教員紹介

Masayoshi MORIOKA

森岡 正芳

森岡 正芳
所属領域
臨床心理学領域(博士前期・後期担当)
職位
教授
専門
臨床心理学、文化心理学、カウンセリング
主な担当科目
社会の中の人間科学、心理療法論、臨床心理学演習、人間科学プロジェクト演習
おすすめの書籍
ことばが劈かれるとき竹内敏晴 ちくま文庫1988年 ブッダが説いたことワールボラ・ラーフラ岩波文庫2016年

現在の研究テーマ(または専門分野)について教えてください。

私の専門は臨床心理学・文化心理学・カウンセリングです。ナラティヴ(物語;語り)や対話的自己という視点からトラウマのケア、心身相関、文化と癒し、スピリチュアリティの問題に取り組んできました。カウンセラーとしてさまざまな学校や適応指導教室などに訪問してきました。最近では、母子生活支援センターでの家族と子どもの社会的養護や、犯罪の再発防止に関わる処遇の現場、生活の総合支援の場に入っています。

『臨床心理学』『人間性心理学研究』などいくつかの専門誌の編集主幹をしています。これまでに「治療的コミュニケーション」「うつの現在」「スクールカウンセリング」「いじめと学校臨床」「自傷行為」などを編集しました。また、日本心理学会『心理学ワールド』では、「スピリチュアリティ」「対話」を特集しました。以上からお分かりのように、ナラティヴ、ドラマ、対話といったキーワードで、理論や方法も一見異なる心理療法の各学派に共通する要因について探求し、国内外の学会で発表してきています。【臨床ナラティヴセミナー】を主催し、内外の研究者との交流を行っています。どなたでも参加可能です。フランスのライフヒストリー学との研究交流も継続課題です。立命館でも毎年、特別講義を行っています。以上について、『臨床ナラティヴアプローチ-協働報告1-3』(ISSN2188-5834)にて報告してきています。

研究の社会的意義について、教えてください。

多様な現実を人は生きています。そして、他者がかかわることによって、その人の現実は変化します。名前を持った個人の体験の現実に沿いながら、心理社会的支援を行うことは、科学的根拠にもとづく対人支援の理論や方法を補うものです。当事者生活者にとって、自分の体験に即した言葉を語り聴き、体験を他者に共有されることで元気を回復します。この対話的交流をナラティヴといいます。ナラティヴによる実践的アプローチの応用範囲は広いです。発達障害当事者グループでの生活支援、司法矯正機関での音楽療法実践の場、看護師の臨床の場での体験を語り聴く場、戦争体験者の小集団での語り合いなどで現在、協働での実践研究を進めています。

心理社会的支援において、ナラティヴアプローチは、当事者の強い情動体験の世界を緩和し、個人の体験の現実に、病気や障害の出来事の意味が定まっていくまでを同行する援助です。この実践そのものが公共性を持ちます。東日本大震災の年「社会に開くナラティヴ:戦争と原爆の体験を聞く・語り継ぐ」(日本質的心理学会第8回大会 安田女子大学 2011.11.27)での共同発表を皮切りに、広域的な連携を行っています。

この研究科でめざしたいこと、院生へメッセージをお願いします。

「臨床ナラティヴアプローチを基盤とする人称性科学の心理社会的実践モデル構築」を、研究課題として挙げています。現場では様々な交差領域が生まれます。その豊かな産出物を抽出する認識の枠組みと方法論が必要です。臨床ナラティヴアプローチの観点から、生きた記述の仕方を探り、人称性科学という対人援助を基礎づける方法と理論を構築することが私の目標です。そして病や障害を生きられた経験とし、当事者の生活、人生に位置づくよう伴走する心理社会的支援者を育てたいです。

学際的なシンポジウムを企画し、討論することは私の好みです。最近は、アートベースのリサーチに強く関心を持っています。一例ですが、「スタニスラフスキーシステムの俳優訓練と心理学」のテーマで、シンポジウムを行いました。訓練方法は身体ベースで、心理学との接点は大いにありそうです。立命館にはすでにアートベースの素養を持つ教員や実践家が数多くいらっしゃいます。これから開拓したく思います。心理学を基盤に、人間科学を基礎から社会実践にいたる学問として、立命館から発信していきましょう。

著書等

  • No cover

    物語としての面接 (新曜社、2017年)

  • No cover

    うつし 臨床の詩学 (みすず書房、2005年)

  • 臨床ナラティヴアプローチ (ミネルヴァ書房、2015年)

経歴・業績について