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SGH フィリピン研修を実施しました

2015.01.25

Super Global High School (SGH)
SGHフィリピン研修報告


SGH フィリピン研修実施報告


 2015年1月5日(月)~12日(祝)、高校2年生GLコースと高校1年生GJコースの生徒20名と教員2名で、フィリピン研修を実施しました。
 生徒は希望者のなかから選抜された20名で、訪問先は、昨年度11月の台風で大きな被害の出たレイテ島にある、本校とはJSSFへの参加でなじみの深いPhilippine Science High School Eastern Visayas Campus (PSHS EVC) と、フィリピンの首都 マニラでした。マニラでは、主に「貧困」についての研修を行い、レイテ島では「災害」に関する研修を行う、まさに本校のSGHのテーマに沿った内容の研修でした。

以下、日程を追って振り返ります。


1日目

国内線の遅れで、一時間ほど到着が遅れましたが、無事にタクロバンに着きました。
 PSHS EVCの皆さまに大歓迎いただき、夕食の後、生徒はこちらのホームステイに分かれて行きました。
 まだまだ台風の爪あとが多く残っていましたが、117日にローマ法皇の訪問があることもあって、道路の補修は、まだデコボコは多いですが、ほぼ開通し、また、ホテルも満室で、少し活気が出てきている気がしました。

     


2日目

心配していたホームステイですが、心配とは反対に、ステイ先のご家庭には豪邸が多く、家にメイドの人が4人もいたとか、あまりこちらの期待していたような、台風の被害から懸命に立ち直る途中というようなご家庭は少なかったのですが、まあ、全員が順調にスタートをしました。
 それでも、電気が停電になるので、ローソクの明かりで寝たという男子生徒もいましたし、どの家庭でも、お風呂は当然お湯でないので、プールのように水を頭からかぶってシャンプーしたという女子生徒もいました。

本日の活動ですが、朝から全校集会を開いてセレモニーがあり、全員が自己紹介をしたのですが、本校生徒のなかでも少し現地の言葉で挨拶する生徒もいたり、なかなか好評でした。
 今日は、一日、学校で過ごすプログラムで、どちらかというと長い移動の疲れもあるので、リラックスしてバディとかPSHSの生徒と仲よくなるのが中心でした。午前には、体育の教員の指導により、伝統的な竹を使ったダンスの練習をしたり、バディの生徒と校舎見学をして台風の被害を実際に見聞したりし、午後には、記念植樹ということで、校内の数カ所にフィリピンの生徒と立命館の生徒とで植樹を行い、地盤の強化に役立つ強い木に育てと願いを込めました。

 

 

 

3日目

3日目は、先日12月に再度襲った台風で山崩れの被害の出たTanuuan市を訪れ、仮設住宅を訪問して住民の方にインタビューをしたり、その前の台風の被害の状況をつぶさに見にまわったりしました。ちなみに、住宅街に打ち上げられていた例の大きな船は、解体が進み、先頭の部分だけになっていました、、、)、見学や調査の研修を行いました。

その後、夜の7時から、バディの生徒とホームステイ先のご家族を招き、学校でFiestaが行われました。フィリピンの生徒の踊りの発表に続き、本校生徒もソーラン節を踊りましたが、午前中に30分程度の練習をしただけでしたが、フィリピンの生徒やご家族の協力もあり、大いに盛り上がりました。その後、Directorのガーナンスの音頭取りで、大カラオケ大会となり、終わったのが、こちらの10時半過ぎ(日本時間11時半過ぎ)でした。
 学校の設備としてカラオケがあるのも驚きでしたが、それ以上にそんな夜中まで校庭で大騒ぎして、皆さんの陽気さにビックリでした。

       

  


  


4日目

4日目の今日は、朝から雨になりましたが、午前中に台風の被害の経験談をPSHSの生徒や先生方からお聞きし、また、その後、地球規模の問題についての講義とワークショップを行い、生徒達はフィリピンの生徒と立命館の生徒の混合グループで話合い、最後には話合いをまとめてpledgeにしてグループ全員で宣誓する形をとりました。閉会式では、みんなが学んだことを語り合い、大いに盛り上がり、また、再会を誓いつつ、別れを惜しみました。

