ヒューマノイドシステム研究室

Profile

玄 相昊
Sang Ho HYON

1995年から現在に至るまで、人間並みの高度な運動性能を持つ歩行ロボットとそれに関連する制御理論の開発に取組む。2010年度からは、制御理論の実用ロボットへの研究展開、次世代ロボットエンジニアの育成という2つの観点から、大学で研究教育活動を開始。優れた先駆者から修得した知識、そして独自に会得したロボット工学の方法論を、若い世代に全て還元し、彼ら自らの力で世の中に役に立つ優れたロボットを創造できるよう後押しすることが目標。そのために、日夜、最前線の研究を学生と一緒に全力で行っている。

研究内容

油圧はハイパワーの代名詞。建設現場で働くパワーショベルは災害復興現場でも大いに活躍しています。
一方、過酷な工事現場のイメージと重なって、危険、重たい、汚い、臭い、という印象がありませんか?しかし、それは裏を返すと、過酷な環境で酷使しても平気な、頼れる技術である証拠。当研究室では、主に油圧制御技術を用いたロボットを作って動かしています。
例えば、研究室で開発している新しい油圧駆動ヒューマノイドロボットは、人と同じサイズで、人と同じスピードで動きます。関節の生み出す動きは人や動物に似ていて、ブラブラに(脱力)したり、柔らかくしたり、硬くしたり、微妙に力を加減したりできます。力持ちで、人に優しいロボットです。

このロボットで使われている「油圧を自在に操る技術」は、本格的なパワーショベルにも応用しています。
具体的には、市販の油圧ショベルを改造し、遠隔操作や自動制御の研究を行っています。関節が柔らかい「不思議な油圧ショベル」も実現しました。さらには、新しい油圧回路とアルゴリズムを使って、既存の油圧機械のエネルギー効率や性能を低コストで改善する研究を企業と共同で行っています。将来的には、油圧は水道水で動く水圧技術へと発展し、最終的には、クリーンで、安くて、使いやすい、普通の身近なロボット技術に変貌することでしょう。

一方、「人型ロボットの全身の運動を自在に操る技術」は人を直接サポートするアシストロボットにも応用しています。実際に当研究室では、指導教員の出身であるATR脳情報研究所と共同で、歩行や姿勢制御のリハビリに応用できる外骨格ロボットを研究開発しています。上で述べた油圧式ヒューマノイドロボットもATRで長年培った技術を継承発展させたものです。本学とは研究教育協定を結んでおり、選抜された修士以上の学生は世界屈指の最先端研究機関で貴重な経験を積むこともできます。

研究の特色

「カッコよくて楽しい遊び志向」と「世の中に役に立つプロ技術志向」の両立が特色です。当研究室の看板であるヒューマノイドロボットは、大きさが人と同じで、人と同じくらいのスピードと力が出せます(当研究室のホームページをご覧下さい)。必然的に、オモチャのロボットとは作り方も扱い方も全く異なってきます。スポーツ選手と同じような機敏でしなやかなモーションを、コンピュータ画面ではなく、実際に目の前にあるロボット上に「表現」します。黒光りのボディが映し出す機能美は見た目にカッコ良く、さらに、自分の体ではなく、ロボットの体を使って人と同じような難易度の高いパフォーマンスをやって見せることができれば、それを実現した「自分が一番カッコ良い」と思うことでしょう。

経済的な利害を抜きにして、我々が潜在的に持っているかもしれない「人を造りたい」という畏れにも近い欲求から生まれる究極の知的創造力を解き放つ魔法の道具、それがヒューマノイドロボットなのです。このロボットは、航空機の過酷な姿勢制御で用いられている油圧シリンダ、それを高速に制御するマイクロコントローラ、軽くて丈夫な軽量素材、人間の学習能力をヒントにして発明した制御アルゴリズムの上で成り立っています。どれ一つとっても、他に応用できる、役に立つ「本物の技術」です。

実はこのロボット、研究室に入ってきたばかりの学生達が、設計を開始して2年間で作り上げました。その背後には先端技術を有する国内有数のメーカーのサポートがあります。内外の研究者はもちろん、著名なデザイナーやその学生達との貴重な交流も、我々の創造力の源です。つまり、このロボットは当研究室の学生と各方面の優れたプロの方たちとの対話の中で生まれた合作なのです。数あるロボット研究の中でも、「人型」だけが持つ独特の魅力かも知れません。
学生が目を輝かせて活き活きと遊びながら、社会に役に立つ最先端の技術を知らず知らずに学ぶことができるヒューマノイドロボット研究には、私たちが人間として豊かに生きていくための多くのヒントが隠されているはずです。

