教員紹介

Wakako KUSUMOTO

楠本 和歌子

楠本 和歌子
職位
嘱託講師
専門
臨床心理学
主な担当科目
心理実践実習、臨床心理学実習、心理アセスメント実習Ⅱ
おすすめの書籍
心理療法論考河合隼雄(著) 新曜社1986年
時間と自己木村 敏(著) 中公新書1982年
沖縄戦を生きぬいた人びと吉川麻衣子(著)創元社2017年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

現在の研究テーマは2つあります。1つは、学生時代から関心を持っている「TATの時間性」に関する研究です。TATは投映法の心理検査ですが、検査自体が心理療法的側面を持っています。臨床場面では、自分の身に起きた出来事をまとまった体験として語り、その意味をセラピストと共有することがクライエントの自己回復に繋がっていきます。そのプロセスには、時間性という概念が深く関わっています。そこで、ナラティヴ・アプローチの立場から、語りに固有の時間性に注目し、TAT場面での時間性の特徴と心理療法的意義について検討しています。

もう1つは、沖縄県の石垣島に住んでいた頃の臨床実践の経験を基盤にした、「僻地の心理支援の在り方」に関する研究です。心理職に期待される役割は年々大きくなっており、離島や山間地といった僻地においても同様です。しかし僻地の場合は、人材の確保が難しい、地理的・気候的・文化的特性に応じた支援を検討しなければならない、といった僻地特有の様々な課題が挙げられています。そのため、現在は沖縄県の離島を取り上げ、地域の実状に応じた効果的な心理支援の在り方についてモデル構築を進めています。

研究の社会的意義について、教えてください。

2つ目の研究テーマに絞って話をしますと、この研究は、これまで臨床心理学分野であまり検討されてこなかった、僻地という地域性に注目した先駆的研究です。

学術的意義としては、地域援助研究の活性化、仮説生成型および個性記述的研究の発展に資することができます。また、社会的・臨床的意義としては、沖縄県の離島で心理支援に携わる方々に、課題解決に向けた理論的知見と具体的な実践方法を提案し、対話協働によって現場実践に活かしていくため、在住者の心のケアに貢献することができると考えています。将来的には、国内に多数ある他の僻地(例えば、鹿児島県の離島、長崎県の離島、長野県の山間部、北海道の過疎地など)へと研究を拡充させて、僻地の心理支援の発展に貢献することを目指しています。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

臨床実践では、自然科学的エビデンスを備えたアプローチが欠かせませんが、時間やローカルな文脈を捨象せず、個の理解を徹底する個性記述的なアプローチも等しく重要になります。将来、一人の人間に寄り添ったきめ細やかな臨床実践を行うために、普遍的な理論知と個別具体的な実践知を両輪として学んで欲しいと思います。特定の臨床アプローチに固執することなく、目の前のクライエントにとって効果的な支援法を柔軟に検討・選択できる謙虚な姿勢も大切だと思います。

本学に入ると、同学年に数十人の院生がいます。しかし、院に入った目的や院を目指すまでの経緯、人生全体におけるこの2年間の位置づけといった背景は、一人ひとり異なっています。実習を通して得る知識や経験は、自身の人生の文脈に位置づけられてこそ有用なものとなります。そのため、常に「私」という個別性を大切にしながら、有意義な2年間を過ごしてください。

私自身、臨床家として研鑽を重ねる途上の「今・ここ」で、皆さんと出会い、共に学べることを嬉しく思っています。日々対話しながら、共に歩んでいきましょう。

著書等

  • カウンセリングと教育相談 森岡正芳(編著)(あいり出版、2012年) 担当部分:
    第3章「学校でのアセスメントとカウンセリング」pp.26-42.

  • 臨床ナラティヴ・アプローチ 森岡正芳(編著)(ミネルヴァ書房、2015年) 担当部分:
    第12章「心理テストとナラティヴ①TATを手がかりに」pp.249-264.

経歴・業績について