Reportレポート・参加者の声

東日本大震災から6年。「いのちのつどい」を開催


2017年3月11日、立命館大学国際平和ミュージアムにおいて、「3.11追悼企画 いのちのつどい」を開催しました。
この企画は、東日本大震災で亡くなられた方々を追悼するとともに、被災された方々や復興への歩みを進める地域に思いを馳せ寄り添うこと誓う企画として、2011年の発災の翌年度から毎年実施しています。6回目となる今回は、学園関係者、地域の方々、連携協力協定を締結している福島県庁の方々など約120名の参加となりました。

開会に先立ち、災害復興支援室の建山和由室長は「災害は日本のどこにいても起こりうる。復興支援活動は、次なる災害への備えをする学びの機会でもあり、これからも支援を続けて学びを深めていきたい」と開会のあいさつを述べました。
▲左) 建山和由・学校法人立命館常務理事(企画担当)・立命館災害復興支援室長
右) アカペラサークルclef。福島県の復興ソング「I love you, I need you ふくしま」披露。

シンポジウム

続いて、『見えないものに目を向ける大切さを考える』と題し、シンポジウムを実施しました。福島県で原発事故後の放射線量の測定を行い、科学的な視点から住民たちに正しい情報を伝える福島プロジェクトに取り組む安斎育郎・立命館大学名誉教授/立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長を中心にコメンタリートークを行いました。
4月から福島県楢葉町に就職し、町民として復興の担い手となることを決めた西崎芽衣さん(産業社会学部4回生)は、1枚の写真を紹介しながら「楢葉に通って支援活動していた時は何も言われなかった人から、就職することを決めたことを伝えると、怖くないの?と聞かれることがあり、福島のことが理解されていないと感じた」と話しました。また、立命館大学在学中に留学生と共に、現地で見聞きした福島を放射線の知識に含めて海外にいる人に伝えるために、日英独3ヶ国語の本を制作した塩田潤さん(神戸大学大学院博士課程後期課程在籍)は、「私たち若い世代は、原発事故の原因を追究するだけでなく、これからどうしていくかに責任がある。私は、研究者目指しており、社会の一員として責任を全うしていきたい」と述べました。さらに、元陸前高田市副市長の経歴を持つ久保田崇・公務研究科教授は、「陸前高田は人口約2万人のうち、約1800名が犠牲となられた。現地の人は、津波の映像をみると悲しい気持ちを思い出すため、3月になるとテレビをあまり見なくなると聞いたことがある。見えない悲しみ、復興とのギャップのことも忘れてはいけないと」と話しました。
安斎名誉教授は、「放射線のことを知らないから不安になり、差別やいじめ、偏見が生まれる。実態を可視化すること、見る努力をすることが大切だと思う。原発事故で科学者への信用は失われた。生活者の目線に立ち信頼関係を築いていくことで、福島プロジェクトの活動は信頼されている。今後も多くの人々の気力・知力・体力・協力・財力を合わせて、価値観を押し付けることなく、科学的根拠に基づき事実を伝えていきたい」と締めくくりました。
▲左上) 右側、安斎育郎・名誉教授/立命館大学国際平和ミュージアム名誉館長。福島プロジェクトで月1回、福島県に調査、学習会等の活動に出かけている。
左側、総合司会、シンポジウムの進行を担当した山口洋典・立命館災害復興支援室副室長・共通教育推進機構准教授。
右上) 久保田崇公務研究科教授。現地は3月11日だけでなく、毎日が復興と話す。
左下) 西崎芽衣さん。福島県で活動する「そよ風届け隊」立ち上げメンバーの一人。
右下) 塩田潤さん。学部生時代に自国の電力需要を地熱などの再生可能エネルギーで賄うことができるアイスランドに留学。

追悼式典

シンポジウム後は、追悼式典を行いました。冒頭は「花は咲く」に乗せて、モダンジャズバレエ部がダンスを披露。続いて、参加者を代表して吉田美喜夫・立命館総長や建山室長、福島県庁の方、代表学生・生徒らによる献花が行われ、14時46分に全員で黙とうを捧げました。
その後、吉田総長が「2011年に災害復興支援室を設置して以来、支援活動を重ねる中で、昨年、熊本地震に直面した。熊本地震の支援活動の現場では、東日本大震災で支援を受けた側の方々が、支援にあたられる状況が多く見られたという。
このように、被災経験や支援経験の蓄積は、次なる災害へと確実に活かされている。このことを確認し、次への備えを確かな取り組みとしていかなければならない。阪神・淡路大震災から22年が経過した神戸では、被災経験のない人々が、未来への備えを行うための教育に力点が置かれ始めている。こうした取り組みもまた、大学として貢献すべき使命のひとつである」と、挨拶を述べました。
そして、最後に福島県庁広報課の佐藤博文さんから、新しい復興ソング「雲のかなた」の紹介がされました。
▲モダンジャズバレエ部
▲左) 献花をする立命館中学校・高等学校の生徒
右) 1分間の黙祷をささげる様子
▲吉田美喜夫総長