受験生へのメッセージ

人類の未来を支えるロボット技術を生み出せる本物のエンジニアを社会に送り出すことが、立命のロボティクス学科の重要なミッションです。世界最先端ロボットを目指すならば、立命のロボティクス学科に入学してください。当学科を第一志望で入学してきた、高い志を持った学生諸君を私たちは全力で応援するつもりです。

ロボティクス学科が所属する「立命の機械系」の強みは、なんといっても学生の数とバリアの低さです。学生と研究室の数が多ければ、必然的にインタラクションが多く、その中でもまれた学生は人間的にも大きく成長します。立命の機械系は、権威ばらない、飾らない、フランクでフラットな集団です。ロボット、機械、マイクロの各分野を専門とする数多くの研究室の教員や学生と、飲み会の席の一言で、簡単にコラボレーションができてしまうのです。
私の研究室は2010年に誕生し、25名の学生を抱えていますが、教員と学生との距離は非常に近く、各方面のプロの方を交えて、機械系らしく、わいわい楽しく活き活きと学生は学んでいます。

今、世界は、食料と資源をめぐって分単位で起きる紛争や大規模自然災害など、かつて人類が体験したことのない複雑で難しい問題に直面しています。日本だけが無事に済むとは期待すらしてはいけません。どうして一部のメーカーやエリートだけがこの問題に対処できるでしょうか?
各分野から多くの仲間を集めて、共同で素早く柔軟に問題に立ち向かえる、「元気で使えるエンジニア」の集団が世界のあらゆる場所に必要なのです。その中心に居るリーダーは、誰でもなく、立命の機械系で学ぶ君たちなのです。幅広い知識を持つロボット技術者はその中でも中心的な役割を担っています。ロボットや機械技術で人類を救うという高い使命感を持ち、大学で仲間と共に元気に、楽しく、真剣に、深く勉強し、どうか傷ついた世の中を修理してくれることを期待します。

研究室学生インタビュー

Profile

理工学研究科 機械システム専攻
ロボティクスコース
博士課程前期課程 1回生

ヒューマノイドシステム研究室を選んだ理由は?

配属される前に研究室を見学する機会がありました。そこで先生から、等身大のヒューマノイドロボットを研究室でゼロから開発するという話を聞きました。その頃、ホンダのアシモが人と同じように歩行している姿を見ていたので、自分も人型のロボットの開発に携われるのかと興奮しました。ヒューマノイドロボットはロボットの中でも一番チャレンジングなロボットと思います。こういうチャンスは二度とないだろうと思い、この研究室を選びました。

今、取り組んでいる研究は?

私はヒューマノイドロボットの設計を担当しています。現在いろんなヒューマノイドロボットが世の中にありますが、研究室のロボットは油圧で動くため、従来のロボットよりも圧倒的にパワーがあります。建設現場で活躍するパワフルで強靭な油圧ショベルを人のサイズに凝縮したようなロボットです。それに加え、人のように素早く動くことができるので、将来は人と同じように走ったり、ジャンプしたり、従来のロボットでは成し得なかった高度な運動を実現できるようになります。

研究をしていて楽しいときはどんなときですか?

ロボットを設計しているときです。最初はロボットを設計する知識がなく一つの部品を設計するのも苦労しました。そこでさまざまなロボットの設計図を調査したり、実際にロボットを触れて細部まで観察したりの日々を過ごしました。それらを設計に取り入れていくことで、この部分はこういう構造にしたほうがいいなという勘が身についてきて、今では自分が理想とするロボットを形にできるようになりました。自分が一から設計したロボットが思い通りに動いたときの達成感と感動は一入です。

将来の目標は?

社会に貢献できるロボットを開発することです。現在、様々な現場でロボット化が進んでいます。人が作業することができない危険な場所や重労働が必要な作業をロボットが代わって行うようになれば、人は人にしか出来ないもっと創造性のある仕事ができるはずです。ロボットが求められている場所は数えきれないほど存在します。しかし、その要求に答えられるロボットは少ないです。それぞれのニーズに合った新しいロボットの提案を行なっていきたいです。