Thouny Christophe ×Čapková Helena 教員対談

07 都市の構造を考え、人と人との結びつきを
紐解くことがインスピレーションを生み出す。

人々の関わりや共同体のあり方について考察するコスモポリタン研究。都市文化や近代美術史における両名の知見から、これからの研究について語り合ってもらった。

対談シーン

先生方の研究分野について教えてください。

Thouny

日本に限らず世界の都市文化についての研究を行っています。ここでの都市文化とは人々の慣習やライフスタイル、快適に暮らすための空間整備のことです。日本の近代化において、異なる文化によってそれらがいかに熟考され、議論されてきたのかを重点的に研究しています。主に文学作品やフィルムアニメーションから読み解いたり、さまざまな都市のエスノグラフィー(行動観察調査)を通して研究を進めています。

Helena

私は美術史研究と日本研究を融合させ、日本の近代化と、ヨーロッパやそのほかの国との結びつきについて研究しています。主に1920~30年代の日本において、画家やデザイナー、建築家などの外国人芸術家がどのように日本にやってきて、戦中戦後にどのように仕事を続けたのか。そして彼らがどのように日本人と交流し、作品を創造したのかという点に興味を持っています。

Thouny

近代の日本を題材に「共に暮らす」という観点で研究を進めるという点で、私たちは似ていますね。都市空間、つまり日常生活のための集団や空間、共同体についての問題です。

Helena

そうですね。何らかの現代的空間・構造について解明するという点でも共通しています。モダニティという概念により、考え方がいかに国際的に伝播するのか、コスモポリタン(世界主義者)という概念が日本をはじめとした地域でいかに機能するのかを考えることが必要です。なぜなら、一つの枠組みとして国民国家という概念があるとしても、他の枠組みも存在するはずだからです。

Thouny

また、共同体はライフスタイルによってシフトしていくものです。新しいものにシフトするということは、従来とは異なるものについて関心を持ち、考えるということ。共同体というテーマで、これまでとは異なる考えについて深めていくという、この種の研究は、我々にインスピレーションを与えてくれるものだと思っています。GLAがやろうとしていることもその一つですね。従来とは異なる意味での教育を創造し、都市の慣習を考えようとしているのです。

対談シーン
対談シーン

地球規模の問題について考えるために必要な、都市構造の捉え方とは?

Thouny

都市の慣習を考えるということは、環境について地球規模で考えるということにつながります。先日、2013年から続いている「プラネタリー・ラブ・ワークショップ」に参加しましたが、そこではあらゆる課題の相互関連性を示すための言葉について話し合いました。「グローバル」という用語が広く使われるようになっていますが、グローバルは基本的には金融や市場に関する用語です。環境や動物の問題、ポストヒューマニズムに関する問題については別の用語がほしいと思っていました。そこで出てきたのが「プラネタリー」です。

Helena

私たちはこの惑星を分かち合って暮らしています。グローバルという表現は「共有するもの、分かち合うもの、どこでも同じもの」という意味を強調しすぎていて、違いと特殊性にはあまり余地を与えていないと感じていました。グローバルには制限がありますが、プラネタリーにはありません。さまざまな問題の関係性を含めて地球全体を考えようという表現です。そういった文脈で、昨今の問題について捉える必要があるのではないかと考えています。

Thouny

都市というものを捉えるとき、そこで暮らす人々の関わり方に注目しますよね。例えば同じ建築物でも、それが存在する場所が違えば、全く別の機能を持つものになるでしょう。

Helena

そうですね。特に日本は、古い建築物をどう扱うかというと、ほとんどの場合、都市解体の方にばかり向いています。1920~30年代の建築物を大阪や京都で見つけることはできますが、それらの都市の構造は壊れています。周囲がすでに変貌していたり、鉄道などのインフラが完全に変化していたりと、都市の構造が分断化されているという感覚を覚えます。この「都市の分断化」という問題はとても興味深いですね。都市は広い面積を持つ構造になってしまうと、均質的になり有機性が低下する可能性が高くなります。その点で分断化は都市に活力を与え、都市自体を保存するための手段にもなりえるからです。

Thouny

私たちは、普段から自分が暮らしている場について、何らかの意識を持っていると思います。そのような意識=都市の構造の時間的変遷や変化への感覚を持つことが必要であると考えています。モダニティの初期、つまり物事が大きくシフトするときには、最初はたくさんの発想があり、規定や決まりもなく、人々は新しいやり方を考案したり、創造的に物事を理解しようとします。それは新たな生活空間を創造するようなもの。歴史を辿りながらその過程を考えることで、ある種の責任感が生まれるのではないでしょうか。

Helena

そしてそれは創意工夫も引き出すでしょう。自分が暮らしている場への意識を持つことで、ステレオタイプな考えに流されず、より質の高い都市構造をデザインしていくことができるようになるのだと思います。

対談シーン
対談シーン

これからのコスモポリタン研究に必要なこととは?

Thouny

コスモポリタン研究とは、人と人の結びつきの研究であると私は理解しています。人と人を結ぶのは何か、あるいは結びつきを可能にするのは何かを考え、地球全体の都市空間において、共に暮らすための方法を見つけようとする研究であると。それは人生における本質的要素であり、私たちが取り組むべき問題でしょう。私たちはたとえ人口密度が異なっていたとしても、都市空間内で暮らしていますから、都市をコスモポリタンな空間として捉えることは道理にかなっているといえるでしょう。しかし、コスモポリタンという用語には限界がありますね。それはコスモス(世界)とポリテス(市民)であり、とても人間的なものです。ただ、地球上の空間は人間のみが共有しているわけではありませんよね。人間が利用することで、商業活動に結びつき、アイデアやルールのやり取り、人の移動が可能になります。しかし、それがすべてだと考えてはいけないと、常々感じています。

Helena

私にとってはコスモポリタンはインターナショナルに近い用語ですが、少々古い世界の物という印象があります。戦前に、人が移動に使うインフラのようなイメージです。そのため、コスモポリタンの歴史や運動の好ましい部分として、船や列車といった存在する構造との関連性があり、芸術家や革命家など、移動性を備えた人たちが使い始めたというような。

Thouny

用語の意味には注意が必要ですが、この問題を考えるときには、ヒューマニズムという考え方にも立ち返って再考することが重要だと思いますね。今やヒューマンという思想自体が変わりつつあるからです。時代とともに変容していく価値観や思想を辿りながら考察していくことが、これからの時代に必要になってくると思っています。