ニュース

SGH 東京平和研修2015を実施

2015.08.06

Super Global High School (SGH)
SGH
東京平和研修報告

 

SGH東京平和研修を実施しました。

 

7月22日(水)~7月24日(金)の3日間にわたり、SGH東京平和研修を実施しました。この取り組みは昨年度より開始され、今回が2回目の研修となります。本校SGHの取り組みでは、昨年度より夏季休暇中に「平和三研修」と銘打ち、本校研究開発課題の具体的構想テーマである「貧困の撲滅と災害の防止・対策 ~世界平和の実現のために~」を真正面から見つめ、知り、自分たちにできることとは何かを考える機会としています。その第一弾として、東京平和研修では世界の貧困問題に実際に取り組んでおられる方々にフェイス・トウ・フェイスでお話をうかがうため、JANIC(NPO法人国際協力NGOセンター)、JICA(独立行政法人国際協力機構)地球広場などを訪問しました。

 研修学習の入門編と位置づけた本研修には、高校1年生を中心に高校2年生を含め希望者からの選抜者14名が参加しました。今回訪問するにあたっては、事前学習に入念に実施しました。まず、映像資料としてユニセフとWFP(国連世界食糧計画)が賛同して制作された「ブルー・ジプシー」(「それでも生きる子供たちへ」所収のオムニバス・ドラマ)を視聴し、このような困難な現実に向き合っているNGO団体の方たちに思いを馳せ、その後、「国連ミレニアム宣言(MDGs)の経過および取り組みと今後の動きについて」「JICAの活動とその目指しているもの」「日本の政府開発援助(ODA)について」「ネパール地震でどのような国際的な支援や協力が行われたか」など7つのテーマを設定して、それらについて各自リサーチしレジュメ化、それらを発表し合うことで国際協力に関する基礎知識を共有しました。これらを踏まえて研修に参加することで、より高い次元での学びが可能になると考えました。


 お世話になった市民国際プラザJANIC支部は、コンパクトなつくりで講師の塚原真琴様はじめスタッフの方々との距離も近く、アットホームな雰囲気で研修に臨むことができました。ワークショップではケーススタディをグループ毎に実施し、マインドマップを作成し問題解決提言プログラムを策定、発表し共有しました。効果的な援助をするためには現地のニーズをよく汲み取ること、国際協力をしようとする気持ちは、その後小さなことでもいいので行動に移すこと、その行動は世界を変えることができるという力が私たちにもあると信じること。生徒たちはこれらのメッセージに勇気づけられたようでした。


 JICA地球広場では、まず、施設の見学をしながら世界の諸問題について学習しました。現在では、途上国と日本などの先進国との間は一方向ではない相互依存の関係となっていること等を、豊富なデータとその背景とともに知ることができました。その後、2013年度から「図工」を正式科目にしたブータンに、青年海外協力隊として2年間小学校教師として派遣されていた高井温子様に体験談をうかがいました。当初自分ひとりで何でもできる、やらなければと思ってやっていたが、あることをきっかけに、みんなで協力することで物事が好転していくということを体験されたという話は、協力隊という、いわば海外でしかもある意味非日常のなかでしか経験できないことではなく、日本に住む私たちの日常生活でも実践できるということに感じ入ったようでした。また、国際協力には多様な形態があり、これも私たちの日常の小さなことから始められるということ、国際協力とはいっても日本という国を代表して実施しているものであり、日本のナショナル・インタレストに叶うものでなければならないというお話には、大変考えさせられたようでした。


また、午後からは貧困問題に関するワークショップとして、ミクロネシアに協力隊として派遣された中野学様を講師に、モルディブの水事情を題材に環境問題についてグループで考えました。生徒たちは、JICAで過ごした研修2日目で、世界の問題を知り、また知ることで考えざるを得ない日本の問題に直面しました。世界には平和を阻害する要因が多くあって、そのために多くの人が苦しんでいる。それらのことを、平和に毎日を暮らすことのできる日本に住む私たちが学習している。この現状のギャップをどのように考えればいいのか。

最終日は、帰京前に朝日新聞東京本社を訪問し、新聞社で働くということの意味やその業務内容について実地研修をしたのち、研修を終えました。


2日間、夜にはデブリーフィングを実施しました。JANICおよびJICAで学んだことを伝えることが大切とのメッセージを受け、どのようなことを伝えるのかということをグループで討議し発表し合いました。そのなかでは、1年間のアメリカ留学を終えたばかりの参加生徒の一人が、留学したことで得たことや留学を薦める理由について率直に語ってくれる場面もありました。さらに、教員からはSGHとして目指す教育のありかたや今後の高校生活での学ぶことの意義について話もあり、大変密度の濃いミーティングとなりました。

今回の研修期間中、国際的な舞台で活躍できる資質を育てるために、個人あるいはグループで自分の意見を表明する機会やそれらを共有する機会を数多く設けました。もちろん、知らなかったことを知るという研修の目的ではありましたが、知るということについては、

様々な視点から考えることが肝心です。基本姿勢として、無知を恥じることが必要であるということ、そのうえで、様々なことを知ることで理解が深まることはあるが、知ることでそれまでの自分の考えを否定される場面も起こり得る。そういったときに、新しい知識を吸収できる姿勢を持つということの重要性や、また、知ったことを別の側面から見たときにそれがどのように見えてくるのかということについて思いを致すこと、そういったクリティカル・シンキングの重要性にも目を向けることのできた研修でした。

「この研修を通して自分の考えが変わったと思う。いろんなものの見方ができるようになったから」。参加生徒の一人が言ったこの言葉こそ、今回の研修の大きな成果の一つだと思います。これからも勇気を持って、自分を変えていってほしいと切に願っています。