近藤 宏一教授

MESSAGE

人々の暮らしを豊かにしていくために、サービス・マネジメントの理論を活用する

顧客も、働く人も、一人ひとりを大切にする経営学を

私が専門とするサービス・マネジメントという分野は、大規模な製造業を念頭にした従来の経営学とは違い、個々の人が本当に必要としている「何か」をその人とともに発見し、それを効果的に充足することで事業を発展させようとする考え方です。この考え方は、サービス業だけでなく多くの分野に応用できるはずだ、というのが私の理論的な基礎になっています。そして具体的な研究としては、理論を実際の事業に応用することに関心を持っています。
その一つが公共交通のマネジメントです。大都市でも経営が大変と言われるこの分野にサービス・マネジメントの考え方を取り入れるのです。サービスは人と関わる仕事ですが、たとえばタクシーの運転手さんの車内での会話を、直接管理することはできません。そこで、従業員一人ひとりをどう育成し、管理すれば、その人の能力を最大限に引き出し、より良いサービスを提供できるかを考えるのです。良いサービスが提供できれば、乗客からの信頼を得て、再び利用してもらえる形ができ、利益につながるからです。今は、事業者の話を聞き、事業者の集めた乗客アンケートを調査している段階ですが、今後、ドライバーや乗客に直接聞き取りをしたいと考えています。

クラシック音楽が生活に浸透していない地域の
オーケストラの活動を国際的に比較研究

もう一つの取り組みが、オーケストラのマネジメントです。もともと音楽が好きだったことと、たまたまオーケストラでの演奏経験がある中国や韓国からの留学生がいたことから、それらの国について調べる手がかりがつかめたことが、この分野の研究を始めた動機です。
欧米と異なり、クラシック音楽の歴史が浅い東アジア地域で、オーケストラがどのように社会に浸透し、観客を獲得してきたのかを、インタビューなどを通して調査し、比較しています。日本・中国・台湾・韓国、それぞれ共通性もありながら、それぞれユニークな点、優れた点があり、課題を抱える部分が重なり合ったり、相互に影響し合うものもあったりすることが明らかになってきています。科学研究費補助金にも採択されましたので、引き続き研究を続けていきたいと思っています。

興味のあるテーマで思い切り勉強することで
能力を高めることができるのが大学院

大学院では、自分のテーマについて学部時代より高度なアプローチで取り組むことができます。大変なプロセスもありますが、苦労の先に、「なるほどこうなっているのか」「こうすればいいんだ」ということを自分で見つけられるのが魅力だと思います。
大学院で学ぶのは一見遠回りに見えるかもしれません。しかし、ここで身につけた基本的な考え方、物の見方は、仕事をしていく上で必ず活きてくると思います。将来、金融の仕事をするからといって金融の研究をしなければならないということはありません。自分の興味のあるテーマで思いっきり勉強することで能力を高められるのが大学院という場所。ぜひ活用してもらえればと思います。