朝一番に、今日が誕生日の生徒に、フィリピンの生徒がサプライズでケーキを用意してくれ、全員でお祝いをしました。

全体として、ワークショップも閉会式も盛り上がり、バディの生徒とも涙でのお別れで、友情を深める上でも非常に有意義でした。

午後にはマニラに移動をしました。タクロバンからマニラへの飛行機が送れ、マニラの空港から宿舎へも、大渋滞で遅くなり、宿舎についたのが8時半頃で、それから食事と、オリエンテーションを短縮して行い、10時に部屋に入り、11時に消灯しました。

 

 

 

5日目

今日の研修は、ゴミの山で有名なマニラの北のケソン市パヤタスを訪問するという、ハードな内容の1日でした。昨日の疲れからか、宿舎からパヤタスまでの道のりは生徒はほとんど眠ってしまっていて、道路の左右にあるゴミから回収したものを売るジャンクショップは見ないままにルパンパンガオに着いたのですが、NPO法人アクセスの運営する幼稚園の2階の集会室に入るために階段をあがったところからゴミの山が見えるので、その大きさというか、スケールにびっくりして、研修が始まりました。

最初にアクセスのスタッフから、パヤタスの説明やなぜここに幼稚園が必要なのか(小学校は、一応、義務教育なのに、ある所定の教育課程を受けた証明がなければ、小学校に入れない。実は、7割程度しか小学校に行けていない)などの説明を受け、その後、狭い教室(午前中なので、3歳児。午後は4歳と5歳児になる。)に、今回参加の20人が入り、歌を歌って交流したり、給食のおやつ(と言っても、午前と午後で入れ替わるので、昼食は家でとれない子どもも多く、10時のおやつが実質的な食事になる子もいる)のカレーライスを配るのを手伝ったりと交流をしました。
 本校の生徒、特に女子、も、予想以上に積極的で、また、子どもにかわいいと言いながら関わろうとするので、子ども達もけっこう打ち解けて、なついて遊んでいました。

その後、3つのグループにわかれて、ルパンパンガオのコミュニティを見学して回りました。実際のゴミの山を間近に見て、その大きさにあっけにとられるとともに、そこで暮らす人々の生活を、臭いや店で売られている品々からその11日の生活の苦しさを、感じ、学び、また、その環境にも関わらず明るい笑顔に逆に励まされ、つぶさに見てまわりました。さらに、4つのグループに分かれ、そのゴミの山の近くのバラックのような家に住んでいる方々(NPOが事前に約束をした協力者のご家庭)の家に実際に訪問し、そこに住む方に、インタビューを行いました。
 
日本では考えられない環境のなかで、日々の生活を送る人たちの話をお聞きして、例えば1家庭の1日の生活費が300ペソ(日本円で1000円弱)11日を暮しているというようなお話に驚きつつ、それでも、どのご家庭でも、毎日が幸せだとお答えになることに感銘を受け、「ほんとうの幸せって何なのか?」と考えたり、この環境をどうにかすることはできないのかと考えたり、さまざまに考えるきっかけとなる貴重な体験でした。

昼食の後、このルパンパンガオにある小学校に訪問し、児童との交流を持ちました。けっこう大きな小学校ですが、それでも児童数の方が多く、施設が足りないため、午前中は偶数学年、午後は奇数学年が登校し、部屋を共用で使用するため、本校生徒は4つのグループに分かれて、小学校3年生の2教室と小学校5年生の2教室に入って、交流を行いました。
 
1クラスに45人から50人の児童がひしめきあう教室でしたが、本校の生徒は日本語の挨拶を紹介したり、折り紙の折り方を紹介したりして、日本のことに興味があるフィリピンの児童は、本校生徒について懸命に練習し、また本校生徒も懸命に応え、密度の濃い交流ができました。それに、生活環境の苦しさを感じさせない、積極的な学習への姿勢と明るい笑顔に、また来たいと思える交流となりました。

その後、宿舎に戻り、フィリピンの貧困の現状とその背景にある経済的な問題についてアクセスのフィリピン人スタッフから講義を受け、その後、明日に予定しているマニラのトンド地区の若者との交流に向けて、トンド地区の歴史について学び、生徒から質問するなかで、フィリピンの経済状況や政治の状況について、学びを深めました。

