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稲村和美氏(尼崎市長)をお招きして、オープン・リサーチを開催しました

公務研究科のカリキュラムの特徴をなす「リサーチ・プロジェクト」では、専門分野の異なる複数の教員と研究テーマの異なる多様な院生がともに学びつつ、複雑化・多様化する現代の公共問題に対応するための「政策力」を鍛錬しています。「オープン・リサーチ」は、リサーチ・プロジェクトに所属する全ての院生と教員が一同に会し、ゲスト・スピーカーのお話を通じてともに考え、議論する貴重な機会です。

今回は、兵庫県尼崎市長の稲村和美氏をお招きし、2017年11月8日(水)に朱雀キャンパス308教室にて、オープン・リサーチを開催しました。稲村市長はまず、「課題先進都市」といえる尼崎市の現状について説明し、今後は「課題解決先進都市」として、尼崎市のイメージ向上、子育て世帯向けのサポート、住宅事情の改善などに取り組んでいくことをお話しになりました。

また、課題解決のためにはシティプロモーションと同時に、「シチズンシップ」と「シビックプライド」の醸成が重要であることが強調されました。そして、課題が多様化・個別化する現在では、行政は小さくとも公共は大きく、つまり民間企業やNPO、地域コミュニティ等も「公共」の担い手であり、行政職員にはそれらのファシリテーターとなりつつ、ガバナンスを行う能力が求められることが指摘されました。職員にはまた、いわゆる「お役所仕事」ではなく、法令等を遵守した上で知恵を絞り、課題にチャレンジしていく「政策力」が求められます。

稲村市長はまた、行政は多くの計画を策定するものの、PDCAサイクルの「CA」が不足していることを指摘し、尼崎市の施策評価についてお話しになりました。施策の策定はそれ自体が目的ではなく、あくまで課題解決のための手段です。それゆえに「そもそも、何を実現するための施策なのか」を明確にして、施策評価を通じて成果や残される課題を問うことが大事であり、尼崎市では決算を「査定」し、評価の結果を次年度に反映させ、PDCAサイクルを有効に機能させることに努めています。

続いて、オープン・リサーチ終盤には、市民との合意形成や国・県・市の役割についてなど、院生から活発な質疑応答が行われました。稲村市長は、反対意見には様々な段階があり、完全な合意は難しいとしても、合意を目指すプロセスの中で出た意見をいかに反映させるかを重視しているとお話しになりました。また水口憲人教授からは、「シチズン」としての高齢者の位置づけや「シビックプライド」を育む場としての大学の重要性などについての「提言」がありました。

このオープン・リサーチでは、市長にご登壇いただく前に、院生は事前に頂戴したレジュメや新聞記事などを読み込んだ上で、6つのグループに分かれて質問したいことを話し合い、それぞれ2つの質問に整理しました。稲村市長には、それらの質問にもご配慮いただきつつ、非常にバイタリティに溢れる、示唆に富んだお話を伺うことができました。公務研究科という「学びの場」での日々の取り組みもまた、「政策力」を備えた公務人材として成長するための糧となります。院生の皆さんが本研究科での学びを経て成長し、公務人材として活躍されることを大いに期待しています。