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2021/2/4 本学部教授・橋本健志先生らの研究が「Scientific Reports」に原著論文として掲載されました。


本学部教授・橋本健志先生が、理工学部教授の小西聡先生と共同で取り組まれた研究が「Scientific Reports」に原著論文として掲載されました.

 

米国環境保護庁が2035年までに哺乳類の実験使用中止を発表しており、これまで創薬分野、医学・生理学分野や食品科学・栄養科学分野において用いられてきた動物実験の代替手段が求められてきています。実際、ナノマイクロテクノロジーを活用したオンチップ培養細胞組織・臓器(OoC)研究が活発になってきています。ただ、これらの国内外の研究の大部分が、OoCのモニタリング分析やその自動化に主眼を置いているのに対し、本研究は、モニタリング情報のOoCの制御への活用に着目したものになります。

本研究で取り扱った細胞は、脂肪細胞と骨格筋細胞です。脂肪細胞中には脂肪滴と呼ばれる中性脂肪の貯蔵庫が存在し、食事(主に糖質)摂取により分泌されるインスリンによって中性脂肪は合成され、脂肪滴に蓄積します。一方、運動時などは、アドレナリン分泌によって(中性)脂肪分解が進み、脂肪滴が縮小化します。本研究では、こうした生体での生理反応を薬理(インスリンとアドレナリン)刺激によって模倣し、脂肪滴の大きさの増減を制御しました。そして、画像情報により脂肪滴サイズをコンピュータ解析し、結果を薬剤刺激にフィードバックするシステムを世界で初めて構築しました。これにより、どのような外的刺激(栄養過多など)が脂肪合成を高めてしまうのか、また、それを抑制するにはどの程度の脂肪分解刺激(運動など)が必要なのかが明らかになります。

また、骨格筋細胞には、電気刺激を印加して筋収縮(運動)を誘発し、産生された乳酸をモニタリングしました。このデバイスは、微細流路、バルブやポンプ等の流体制御デバイスによる自動培地交換、生化学センサによる様々なモニタリング技術が集積されたものになります。ナノマイクロテクノロジーを専門とする小西教授と、細胞の代謝制御機構を専門分野とする橋本教授の融合知により得られた研究成果は、今後、さらなる高度化を経て、新規animal freeな次世代生体反応検証モデルとして活用されるものと期待されます

 

Cell and tissue system capable of automated culture, stimulation, and monitor with the aim of feedback control of organsonachip. Satoshi Konishi, Takeshi Hashimoto, Tsubasa Nakabuchi, Takatoshi Ozeki, Hiroki Kajita.

Scientific Reports. https://www.nature.com/articles/s41598-020-80447-2

(ニュース)20210205-2