研究科長メッセージ

Hideki ENDO
遠藤 英樹

立命館大学大学院 文学研究科長

文学研究科は、「人文学」を専門的に研究する場です。「人文学」とは何か。それは、「言葉」や「記号(地図も記号のひとつです)」といった「文」を重視し、人間存在について追究する学問です。当研究科は「人文学」に関して多様な教育・研究領域を備えていて、人文学専攻と行動文化情報学専攻の2専攻から成り立っています。人文学専攻は11専修、行動文化情報学専攻は3専修と分けられ、多彩な学問領域が連なり集積する「知の宇宙」を形成しています。

専修ごとには、大学院生の目的に応じて2コースが準備されます。この2コースは、2024年度からは「研究一貫コース」と「高度探究コース」となります。「研究一貫コース」は、最新の研究方法や専門的知識を会得し、独創性あふれる研究を展開しようと考える人、学界の第一線に立つ研究者を目指す人を対象とします。「高度探究コース」は14専修それぞれの専門性を学部時代よりも深く修得し、社会で活躍することを目指す人が対象となります。

本研究科は、これまで学界の第一線にたつ多くの研究者を輩出してきました。研究者の養成は、大学院教育の非常に重要な責務です。ただし、大学院教育の目的は、必ずしも、学界の第一線にたつ研究者を養成することに限定されているわけではありません。学部での学びをもう少し深めたいと思う学生が、様々なかたちで社会に出ていく前に、自己の見出した問いに対し研究科で学ぶさまざまな手法を用いてより深く考え、答えを求め続けることも重要な目的であると言えるでしょう。

そこで得られた分析力や考察力は、現在、社会で求められている「課題設定・解決能力」と「論理的思考力」と言われるものです。このような力を身につけた本研究科前期課程修了者は、専門性を活かした分野で様々に活躍しています。「言葉」や「記号」を重視し、人間存在について追究する「人文学」の旅は、学部卒業をもって終わるとは限りません。不確実で混沌とする現代にあって、冷静に状況を見極め、多様な価値観・性・歴史性・言語・宗教・文化・地域性を洞察し、相対化し、調停できる「人文学の知」は、学部を卒業後もずっと必要となるのです。

だからこそ皆さんには当研究科における学問を追究し、新たな視点・視野・視座を獲得して頂きたいと思います。本研究科で学ばれた皆さんが、「未来を信じ、未来に生きる」人となり、「未来を創出する(futurize)」人になって頂けたらと願ってやみません。