吉田 満梨准教授

MESSAGE

経営学の世界では、アカデミズムと現場、
理論と実践の間を往復できることが楽しい

優れた起業家の意思決定プロセスは
市場の創造にも応用できる

私は、企業がどのような戦略的意思決定をしてマーケティング行動を行っているかに関心を持ち、新しい市場ができるプロセスの研究をしてきました。
今取り組んでいるのは、ニーズの存在しないところに新しい製品市場を作る際の意思決定に関する研究です。たとえば、今日では当たり前のペットボトル入りの緑茶飲料は、消費者のニーズが明確でなかった1980年代にメーカーが缶入りの緑茶飲料を開発した結果、新しい市場が創造されました。こうしたニーズが明確でない段階で、どのような意思決定によって製品や市場が作られるのか。
その答えを求めている時にたどりついたのが、「エフェクチュエーション」という理論です。これは、ヴァージニア大学ダーデンスクールのサラス・サラスバシー教授が発見した、優れた起業家が用いる思考様式のこと。27人の優れた起業家の思考パターンを抽出して体系化されたものです。私は、この理論は、起業家だけではなく、ニーズの存在しないところに新たな製品や事業が作られる場面でも適用可能だと考え、大企業のマーケッターなど市場創造を担う人を対象に研究をしています。この理論には、新規事業開発やイノベーション創出に関わるビジネスマンから大きな関心を寄せられていて、学外の方々と議論しながら研究を進めている状況です。

探していた答えに近いものが見えた瞬間
他のことでは得られない大きな喜びを感じる

大学院で研究論文を書くというのは、自分で設定した研究領域で最先端に躍り出ようとする、とても興味深いチャレンジです。ただ、創造的な仕事はすべてそうであるように、研究も苦しいことの連続です。それでも続けていると、探していた答えに近いものが見える瞬間が訪れる。その時の喜びは、他のことでは決して得られないくらい大きなものです。答えに近づけた喜びを持ってゼミや学会で発表をしますが、多くの場合は様々な課題を指摘されてまた意気消沈する。その繰り返しの中で成長できると感じています。
苦しさを支えてくれるのが、同じ目標を持って共に走っている大学や学会の仲間です。共通の研究課題に取り組む研究者同士は、切磋琢磨しつつもオープンな関係で協働することが多いため、たとえ院生であっても指導教員以外の、特定の分野の専門家の先生に指導を仰ぎに行くこともありますし、それが立命館以外の大学の先生の場合もあるでしょう。そうしたオープンなコミュニティがあります。

一度ビジネスの現場に出て、解きたい問いが見えた時に
大学院に入学するのも良い

私が研究をしている理論に、ビジネスの現場にいる方が価値を見出してくださり、その理論を現場に持ち込んで実践してくださることは、経営学の研究者にとって無上の喜びです。そうした方々の実践から私も気づきを得て、さらに新たな理論の開発につながっています。経営学の世界では、アカデミズムと実務の現場との間を往復できる視点を持つことが、研究をしていても楽しいですし、役に立つと思います。そのため学部からそのまま大学院に進学するだけでなく、一度社会に出て現場を知り、解きたい問いが見えたタイミングで大学院に入学するというのも良いのではないでしょうか。
立命館大学経営学研究科のマーケティング分野には、若く、教育に熱心で研究力もある先生方が増えています。関西の大学院でマーケティングを研究したい人にとって良い学びの環境があると自負しています。