便等について継続的な折衝を行っています。折衝は2020年2月を目途に完了する予定です。
また、BKCでは、2019年12月にキャンパス内駐輪場の適切な設置場所を検証する実証実験を学友会と連携して行いました。この実証実験結果を踏まえ、改善策を検討します。

⑤奨学金に関して

私学として可能な限り教育の機会均等を保証し、正課・課外を通じた多様な学びと成長を促進するため、本学の奨学金制度は、2012年度以降、「成長支援型奨学金」と「経済支援型奨学金」の2つの枠組みを設定し、運用を行ってきました。現在、これらの奨学金制度の到達点と課題を整理するとともに、2021年度以降の次期奨学金制度を検討しています。特に経済支援型奨学金については、2020年4月の国による高等教育の修学支援新制度の実施を踏まえ、現行制度の再整理を既に進めています。
上記の枠組みのもと、多様な奨学金制度を通して多くの学生を支援してきた一方で、学友会からは「制度がわかりにくくなっている」という指摘がありました。現行奨学金制度の見直しにあたっては分かりやすい制度設計に努めるとともに、奨学金ホームページおよびmanaba+R における情報発信や新入生向けの奨学金ガイダンス等を実施し、引き続き奨学金別に適切な時期に情報発信を行っていきます。

⑥ダイバーシティ&インクルージョンに対応する環境の整備について

本学は2011年度以降、包括的学生支援の体制を段階的に構築してきました。2018年度全学協議会ではジェンダー・セクシャリティに関する支援・相談体制の整備が議論され、この間、学生部を中心に検討を実施してきました。2020年度中には大学におけるジェンダー・セクシャリティに関する支援の基本方針案を作成した上で、支援ガイドラインについて検討します。また、この支援の前提となる学生実態を把握するため、定性的な調査を2020年度中の実施に向けて取り組みを進めていきます。

NEXT:第Ⅲ章 2020年度以降の大学の取り組み(確認事項)3.大学院教学の充実について

3.大学院教学の充実について

(1)グローバル化

⼤学院においても、教学の国際化が、院生⾃⾝が海外の⽂化などに対する意識を⾼め、多様な⽂化的背景をもつ⼈々との交流により、新たな学びや気付きに到達することを⽬指すものである点は、学部と同⼀です。日本語を母語としない留学生への手続きや制度に関する窓口での説明については、わかりやすい説明を行います。さらに、留学生に関わる行政関連の諸手続き等については、各研究科を含めた関連部局の情報共有を強化していきます。図書館など⼤学施設利⽤の24時間化や国際寮の⼊寮基準緩和の要望については、環境⾯・施設⾯の制約により、短期的に解決策を⾒出すことは現状では困難です。しかし、国際的⽔準を意識することは必要であり、⼤幅に劣る部分の改善について引き続き検討を⾏います。外国語教育では英語に焦点があたることが多いですが、⽇本⼈院⽣が英語以外の外国語を習得することは、研究において重要であり、時として不可⽋です。BBPを含む⼤学の外国語教育のリソースを活⽤する可能性の具体的な検討に向けて、まずは、院⽣協議会の協⼒を得ながら、教学部と国際部で⼤学院⽣の要望やニーズの把握に取り組みます。

(2)施設整備課題

共同研究室の座席不⾜並びに⽼朽化の課題は以前から⼤学としてもよく認識しています。施設整備を進めるにあたっては、キャンパスの特性や教学・研究の分野ごとのスタイルの違いや⼤学院⽣の要望を考慮します。そのためにキャンパスごとの施設整備計画を検討する将来構想検討委員会などの適切な場での議論を⾏い、可能な対策を順次実施していきます。当⾯の具体的対策として、2020年4月の共同研究室不⾜が予想されるOICで、新たな研究室⽤のスペースを確保します。印刷環境などの利⽤可能な施設機能がキャンパスによって異なる点については、その運⽤を取り決めた時点での⼤学院⽣の要望を取り⼊れた結果ですが、全学的な統⼀が現時点での⼤学院⽣の要望であるならば、それに沿った⾒直しを検討します。

(3)キャリアパス形成と就職活動の⽀援

現行のキャリアパス形成支援制度群は、実施状況や成果を定期的に検証し、院生の利便性の向上や予算の有効活用のための部分的な見直しを重ねながら継続的に実施してきました。それらは全体としては、院生からの高い評価を受けていますが、いくつかの改善の要望も出されています。博士論文出版助成制度の運用上の課題に対しては、院生の要望に沿って改善を行います。これらの制度は5年間を単位として設計しており、院生協議会との議論や各種アンケート等を踏まえながら、2021年度以降の中期的なスパンで制度全体の見直しに取り組みます。
博士課程前期課程・修士課程の院生への就職活動支援は、キャリアセンターにおいて学生と同様に行われており、より一層の充実を目指して継続します。また、今後は、博士課程後期課程院生への就職支援についても、教学部とキャリアセンターで連携して検討を進めます。

