Reportレポート・参加者の声

[レポート]東北を知って学んで食すオンラインの旅「0泊2時間東北食べるツアー ~生産者と語ろう~」第5回<岩手県大槌町・鹿肉>

2021年12月16日(土)、第5回目のツア―を開催しました。

ツア―の舞台は岩手県大槌町。テーマは「鹿肉」。
早朝に鹿のもも肉200g、情報誌「東北食べる通信」、兼澤さんからのお手紙が事前に送られました。
当日は学生、校友、一般の方、あわせて15名が参加。

大槌町現在の様子を生中継!

東日本大震災発生による津波で大きな被害を受けた大槌町。地震の影響で地盤沈下し、全体で約7割もの住宅が被害を受けました。生中継では、漁港付近から、つい最近、工事が終了した約14.5メートルもの防潮堤(元は約4~5メートル)や避難路の様子が紹介されました。

近くには蓬莱島というひょっこりひょうたん島のモデルになったとされている島が観光名所としてあります。

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鹿の猟から解体までを解説!

山に生息する野生の鹿の猟の様子からお肉になるまでの様子を、動画で解説いただきました。
岩手県では約10万頭もの鹿が生息しているといわれています。その中でも大槌町は、広葉樹林帯や牧草地が多くとても自然豊かで、そこで育つ鹿も栄養が豊富とされています。

兼澤さんは岩手県で唯一のジビエ猟師。猟では鹿が逃げないように100メートル先くらいまでそーっと近づき、姿勢を低くしながら、散弾銃を持って狙いを定めます。兼澤さんの猟では若い鹿(オスは3才、メスは4才)に限定し、銃で撃つ箇所は頭もしくは首のみ。肉の質を守るために、一度撃つことで動けなくなる箇所に狙いを定め、即座に体温を下げることが大切しています。また捕獲後はすぐに作業場に戻り、1時間以内に血を抜き、臭みのない・やわらかい・舌触りや鮮度の良い肉を提供しています。

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解体作業では鹿を傷つけないように、丁寧に皮を剥ぎ、関節を切断します。兼澤さんは「食べることは、命をいただいていること」だということを知ってほしいという思いで、今回全国でもなかなか目にできない解体の様子を紹介いただきました。
また、兼澤さんは獲った鹿の全てを活用したいという思いから、雄の角を使用したタペストリーや革製品を作って販売しています。
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色々な場所で技術を学びながら、たくさん試行錯誤され、鹿に向き合われてきた兼澤さんだからこそ、沢山のこだわりが詰まっていました。

兼澤さんとのトークセッション

兼澤さんとの対話の時間。兼澤さんが猟師になったきっかけは、農家である実家の米が野生の鹿の被害で不作になったこと。はじめは鹿への恨みから猟師を始められました。

兼澤さんは猟で鹿を撃ったあと必ず手を合わせるといいます。
「食べることは命をいただいていること」兼澤さんは生き物としての尊重する気持ちと、猟師として、消費者の一人として、命を大切にされていることを語りました。

しかし、東日本大震災で福島第一原子力発電所の事故が発生し、東北6県+4県の山にいる生き物は、放射線量が除染できないという理由で、今でも出荷制限が続いています。兼澤さんは、約2年間にわたり町や県と協議を重ね、2020年4月、全頭検査して基準値以下であることを条件に、なんとか出荷制限解除にこぎつけ、安心・安全な鹿肉を販売しています。


震災から10年が経過して、大槌町の現在と兼澤さんの心情の変化などもお話しいただきました。
参加者に向けては、震災が起きたときは、指定された場所に即座に避難し、自分で自分の命を守る行動を取ること、そして命があれば命をつなぐことができること、その大切さを、参加者に伝えていただきました。

兼澤さんは、今大槌町で若手猟師を増やす取り組みもされています。
今後は、美しい豊富な自然を持つ大槌町の美味しいジビエを岩手・東北、また全国に広めることを目指していきたいと語りました。image_20210821-taberu-momo05

参加者の声 *一部紹介

・震災のお話や鹿肉を販売するようになったきっかけなど、胸を打たれるエピソードばかりで、自分も社会のために何ができるのか、考えるきっかけになりました。

 ・スーパーに行けば簡単にお肉をはじめとする食材が手に入ることで、「命をいただいている」という感覚を忘れがちだと思います。多くの人がこの感覚を改めて持つようになれば、各家庭でのフードロスはすぐに無くなるのかなと思います。

・鹿の狩猟の様子を見聞きしたり、実際に鹿肉を食べてみることにより、命の尊さや山に存在する放射性物質を除染する難しさ・鳥獣害被害の深刻さなどがわかり、震災後の東北の現状を理解するにはとても良いテーマ、食材だと思いました。

■ 関連情報 
立命館の復興支援の歩みやスペシャルムービー、立命館関係者を対象に募集した”つむぐ思い出”写真の応募作品などを掲載しています