教員紹介

IWAKABE Shigeru

岩壁 茂

岩壁 茂
職位
教授
専門
臨床心理学、心理療法学

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

カウンセリング・心理療法の効果とプロセスの研究です。特に、忘れたくてもなかなか忘れられない、何年も経っても思い出すと嫌な気持ちが起こってくるような人の傷つき体験がどのようにして変化していくのかというプロセスを明らかにすることに関心があります。過去の傷つき体験の記憶はどのようにして変わっていくのか、「絶対に許せない」「立ち直れない」と絶望していた状態からどのようにして「希望」がうまれ、それが「良い経験」になっていくのかということを様々な方法を使って分析しています。

研究の社会的意義について、教えてください。

心理療法に高い効果があることは、数千もの効果研究によって示されてきました。しかし、そのような治療的効果がどのように起こるのかということは十分に理解されているとは言えません。より効果的な心理的援助を可能にするには、心理療法の変容のメカニズムを明らかにする必要があります。私は、感情の役割に注目して研究を続けてきました。

心理療法の領域では「何々アプローチ」「何々学派」というように理論アプローチの間に対立や溝があります。様々なアプローチが存在することによって、多様な問題に対応することが可能になるという利点もありますが、どのような問題に対して、どんなアプローチが、どのような状況において最適なのかということを様々なアプローチの臨床家と研究者が協力して明らかにしていくことによって心理療法の科学性が高まり、そしてその恩恵を社会へと還元していくことが可能となります。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

私は感情を中心に心理療法の変容メカニズムについて諸外国の研究者と協力して研究に取り組んできました。そのなかで、社会文化が異なっても、異なる考え方から学び、お互いに刺激を与えて、同じ目的に向けて進んでいくことの大切さを実感してきました。研究は単に客観性や厳密さを追求した活動ではなく、好奇心や関心に導かれ、発見の喜びや驚きに満ちた “Exploration”であり、世界を理解し、そして未来の世界を作っていくことと関わっています。
研究は決して自分の世界にとどまるのではなく、他の人たちの世界にふれて、つながり、一人では達し得ないようなものを作っていく可能性をもっています。是非、自分の限界に挑戦して、一緒に未来の心理学を作っていきましょう。

経歴・業績について