夕食の後、今日1日の研修で学んだことや感想を、アクセスフィリピンのスタッフとともに全員がシェアし、この状況を変えるために何か行動を起こしたい、でも、何ができるだろう? このような状況を知った者がSNSなどを通して発信することでフィリピンの政治が変わるのではないか? 答えは一つじゃないだろうけれど、一人一人が一つずつ答えを見つければ、きっと何か変わる! というような感想や意見が出し合われました。

   

   

 6日目

土曜日となり、フィリピン研修も6日目を迎えました。今日は、午前中は、スモーキーマウンテンで有名なトンド地区の4人の若者が来てくれて、彼らの生活について話をしてもらうとともに交流を行い、午後は、息抜きも含めて、緑豊かなエコ・パークという施設に出かけました。

午前中のセッションでは、まず、トンドから来てくれた17歳から19歳の4人の学生がトンドでの生活やその歴史、スモーキーマウンテンの成り立ちやなぜそこで生活をしているのか、また、自分たちの将来の夢や希望について、写真などを使ったプレゼンテーションをしながら、語ってくれました。一人の女子からの「ゴミの山から食料を見つけなければならない日もある。時には、まったく食事がない日もある」という話や、一人の男子からの「ドラッグにおぼれた父親を助けようと活動していた母親が、ある日、銃で撃ち殺された。助けてくれと警察に頼んだが、何もしてくれなかった。希望も何もなくなったが、でも、僕はここにこうして生きている。何かを変えるために。」という話を聞いて、非常にショックを受けるとともに、問題の深刻さについて学びました。その後、4つのグループに分かれて、それぞれ1人ずつのトンドの学生からの話を、より深く、質疑応答を交えながら、聞きました。そして、その後、再び全体で集まって、各グループでお聞きした話を発表しあい、共有するとともに、各グループの話に対しての質問をすることで、さらに認識を深めました。本校の生徒達も、とてもつらい経験や生活を、恥ずかしいという思いを乗り越えて、なんとか変えるために現状を知ってもらおうと話す勇気を持つに至った彼らの心情に感銘を受けるとともに、そのような厳しい環境でも笑顔を忘れず、将来の夢を語り、「一番幸せな時間は?」という問いに「友達とバスケットボールをしている時と勉強するとき」と語る彼らの姿に、自分達には何ができるのだろうと真剣に考えようとしていました。その後、トンドの若者が流行のダンスを披露してくれ、また、本校の生徒もソーラン節を踊り、トンドの4人もいっしょに踊り、さらに、トンドの4人が別のダンスを本校生徒に教えてくれるなど、交流を深めました。

午後には、昨日訪問したパヤタスに近い、ダムのほとりにある「エコ・パーク」を訪問しました。そこには、トンドの4人の学生もいっしょに来てくれ、ともに活動をしました。特に、紙に書かれた指示に従って次々に指定されたものを集めながらゴールを目指すゲームでは、4つのグループに分かれて挑戦しましたが、各グループに一人ずつトンドの4人も入ってくれ、楽しく競争をすることができました。最後に、ただゲームをしているだけではなく、実は、そのなかで、チームワークの重要性やゲームであっての指示の通りに確実に集めることの重要性を知るのだという話が、NPO法人アクセスのフィリピン人スタッフからあり、深い意図があったことも知りました。

夕食後、昨日と同様に、今日1日の研修で学んだことや感想を、アクセスフィリピンのスタッフとともに全員でシェアしました。多少つたない英語ででも「トンド地区の4人の話はショッキングでしたが、ここフィリピンに来て、実際に会って、彼らの話を聞けたことは、貴重で、とても有意義な経験だった」と話す生徒や、「彼らの夢は、彼らの家族や仲間のいる同じ場所で、自分の家を持ち、近くにきちんとした病院や学校があって、ずっと暮らせること。政府は立ち退きを強要しているが、もっと大切なことがあるはず。そのために自分は何ができるのか考えたい。」、「一番忘れられないのは、今日話を聞いたうちの一人が『自分の母親は、今の生活に耐えられず、姿をくらましてしまった。でも、私は、いつか母さんを見つけて呼び戻したい。』と語る姿。その思いに、どうしたら手伝えるのか。」などと、真剣に考え語る姿が見られました。

