教員VOICE

#2
鎮目 真人 教授

研究テーマ

高齢期の貧困、年金制度の国際比較、年金制度の変化に関する新制度論的研究

鎮目 真人 教授

個人的なことは学問的なこと。巨人の肩の上に登って、少しだけ先の地平を眺めてみては如何でしょうか。

先生は、どのような経緯から現在の研究テーマを設定されたのでしょうか。

私はもともと大学生の時から学習対象として貧困問題に関心がありました。そのため、学生の頃は所属する学部の専門とは異なる経済学の勉強ばかりしていました。そもそも、そうした問題に関心があったのは、出身家庭がそれほど経済的には裕福ではなかったことが関係していたように思います。「個人的なことは政治的なこと」と言われますが、今から思えば個人的なことを学問的なことに知らず知らずのうちに置き換えていたのかもしれません。

そうした問いを抱えながら、大学院に進み、その時に恩師から最低生活保障に関わる「ナショナル・ミニマム」の研究テーマに向き合う機会を得ました。大学院時代はその「ナショナル・ミニマム」について歴史的に考察を進め、その後、幸運にも北海道にある大学の社会福祉学部に職を得ました。

そこに就職してほどなく、ひょんな機会から、とある社会保障系の雑誌の編集者から年金制度に関する論文の執筆を勧められ、それが、それまでの研究関心と結びつき、今の研究テーマである年金制度を切り口とした高齢者の貧困問題の研究につながっています。その編集者の方にはこの場をお借りしてお礼を申し上げたい気持ちですが、こうして改めて思い返してみると、研究テーマは自己の関心のみならず、偶然にも大きく左右されていることに驚かされます。よく言われることですが、偶然の機会を逃さないことがやはり重要なのかもしれません。

先生は、これまで研究上の大きな困難にぶつかったことがおありでしょうか。
また、その場合どのようにしてそれを克服されましたか。

月並みかもしれませんが、研究を進める上での困難には日々直面しています。問いに関する答えのようなものを考える際に煮詰まった時には、それに少しでも関連しそうな論文をデーターベースを頼りに手当たり次第に渉猟することが多いように思います。アプローチの異なる論文を色々と読んでいるうちに、問いを解くための方法や新しいアイディアが何となく浮かんで来たりすることがあります。ただ単に自分の頭の中で悩んでいるだけでなく、そうした多様な論文との対話を紡ぎ出すことが重要なのかもしれません。

そうした作業は力業で時に相当にしんどいことなので、学会や研究会での発表など、それをせざるを得ない状況に自己を追い込むということも必要だと感じることもあります。ただ、実際に自分をどこまで追い込めているかについては自信がありせんが。

2年間の修士課程を終えて社会に出ていく院生に対して、大学院時代の成果をどのように実社会で生かしていくか、アドバイスをお願いします。

大学院の修士課程の成果を実社会で活かすというのは難しいことだと思います。特に、研究成果そのものを直接活かすことが出来る機会はごく僅かでしょうし、出来たとしてもごく限られた範囲でのことだと思います。

大学院では、先達の巨人の肩の上に登って、今までみえなかった地平を少しだけ垣間見る訓練をしているはずなので、研究を通じて身に付けたそうした思考のスタイルをそれぞれのフィールドで実践できれば良いのではないでしょうか。

将来研究職を目指す院生が早い段階から取り組んでおくべき課題があるとすれば、
それは何でしょう。

まずは、一つの学問分野で、抽象的な理論モデルを通じて社会現象を透かしてみるということを会得できれば良いと思います。それができるようになると日常的な風景が、違ってみえて来て面白いと思います。例えば、富裕者から経済的困窮者への所得再分配は単なるお金の流れだけでなく、心理的な「効用」の再分配でもあるということが分かると所得再分配は富裕者にとってそれほどたいそうなことではないことがみえてきたりします。

理論モデルによる抽象的なものの見方を身に付けておくことは、自己の研究テーマの分析だけでなく、近接学問を修得してより広い視野での研究を行う上でも重要だと思います。