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SGH  早野龍五氏による特別講演会を実施

2017.09.21

Super Global High School (SGH)
SGH取り組み報告

SGH  「ECCE HOMO(この人を見よ)⑤」
早野龍五氏による特別講演会を実施しました

9月21日(木)3、4限、GLコース2,3年生・SSGクラス2年生対象に、東京大学名誉教授で物理学者である早野龍五氏による特別講演会を実施しました。本校SGH事業では、2014年度よりSGH東北復興防災研修と銘打ち、毎年度現地で研修を実施しています。「平和な社会の実現に貢献できる人材の育成を目指す教育システムの研究開発」のもと、高校2,3年GLコース・高校1年GJクラスを主対象として「貧困の撲滅と災害の防止・対策~世界平和の実現のために~」をテーマに、それらの学びを通して人類のために貢献する使命感や課題解決能力などを身につけ、未知の分野への積極性等を備えた人物となるべく日々活動しています。今回、東日本大震災以降精力的に福島へ関わっておられる早野氏をお招きし、その一助とすることはもちろんのこと、理系SSGクラス2年生と合同で実施することで、科学的リテラシーを含め文理関わらず求められる資質を醸成したいという想いからご講演をしていただくことが実現しました。
早野氏の著書の一つである『知ろうとすること。』を事前に読んでいた生徒も相当数いるなかで、彼らは、震災直後から事実に基づいて冷静に現地の情報を発信し続けてこられた早野氏の言葉の数々に熱心に聴き入り、自らの日常を考える時間となりました。「僕の選択」と題された講演内容では、パーソナルヒストリーがちりばめられ、後半部分では福島を巡る震災当時からの状況、福島高校やふたば未来学園高校の生徒たちとともに行っている様々な活動などをご紹介いただきました。講演後の質疑応答では多くの生徒たちから質問が出ました。関西における福島報道の受容のされかたや被ばくの現状、マスコミとダッグを組むことで有効なメッセージを発することができることなど、私たちが考えていかなければならない問題群が山積していることに改めて気づかされました。しかし一方、「(日常のなかで)あんまり無理をしないでほしい。あなたたちができることをやってほしい」「まずは(行く機会があったら)福島に行ってください」との言葉からは、個々の等身大の活動の積み重ねが現状を変えていくというメッセージを受け取ることもできました。
今回、ご講演いただきました早野氏はもとより、講演実現のためにご尽力いただいた関係の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。

以下、生徒の感想文です(一部抜粋)
「私はRIVIO(校内ボランティア団体)で福島に訪問していたので福島が安全だということはもちろん知っていた。現地の高校生と交流して今も思っていることは、彼らが故郷に戻ることができる日が来るのかということだ。福島が他の場所と比べて安全でも、いまだに自分の家で暮らすことができていない人々がいるということは絶対に忘れてはいけないと私は思う」
「今回、文系と理系の融合について考えることができた。…学生である今でこそ文系/理系と分かれてはいるが、大人になるとそこまで大きい差がでるのかというとそうではないと気づかされる機会となった。私たちはGLコースで貧困と災害の防止をテーマとして毎日学びを深めていて、SSGクラスの人は自身の課題研究を筆頭に私たち文系には“訳の分からない”ものを毎日学び、深めている。しかし、今回のような災害が起こった時、文系の力だけでは行き着かないような、それこそ“訳の分からない“ものに頼らなければならない場面が必ずあるのだ。先生のお話を聴いて一番印象に残ったことだった。だからこそ、文系は理系を理系は文系を、お互いを知り合う必要があるのだ。お互いのことを知ることで解決に近づくことができると信じている」
「知っているつもりで誤解していたことを正しい知識で塗りかえることができた気がします。『社会の上に何を積み上げていくのか』という言葉がすごく印象に残りました。福島県の内部被ばくの研究ひとつをとっても、被害者の立場を一番にコミュニケーションを通して交流するだけでなく、どのようにして世間に発信するかまで考えておられたので、これこそが社会にとって価値ある復興の形なのだと思いました。『納税者にできること』とも表現されましたが、素直に、お金をもらっているから社会に還元すると言われたことがすごいなと思いました」
「講演を聴いて、原点に戻って考えること、人がやらないことをしてみるということ、アマチュアの心でプロの仕事をするなどの大切さを学びました」
「社会的・心理的な問題というのが本当に一番根強い問題なんだと実感しました。そして、それを解決することは大変だと痛感もしました。福島は危険だと信じ切っている人に対して、そうでないということはとても体力のいることでした」
「最後にお話されていた社会的・心理的問題について興味を持ちました。知識として放射線の影響が非常に少ないと分かっていても、根本的なところで理解されていないことが多いことも感じました。…子どものための被ばく検査器であるBabyscanはリサーチするためというよりも、親とのコミュニケーションの場を設けるためのものでもあるということには驚きました」
「何か新しいことをするときには、先人の論文や考えからさらに先に進んでいくことが大切だとわかりました」
「私は研修で宮城県女川町周辺を訪れ、その時の体験の一つに女川原発について説明を聴く機会がありました。震災が起こる前までは原発のことなんてあまり知らなかったのに、震災以降は原発の怖い部分しか知らず、研修の現地で公平な視点でお話を聴くことができてよかったと思っています。それと同時に、なぜ悪い点しか伝えないのかとマスメディアに疑問を持ちました。」
「私たちはもっと放射線教育に力を入れ、日本のために東北のために動かなければならないと思います。早野さんの研究に高校生が参加したようですが、もっと数を集めて全国の高校生が参加すべきではないでしょうか」