 

7日目

今日は日曜日なので、基本的に軽いプログラムの日でした。

今日の午前は、フィリピンの独立の記念公園であるLuneta Parkを訪問しました。116日にローマ法王がマニラに来る際に訪問があるとのことで、今日もその日のための警察の演習が行われていました。その後、国立博物館を訪問し、1時間ほど研修をしました。フィリピンには、非常に多くの民族がいて、ことばもさまざまに違うことに驚くとともに、中庭に展示してある高床式のフィリピンの伝統的な様式の住宅に入り、その涼しさにびっくりしたりしていました。その後は、キリシタン大名として有名な高山右近の記念の銅像を見に行きました。高槻市民であるのに高山右近のことをまったく知らない生徒もいましたが、先日、18日に彼の400回目の命日の記念式典がこちらでは行われたのだと聞いて、日本人があまり知らないのに海外では有名な日本人の存在に驚いていました。

今日の昼食は、Makatiというところにある大きなショッピングセンターで、いくつかのグループでそれぞれ食べることにしました。日本でもなじみのある店も多かったのですが、めいめい迷いながら、それぞれが食事をし、また、お土産の買いものをしました。非常に人も多く、今まで研修してきた場所との違いに驚くとともに、フィリピンのなかでの貧富の差の大きさ、そして、自分たちの立ち位置に、何かモヤモヤしたものを感じるという風に言う生徒もいました。

夜には、アクセスのスタッフとともに、マニラでの3日間の経験で、一番印象に残ったことや感じたこと、学んだことをシェアしました。どの生徒も今回の貴重な経験にアクセスのスタッフの皆さんやトンドから来てくれた若者に感謝するとともに、この課題の解決に向けて、自分はどのようなアクションができるのか考えており、フィリピンに来てからの成長を感じさせました。

   

 

8日目

 今日は、朝からゴミの山で有名なスモーキーマウンテンを見に行き、その後、そのスモーキーマウンテンをかかえるトンド地区のVocational High School(職業高校)を訪問し、交流を図りました。

 疲れがたまってきたのか、朝から発熱する生徒が2人出たのですが、その2人は、残念ながら今日の研修には参加できませんでしたが、早々に病院へ行き、検査の結果、流行性や感染性のものではないとわかったので、解熱剤での治療を行ってもらい、熱も下がり、昼過ぎには空港で合流することができました。

 現在、トンド地区のすぐ近くにあるスモーキーマウンテンⅠは閉鎖されているのですが、現在も、そのゴミの山に約100世帯が暮らしているとのこと。また、新しく、スモーキーマウンテンⅡが海を埋め立てる形でつくられているのですが、そちらは見えないようになっていました。9月の下見の際には、車に乗ったまま入れた、スモーキーマウンテンⅠの近くの住宅の暮らしは、今日は、なぜか関係者以外立ち入り禁止になっており、近くまで行って見ることはできませんでした。それでも、スモーキーマウンテンⅡの近くにスラムには、車の道から近いこともあり、少し車を降りて見学をしました。鼻をつくような異臭と、それでも笑顔で生活する人々、大型車がひっきりなしに走りすぎる片側4車線の道を、毎日ぬうように渡り学校に通う生徒達、、、本校生徒も厳しい環境にショックを受けるとともに、自分達なりに、日本の生活ではイメージできないような生活が現実であることを目の当たりにし、自分を振り返っているようでした。

 Vocational High Schoolでは、大きな歓迎を受け、授業や、今日はたまたまそれぞれの職業選択科目の資格認定の実地試験の日だったので、試験の様子を見学させてもらいました。試験と言っても、とてもおおらかで、髪の毛のパーマの実地試験の最中には彼らからも話しかけてきたりして、交流が持てました。英語や数学の授業にも入れていただきましたが、小さな部屋にぎゅうぎゅうに40人近い生徒が入り、蛍光灯も暗い中、それでも必死に勉強する姿がありました。最後に、同校の校長のご厚意により、昼食をかねた簡単なパーティーが持たれました。最後のフィリピン料理でしたが、みんなとてもおいしくいただきました。

 その後、マニラ空港に移動し、アクセスのスタッフの皆さんにお別れを言い、帰国の途につきました。