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SGH 広島研修を実施しました
2014.08.02
Super Global High
School (SGH)
SGH広島研修報告
2014年度 SGH広島研修を実施し、広島平和記念資料館見学や広島大学附属中・高等学校生徒との共同フィールドワークなどを行いました
この研修は、本校SGH課題研究テーマのもと、国際的な視点に立脚した世界平和への想いを、広島平和資料館や平和公園の訪問や現地高校生との交流を通じて獲得し体感することを目指しておこなったものです。
事前学習
計三回の事前学習を持ちました。高校生として平和学習に臨む姿勢やなぜ広島へ行くのか、ヒロシマとはどのようなところなのか等の学習を経て、三回目は総まとめとして立命館大学平和ミュージアム見学を実施。そこで戦前のみならず戦後の国際問題における平和を脅かす要因としての戦争や紛争や民族対立等を幅広く学びました。
また、広島に行く意義として、世界遺産としての広島原爆ドームの歴史的背景を学んだうえで、遺跡の保存と継承の問題について考え、また、「安からかに眠って下さい/過ちは繰返しませぬから」という文言の慰霊碑問題から、戦争における加害と被害の立場から戦争責任とは何かについて考えました。さらに、現在生きている私たちがそれらをどのように受け止めればいいのかという視点、また、原爆被害は数多くの外国人の方々にも及んでおり、日本一国で完結するものではなく世界的視点でヒロシマや原爆の問題を考えなければならないという視点、さらに、広島の現地高校生はそれらをどのようにとらえているのかという視点などを持ちました。生徒たちは、これらを踏まえて研修に臨みました。
1日目
まず、広島平和記念館を見学しました。一人ひとりがそれぞれメモをとりながら、熱心にじっくりと時間をかけて丁寧に展示物や解説などに見入っていました。2時間以上かけて原爆の実相とその被害の甚大さ、生々しさを目に焼き付け、言葉を失うほどの衝撃を受けました。それでも現在に生きる人間として、また未来に対する責任として目を背けることをせず、真正面から向き合っていました。その後、平和公園内にある国立広島原爆死没者追悼祈念館を見学し、原爆投下の時刻である8時15分を中央に象ったモニュメントのある真暗な空間で静かに瞑想し、亡くなられた方々に想いを馳せました。その後、被爆者の方からお話をお聞かせいただく機会を得ました。講師として講話をしていただいた被爆者の方は外国人の方で、原爆の被害による悲惨な当時の状況はもとより、そのなかでいかに前向きに生きていくことができるのかということや、外国人差別についても赤裸々にお話をしていただきました。戦争前夜から戦争に突入し、その後戦況が悪化する中で徐々に変化していく日常生活の様態、原爆が落とされた瞬間のまるでコマ送りされたかのような詳細な記憶による再現、広島が「なくなってしまった」恐怖、戦争がいかに恐ろしいものかということを何度も繰り返し説かれました。思い出すだけでも恐ろしいと言われ、語りたくないほど残酷なその状況とそれを受け止めたこころの葛藤を敢えてお話いただきました。生徒たちは、質疑応答の後、会自体が終わってもすぐに立ち去ることができず、話の重みにこころとからだを委ねてしばし沈黙してしまいました。それでも生徒たちは、涙ながらに衝撃的なそのお話の内容を誠実に受け止めようとしていました。それと同時に、数多く受けた差別の苦しみは周囲のやさしさによって忘れることができた、人をいたわる心が平和につながると思う、と涙を流しながらお話いただいた講師の方の人柄や、その生きる姿勢に共感することができました。
2日目
この日は大変な暑さでしたが、1945年8月6日もこれ以上の暑さだったかと想いを巡らせつつ、広島大学附属中・高等学校生徒との共同フィールドワークとして、平和公園を中心としてその周辺を含む碑めぐりを実施しました。同校は、日本で最初のユネスコスクールに認定された伝統校であり、これまでも活発に平和教育をされてこられ、活動主体の部活動としてユネスコ班(部)をお持ちで現在51名が在籍しておられるということでした。今回はそのうちの16名の生徒が本校生徒のために駆けつけて下さり、また、この日のために、平和の鐘からはじまり、原爆ドーム、相生橋、被爆アオギリ等を経て原爆死没者慰霊碑までの碑めぐりコースを考えていただき、さらにはガイドブック冊子までも作成してくださいました。両校生徒は、それを読みながら実際の碑を一つずつ巡り、それぞれの碑の前では広大附属生徒にその碑にまつわる説明を丁寧にしていただきました。本校生徒たちはその話に聞き入り、実際に触れてみたりあるいは広大附属生徒と意見をかわしたり、あっという間に二時間が過ぎてしまいました。
生徒たちにとっては、前日に資料館での見学や講話等で話があったその実際のものを、自らの目で見て感じることによって、考えることも多かったようです。実は、説明自体は碑めぐりボランティアの方々が現地にはおられ、その方たちに依頼をすることもできましたが、自分たちと同年代の高校生から説明を聞くことの意義は大変深いものがあるという思いから今回の企画を実施しました。大人から聞く平和を巡る言説に耳を傾けることも大切ですが、生徒たちの皮膚感覚に直に伝わってくるという点では、同じ高校生がどう感じ、何を語るかということを知ることが重要だと考えたからです。碑めぐりの後、ランチをともにし今後の交流を約束して広島をあとにしました。
今回の広島平和研修では、現場に実際に訪れ、また、現地高校生との交流を通じて国際的な視点に立脚した世界平和への想いを獲得し体感することを目指すものとして実施しました。国際平和実現への道程は決して簡単なものではありませんが、自分たちが置かれている立ち位置や、今後どう考え、何ができるのかということをより深く考え、学ぶことができたと思います。「この想いを誰かに伝えたい」。このように語る生徒たちを目の当たりにして、今後の活躍がますます期待されると考えています。今年度広島で実施した本校SGH構想における平和研修は、次年度以降も様々な場所でのフィールドワークを通して、多角的・複眼的に実施していきたいと考えています。