学生活動報告会

追悼式典後は、同じ会場で学生活動報告会を実施。東北・熊本県での支援活動や関西で防災活動を行っている6団体が活動内容の紹介や、活動を通じて感じたことを報告しました。
 防災共育サークルAttelleの津田誠さん(政策科学部2回生)は、「防災は暮らしを豊かにするもの。身近な人を大事にしていってほしい」と話しました。岩手県大船渡市盛町の七夕まつりの運営をサポートする活動を行った吉村大樹さん(法学部1回生)は、「市民の方々と一緒にお祭りを盛り上げることは出来たが、震災のことをじっくりと聞けなかった。今後はそういった話もできる関係を築いていきたい」と述べました。また、熊本県西原村のサツマイモ農家で農業ボランティアに取り組んだくまだす+Rの戸上雄揮さん(法学部1回生)は、「自分たちが触れた熊本の自然の豊かさや食の美味しさ、人の魅力を多くの人に伝えていきたい」と意気込みました。
その後、久保田教授がモデレーターを務め、パネルディスカッションを行いました。久保田教授からは、「活動の中で嬉しかったこと、つらく感じたこと、これから取り組みたいこと」という質問が投げかけられました。そよ風届け隊の代表・森雄一朗さん(法学部3回生)は「現地の人と一緒にイベントを実施したり、瓦版を作り終えたときに一緒に達成感を共有できたことが嬉しかった」と話しました。また、きっかけ食堂の立ち上げメンバー・右近華子さん(産業社会学部4回生)は「“毎月11日はきっかけ食堂の日”と認識してもらえているのが嬉しい。ネットで偏見を持って活動のことを悪く言われることもあるが気にかけないようにしている」と語りました。KS1の代表の嶋晴菜さん(スポーツ健康科学部2回生)は「災害が起こってからコミュニティづくりをするのではなく、日ごろから身近なコミュニティを大事にしてほしい」と呼びかけました。
▲左) 久保田崇・公務研究科教授の進行で支援活動を行う学生たちのパネルディスカッションを実施
右) 参加者の方々
▲左から右近さん、森さんと西川舞さん(産業社会学部1回生)、戸上さん、吉村さん、嶋さん

親子向け企画、古本募金、展示企画

当日は、同じ会場で親子向け企画も実施しました。防災活動を行うサークルFASTとAttelleは、楽しく防災を学ぶことを目的に、新聞紙を用いたスリッパ作りや非常災害時の持ち出し袋作りのワークショップを企画しました。熊本県西原村の仮設住宅で毎月運動教室を実施しているスポーツ健康科学部の学生たちによる団体・KS1は、運動体験を実施しました。他にも、NALC京都「ことの会」による紙芝居(『請戸小学校物語』)や、福島県庁による起き上がり小法師の絵付け体験などが行われました。
また、学生団体や立命館中学・高等学校、立命館宇治中学校・高等学校らの生徒らによる活動紹介の展示や、熊本地震被災学生支援のための古本募金活動も実施されました。
▲左) 非常持ち出し袋作りの様子。スタンプでオリジナルのデコレーション。
右) 新聞でスリッパ作り。
▲左) 起き上がり小法師の絵付け体験
右) 紙芝居
▲学生活動報告の展示
▲古本募金
参加された方々からは、「来年も実施して欲しい」、「福島県に一度訪れてみたい」、「記憶が風化しないよう、出来ることに取り組みたい」など、さまざまな感想が寄せられました。
最後に、閉会の挨拶において、塩崎賢明・立命館災害復興支援室副室長は、「立命館らしい防災・復興支援をこれからも続けていきたい」と締めくくりました。
▲塩崎賢明・立命館災害復興支援室副室長・政策科学部教授

参加者の声

東北大地震から6年、震災当時はみんなが東北の人々の心に寄りそっていたように思います。震災・原発事故を機に、自分たちの生活のあり方を振り返り、これからのエネルギーのこと、日本のめざす方向などを考えるきっかけになったように思います。でも、6年たった今、6年しかたっていないのに、東北へのおもい、原発へのおもいが、人々の日常生活の中で、うすくなっている気がしてなりません。学生さんたちの活動報告を聴き、若い人の力に期待するとともに、自分にできることをさぐっていき行動に少しでもつなげていきたいと思います。

参加者アンケートより


シンポジウム、大変良かったです!!考えるポイントが見えてきました。若い人達が広く社会へ目を向け、いることを知りうれしく思いました。

参加者アンケートより


自分自身も社会科学を研究する院生であるので、科学者が今後の社会に向けて負う責任についての議論は考えさせられた。現状に対するより正確・広い理解と、もう少し大きな構造の問題と、両方に向き合う姿勢を忘れないようにしたいと思う。

参加者アンケートより


親子向け企画の絵付けが、普段はできないのでとても楽しかったです。

参加者アンケートより


主に親子向け企画に参加させて頂きました。立命館大学の学生さん達や、担当の方が防災の知識を楽しく教えて下さり、有難うございます。

参加者アンケートより


小4の娘と家族3人で来ました。テレビのニュースでは震災から6年が経った今を特集されたりするのを見て、もうそんな月日が経つんだと思うぐらいで、実際体験していないので他人事と思うことがないよう、自分たちのこととして考える一日にしたいと親子イベントに参加させていただきました。被災者の方との交流もあれば、もっと自分のこととして実感することができたかと思います。立命館の学生さんの活動は、すばらしいと思います。若い人の力が大切だと思います。良いイベントで、せっかく開かれているに宣伝が不足だと思います。新聞の催し記事も小さく、小学校にチラシくばるとかするほうがよいと思います。

参加者アンケートより


自分が出した報告書が展示されていて、いろいろな人に見てもらうことで、私が福島県の現場に行った意味がわかりました。

参加者アンケートより


後輩諸君が真剣に各分野にわたり被災地の支援活動を行なっている姿に感銘をうけました。OBの一員として側面から応援したいと思います。

参加者アンケートより


学生団体がいくつもあり、自主的に復興支援をされていることに感動しました。日本の若者、捨てたものではありません。