Kayoko Fujita × Saeko Ogiso (Japanese history & language) 教員対談

03 グローバルな環境で文化を学ぶことで
養われる力とは。

日本対外関係史・グローバルヒストリーをベースに国際的視野で歴史・文化を視ることを専門とする藤田教授と、国外で日本語を指導した経験を持ち、言語の見地から文化を捉える小木曽准教授。
それぞれの立場から、多国籍の学生が混ざり合うグローバル教養学部(以下、GLA)で「日本文化」を学ぶ意義について語ってもらった。

対談シーン

日本文化を学ぶ意義とは?

藤田

私の専門は歴史学ですが、日本史というくくりが一つの国の歴史しか見てないことに違和感を覚え、大学で対外関係史の研究に進んで以来、枠にとらわれない歴史学をやってきました。日本国内では気が付かないことが他国との比較を通して明らかになるように、文化も俯瞰的にとらえることが重要です。例えば、日本の社会問題である「過労死」と「働き方改革」。よく、職場には「チームのためには自己を犠牲にして当たり前」という空気があると言われますよね。これはかつて、農民の家族や集団が食べていくために助け合い、生き延びる戦略の中で生まれたメンタリティが、近代の経済発展のなかで「お国のために働こう」と国家に都合よく作り替えられてきたものです。歴史を通して文化を知ることで、学生は「時代に合わないものや、自分の生き方を実現するためにそぐわないものは変えていこう」と考える力がつくと思います。

小木曽

おっしゃる通り、学生には固定観念を持たずに自国の文化を理解してほしいですね。文化と言葉は切り離すことができないので、日本人のメンタリティは言語にも表れています。「コーヒー飲みにいきませんか」というお誘いに対して「今ちょっと‥」で意味が通じるように、日本人は言外の意味をお互いに察する国民性があるので、コミュニケーションは「察する文化」ありきです。学生にはGLAで社会学や日本の歴史をきちんと学びながら、日常の言葉の中で日本の文化を考えてほしいと思います。

藤田

「日本人とはどんな国民か」といった日本人論の研究は、留学生の間でもとても人気がありますよね。

小木曽

生活や言語には、たしかに国民性は出ますよね。ただ、大阪と京都など地域によっても話し方が違うように、「日本人」をひとくくりにはできないと感じています。

藤田

そうですね。日本人論を学びたい学生には、まず既存のイメージや固定観念を取り払うように指導します。GLAの学生には新しく知識を吸収し、自らの考えを持って発信するレベルを期待したいと思っています。

対談シーン
対談シーン

GLAの環境の独自性

藤田

GLAは日本人の学生と国際学生が混ざり合い、一緒に学び、国際寮で過ごします。先ほどの日本人論の話とも関連しますが、実際に地域の人とかかわって過ごすことでイメージが変化したり、学びが体験に結びついたりと、化学反応が起きやすい環境ではないでしょうか。せっかく生活のなかで異文化体験ができる環境が整っているので、学生の皆さんにはまず生活を楽しんで、多様なコミュニケーションの取り方を学んでいただけたらと思います。

小木曽

学生は皆さん非常に仲良く勉強しているようすがうかがえます。留学生は、専門科目と並行して選択科目で日本語の授業を履修しているので、日本語も支障なく使えるようになりたいという意識があるようです。ふだんの授業は英語でも、授業外で日本人と会話するときは日本語の場合も多いでしょう。その際に全く理解ができないともったいないですから。

また、大阪の土地柄や人柄は、外国の人にとって話しやすいオープンな雰囲気があると、留学を経験した学生からもよく聞きました。大阪いばらきキャンパスは地域と一体化しているので、学内のカフェで学生と地域の方がお話している光景もよく見かけます。さらに、お隣の京都は古い歴史が残っている町。伝統的な文化からいわゆるポップカルチャーまで多様な文化が開かれていて、その両方が学べる良い立地だと思います。

藤田

GLAの学生には、寮だけでなくさまざまな場所へ積極的に飛び出してほしいですね。私自身、授業でも教室の外へ出て学べるようなフィールドスタディを実施していきたいと考えています。関西は千年以上日本の文化・社会・経済・政治の中心であり続けた場所。大学から30分程度で歴史ゆかりの土地へ行けるのは、大阪という地の利点です。

対談シーン
対談シーン

グローバルな視点を身につけること

藤田

分林記念館には能舞台、茶室があるので、生活の中で日本文化を学ぶことができます。この「生活の中で」という点はとても大事。なぜなら、入学して4年後には多くの知識を吸収して成長し、日本文化に対する見え方も変わるはずだからです。例えば茶室は、「美しい」と感じる心について考える一つのきっかけになるでしょう。生活の中で日本文化をどのように受け止め、その価値観がどう変化するのかに注目してみるのも面白いですね。

小木曽

外国人にとっては、日本語が上達しても、文化や自然を表す言葉を完全に理解するのは難しいものです。例えば雨が降る音を表す「しとしと」という言葉。これが質素さや静けさを表す擬音語だということは、なかなか教科書だけでは学べません。海外からの学生には、自国の言葉に翻訳して表せない感覚があることを実際に日本に来て体験し、使えるようになってほしいです。

藤田

他国から日本にフィールドを移して学ぶ国際学生は、4年間を通して実際に価値観が変わるようです。自国のアイデンティティに固執せず、グローバル人材になることが期待されます。

小木曽

私が教える日本語のクラスでは、さまざまな国籍の人が交ざり合って一緒に学び、また日本人学生がボランティアとして授業に参加することもあります。日本のことだけを勉強するのではなく、それぞれの国の事情を比較する機会もあり、グローバルな視点でとらえる力を身につけることもできます。

藤田

そうですね。GLAはリベラルアーツの学部なので、人文学・社会科学からサイエンスまで幅広く学ぶことができます。日本が入口ではありながらも日本の学問に偏らず、広い視野で物事をとらえ、多くの引き出しを持ったグローバル人材になれるでしょう。