NEXT:第Ⅲ章 2020年度以降の大学の取り組み(確認事項)4.学費提起と2021年度全学協議会へ向けて

4.学費提起と2021年度全学協議会へ向けて

(1)2019年度全学協議会での学費議論

今次の学費政策として、大学は、2018年度の学費政策議論において検討を継続することとした3つの課題(入学定員管理厳格化への対応、社会諸制度改革への対応、協創施策(ラーニング・イノベーションの推進))についてそれぞれ検討を進めてきました。しかし、現時点では具体的な方策や財政規模を決定する状況になく、今後抜本的な検討が進められる状況にあることを勘案して、2021年度までの学費政策では基準授業料を据え置き、現行の授業料改定方式※7を継続すること、大学院の学費政策を継続すること、入学金の引き下げと、そのことによる収入減少への財政的な対応として、これまで学生の授業料(1年次春学期)に適用していた新入生特別減免を原則解消することを提起しました。
これに対して学友会からは、実質増額となる学費に見合った教学や学生生活課題の議論が伴っていないことを考えると、全ての学生に対して納得のいく説明がされていないという指摘がなされました。また、教職員組合からは学費を負担する側の立場に立って説明する必要があり、学費を負担する学生や父母の実態や、受益感覚に真摯に向き合わなければ、学費への納得感を得ることは困難であるとの見解が表明されました。
大学は、今回の学費提起に際して、学生父母の家計実態や今後の情勢対応課題等を含む厳しい議論をしましたが、収入の大部分を学納金に依存せざるを得ない私学の財政構造そのものの課題を抱える中で、学費額増加をお願いすることになってでも収入規模を維持せざるを得ないと判断したのは、現在の教学条件・財政条件を保障しながら、今後の諸課題への対応を通して、さらに教学を充実・発展することが重要であるとの結論に達したためであるという説明をしました。このうえで2022年度以降の学費政策については2021年度に改めて全学協議会を行い協議することを提起し、これを確認しました。

※ 7 現行の授業料改定方式(2020 年度・2021 年度入学者に適用する授業料改定方式)は以下の通りです。

新年度授業料=基準授業料×(1+物価指数アップ率)
  • 「基準授業料」は2018年度入学者の授業料とし、新入生特別減免を除く授業料年額とします。
  • 「物価指数アップ率」は、消費者物価指数(全国総合)の2015年度平均値を基準として、直近年度平均値における上昇率を用います。ただし、上昇率が1.0ポイント未満の場合は適用しません。
  • 算出された新年度授業料が前年度授業料を下回る場合は、前年度授業料と同額とします。
  • 算出された新年度授業料の1/2(百円単位で四捨五入)を学期授業料として当該年度入学者に適用します。
  • 経営管理研究科の「基準授業料」は「単位授業料(1単位授業料×23単位)+固定授業料(春学期+秋学期)の額とし、1単位授業料は48,000円、方式による改定があった場合は固定授業料に加算します。

(2)今後の全学協議会について

2018年度全学協議会での確認の通り、2021年度の全学協議会では、R2030中期計画とそれに対応する財政運営基本方針の策定を受けて2022年度以降の4年間(2022年度〜2025年度。中間点検を行う方針で、その点検内容等は今後検討を行う)の学費政策について提起することとしました。
2021年度の全学協議会に向けては、学友会から論点としてあげられた「学費の重みに応える」財政運営として、学納金への依存軽減を図るための「収入強化」「経費削減」に引き続き努めることと、同時に「学費負担の納得感」が得られるよう、「教学施策」と「財政施策」を両輪で考え教学・学生生活の質を向上するように取り組み、学習成果や学生の成長の可視化と財政の可視化に引き続き取り組んでいくことを確認しました。
財政の可視化については、2019年度に学友会と大学とで意見交換等を行いました。2021年度全学協議会に向けては、2020年度中に各パートとの懇談等を行いながら、学生・院生が学園財政の理解をより深められるような情報公開のあり方等について今後検討することとしました。
こうした全学協議会の取り組みは、学生・院生・教職員とのコミュニケーションを図りながら、より良い大学・学園にしていく場として重要です。このより良い大学・学園に向けた取り組みを評価する観点として「学生が成長を実感できているかどうか」が重要であることを確認しました。これを可視化する取り組みに向けた協議が、今次の全学協議会の象徴の一つであったと言えます。次回の全学協議会に向けて、2020年度には全学協議会代表者会議を開催し、各パートとも継続した協議を行っていきます。

2020年1月29日
2020年1月29日
学校法人立命館 総長 / 立命館大学学友会 中央常任委員長 / 立命館大学院生協議会連合会 会長 / 立命館大学教職員組合 執行委員長 / 立命館生活協同組合 理事長(オブザーバー)