播磨谷 浩三教授

MESSAGE

集中して勉強できる時間と環境を得ることができれば
長い人生にとって大きなプラスになる

金融機関の経営の特色を
データを用いて検証

私の研究領域は、金融機関の経営の特色を、データを用いて検証することです。金融機関の状況をデータの変化で追っていると、人員の削減はもちろん、収益率も下がっていることがよくわかります。盤石だと思われてきた業界ですが、時代のニーズに合わなくなっていることが明白です。
私は、学部卒業後、大学院に進学するつもりでしたが、ゼミの先生から一度社会に出るよう強くすすめられて銀行に就職し、5年間勤務した後に大学院へ戻ったという経歴があります。今、このようなテーマで研究をしているのも、その経験を踏まえてのもの。元同僚と話す機会もあり、金融業界のデータに表れない実情もある程度は理解しているつもりです。今は離れたところにいる立場ですが、自分の人生の総括として、今後の研究生活の中で、金融機関の現場にいる人に対して研究の成果物をメッセージとして提示する義務があると考えています。

マーケティングでも「売れるための戦略」をデータで検証

データの検証には、計量経済学という分野の分析手法を使っています。統計学より実践的で、仮説の妥当性をデータによってテストするのが計量経済学の分析手法。しかし、日本の私立大学や大学院で、データ分析を強化しているところはあまりありません。最近は企業のマーケティングでも、「どうすれば売れるだろう」というアイデア的なことよりも「売れるための戦略」をデータで検証するようになっています。実践的な学びという意味でも、もっと力を入れるべき分野ではないでしょうか。立命館大学経営学研究科には、計量経済学を初歩から実習的に学ぶ科目があります。

自ら競争的な環境に挑戦し続ける
若者がもっと出てきてほしい

経営学や経済学などの社会科学は、社会で起こっている現在進行形の問題について考える学問です。経済全体のこと、企業や消費者のことに「なぜこうなっているのだろう」という強い関心があり、時流に流されることに抵抗を持つような人は、大学院に進学して研究生活に入ることも考えてほしいと思います。大学院は、先生から一方通行で何かを教えられる場ではないので、自分なりの疑問をどう解決していこうかという自発的な意欲がないと続けられません。何がやりたいかをベースに、大学名にこだわらず、その分野を研究している先生がいる大学を選んでください。たとえ2年間であっても、集中して勉強できる時間と環境を得ることができるのは、長い人生にとって大きなプラスになると思います。
学部で学んできたことに統計分析を加えて論文を書きたい、卒業論文を英語にして海外にメッセージを発信したいなどの希望がある人も、大学院で学びを深めてほしいと思います。私としては、博士課程後期課程に進学して研究者を目指す学生も育ってほしいですね。厳しい世界ですが、自ら競争的な環境に挑戦し続ける若者がもっと出てきてほしいと願っています。